アクティブ運用とパッシブ運用、結局どっちが有利なのだろうか。
パッシブ運用には流行する時期がある
現在はパッシブ運用を推奨する専門家が多いですが、パッシブ運用には流行する時期があるようである。
以下は「キャピタル 驚異の資産運用会社」(チャールズ・エリス著)からの抜粋です。(PP323-324)
※最近気がかりなのは、大手機関投資家を中心にパッシブ運用が拡大してきていることだ。もちろん、彼らの資金の一部がパッシブ運用に向けられる意義はある。ただデヴィッド・フィッシャー(※)が憂えるのは、一九八〇年代初めの石油株ブームや90年代後半のITバブルのように、パッシブ運用がアクティブ運用に大きく勝った直後にパッシブに移る例が多いことだ。「これでは天井近くで資金を投入しているようなものだ。パッシブ運用をやるならアクティブマネジャーが市場平均に勝った後で実行すればいい」
(デヴィッド・フィッシャー・・キャピタル・グループのポートフォリオマネジャー)
これはなかなか鋭い意見ではないでしょうか?
三菱アセット・ブレインズの集計ではETFなどを除いた公募投信の純資産残高に占めるパッシブ型投信の比率は約9年ぶりの水準まで上昇したとのことです(日経ヴェリタス5月29日号)。記事によると、「2016年4月末時点のパッシブ型投信の比率は10.0%で、2006年12月末以来の高水準だ。株安につれて2011年には7.5%まで低下した」とのことです。アベノミクス開始以降、数年は比率に大きな変化は無かったのですが、「2015年後半から上昇傾向が鮮明になった」とのことでした。
この調査には近年残高を急増させたETFは含まれていないため、日経やTOPIXのETFを加算すると更に比率は上昇する事でしょう。
しかし運用のタイミングという観点からは、デヴィッド・フィッシャーの言うとおり、アベノミクス以降の株価の天井近くでの資金の投入が多かったのではないでしょうか。
「長期投資の有効性」については、議論は分かれない
運用手法は様々であり、時代によってパフォーマンスにばらつきがあります。そのため、有効な投資手法をめぐっては投資の専門家の間ですら議論が続けられるのです。しかし、どの投資手法が有効かという話ではなく、長期投資が有効かどうか、という話になると「長期投資は有効だ」という意見で一致します。
(長期投資についての詳細→資産形成の成功のカギは時間分散を長期的に継続することにあり)
将来の資産形成のために「運用はすべきか、やめておくべきか」という判断であれば「運用した方が良い」と判断する人は多いでしょう。その中で、「自分がどのような運用手法を取るべきか」を迷っている方がいるなら、筆者は次のようにアドバイスします。
「パッシブ運用でもアクティブ運用でも、どちらでもいいから早めに運用を始める事が良いと思います。相場観や運用手法で利益を上げるのではなく、誰にでも平等に与えられる「時間」を味方につけた運用をするべきだと思います。それこそが多くの人にとって最良の戦略なのではないでしょうか」
そして欲を言えば、長期(しかも複利で)で運用する場合、パフォーマンスのいい商品と悪い商品を比較すると、運用成績にどんどん差がつくため長期運用には(当たり前ですが)「良い商品」を選んだ方がいいのです。
(前述の通り、「良い商品」なんて選べない、というのがパッシブ運用の前提です。この点に関してアクティブファンド側からの意見については次のコラムを参照ください。(関連記事→アクティブ運用の雄 キャピタル 驚異の資産運用会社の実態とは)
まとめ 投資も時間も使い方次第
・筆者の考える順位付けは「良いアクティブ運用>>>パッシブ運用>悪いアクティブ運用>>>>>>何もしない」
・「アクティブ運用かパッシブ運用」で悩むのではなく、すぐに投資を始めて「時間を味方にすること」の方が重要
・パッシブ運用が流行するのは相場がピークを付けた後
・優れた商品を選び、長く保有することが重要
追記 長期投資をする時間が無い、という投資家は・・
長期投資をお薦めすると、「自分は高齢だから10年も投資できない」と考える投資家もいらっしゃるかもしれません。長期投資の出来ない投資家の場合には、特に「マーケット次第のパッシブ運用」を行うべきではないと考えています。
そういった投資家は、時間分散や資産分散ではなく、「仕組みの分散を」行いマーケット次第の運用から脱却すべきであると考えます。
(詳細→なぜ、あなたの「投資信託選び」は失敗するのか?)