フィンテック/ロボアドとは?金融・資産運用への影響シリーズ③
Fintechの今後の展望
金融業を個人の手元にもたらすFintechはどんどん発展すべきであるし、いち早く利用していくべきものである。決済や送金の分野は日本でもすぐに展開し、我々の生活はますます便利になっていくだろう。
しかし、前回紹介を行ったような、我々にとって肝心の「資産運用」分野は今後どうなっていくのだろうか。
Fintechの希望的な話は他所のコラムに任せるとして、ここではあなたが損をしないために知っておくべきことをお伝えしたい。
「資産運用」分野で日本のFintech市場が成熟し、個人に「行き渡る」のはまだ先のことであると筆者は考えている。
更に言うならば、Fintech的な資産運用は日本の金融市場にマッチしない可能性すらある。
まずは大手金融機関の動きを紐解いていこう。
Fintechは金融機関から仕事を奪う(Disruptする)と言われ、2015年秋頃から各社は専門部隊を組織し、Fintechの情報集めに奔走している。
しかし、大手金融機関は流行りの割には新しいサービスの提供をする動きをあまり見せず、動きは鈍いように見える。
その理由は「日本の金融業は法律でずっと守られてきた産業であり、Fintechの適用領域は大手金融機関を脅かすものではない」という認識を持ちつつあるためではないだろうか。一言で言うと、Fintechは金融機関の取引システムを外部に持ち出すものではなく、顧客の生活に関わってサポートする部分にあるので焦る必要はないと考えているということである。
例えば、膨大な顧客の生活ビッグデータを保有するフェイスブックやリクルート、カルチュアルコンビニエンスクラブが金融に参入してきたらそれは大手金融機関にとってもかなりの脅威となるだろう。しかし、彼らは日本で証券会社となるためのノウハウを持ち合わせてはいない。また、新しくシステムを構築したところで、業界のデファクトスタンダード(事実上の標準)となるほどの大量の顧客の取引を支えきれないのである。
IT企業やスタートアップは大量の顧客を取り込もうと思うならば、大手金融機関という提携先を探す必要があり、一方、大企業は現段階では「淘汰される生き残り」を探し、関係を構築しておくだけでよい。
現段階で我々が注意すべき点がここにある。
大手金融機関が傍観している中、革新的だというだけでスタンダードとならないサービスに手をだすと、事業の失敗から我々の資産が凍結される恐れすらあるからである。2014年仮想通貨ビットコインの取引所「マウントゴックス」を運営するMTGOXが民事再生法の適用を申請した事件は記憶に新しいだろう。
性格的に、大手金融機関に対立するFintech企業自身が提携を望まない場合、その状況はさらにおこりうるだろう。
また、例え手数料無料等アメリカで流行ったサービスであっても、お金を保有しているだけで得られる収入(金利)が低い日本では適用可能性すら無い可能性がある。
更に言うと、ノウハウがない会社が構築したシステムには往々にしてシステム障害が多い。いわゆる準大手の金融機関ですらその状態である中、Fintechサービスを利用して投資のホットタイムにシステムが止まっていました、などという報告を後から聞くはめになる可能性がある。
一方、大手がFintech的投資を始めたからといって、それに乗っかるのも考えものである。
まだ日本の金融機関でFintechの理解が進んでいない現在、「ブランディング」のためだけに「Fintech的な」サービスを提供しているだけの可能性があるからである。
例えば現在日本で流行しているロボアドバイザーはスタイリッシュなサイト構成から革新的なイメージはあるものの、インデックスファンドを組み入れてバランス調整を行っているだけに見える(前回紹介した本来のロボアドバイザーの旨味を得られていない)。これでは今まで金融機関から提供されていたラップ口座等のサービスの形を変えただけである。
次回もあなたが損をしないために、過去の日本の事例を振り返りながら、Fintech投資との賢いつきあい方を紹介したい。
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金融・資産運用への影響シリーズ
シリーズ①
シリーズ②
シリーズ④
シリーズ⑤
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