なぜ日本では長期国際分散投資が普及しないのか
5、外国人は期待リターンを理解しているのか?
では実際に長期国際分散投資を続けて大きな利益を上げている米国の個人投資家は期待リターンやリスクについてしっかりと理解したうえで投資を行っているのでしょうか。2017年9月に米国のIFAを訪問し、現場視察をした際に複数件確認したところ、おそらく米国の個人投資家の多くはこうした金融理論を理解はしていないだろうという印象を持ちました。
ではなぜ米国人は期待リターンを理解していなくとも長期投資を実践できるのでしょうか。おそらく彼らはこれまでの世界的な株価上昇によって“株価は上がるものだ”と考えられるようになっているのではないでしょうか。つまり成功体験から期待リターンの原理を理解していると考えられます。(日本とは真逆ですね)
また、行動ファイナンスの考え方が投資の実務レベルで進んでいるという点も大きいといわれています。投資家にストレスを与えない形・選択肢を奪わない形で長期投資を促す(ナッジ)手法が進んでいることは個人投資家の長期投資の一助となっていることでしょう。
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そして米国では資産運用においてファイナンシャルアドバイザーが果たしている役割が大きいと考えられています。長期投資をしている間には何回も大きな景気後退・相場下落局面に遭遇することになります。投資家は不安になり、長期投資を続けられなくなるかもしれません。そうした時に投資家を支え、長期投資を促していく伴走者のような役割を果たしています。投資は知的作業である前に精神的作業であるといわれます。ですから迷ったときに不安を解消するための手段としてアドバイザーを活用し、成果を上げているのです。
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6、あなたがまずすべきこと
では長期投資を行うためには一体どうすればいいのでしょうか。
- 期待リターンの考え方を理解すること
- 目標を設定すること
この2点が理解できないのであれば、あなたの運用は相場に翻弄されることになるでしょう。それは投資ではなく投機です。
しかしどうしても相場が気になってしまうというなら、
- 積立投資を活用する
- イデコを活用して60歳まで使えないようにする
- アドバイザーをつける
などの手段が考えられます。
「どうしても期待リターンの考え方が腹落ちしない」とか「運用の目標設定をどのようにすればいいのか分からない」ということならアドバイザーを利用することも手段の一つでしょう。しかし頻繁に売買を進めてくるアドバイザーには注意が必要です。頻繁な売買により投資家には税金と売買コストがかかり、利益が少なくなっていくことでしょう。
またせっかくiDeCoを使っているのに期待リターンが低く、変動幅の少ない債券ファンドを組み入れてしまっては、積立投資の利点を活かすことが出来なくなりますのでもったいないことです。
投資は長期間にわたる作業であり、良い時ばかりではありません。ですから疑心暗鬼になる時期も多いことでしょう。そうした時に運用の目的(ゴールベースアプローチ)や期待リターンの考え方を思い出し、すぐに売却をしてしまわない長期投資を実践してください。