教えて投信先生!! 新興国株式で損する理由
- スペシャル
- 人気
- 資産運用
横田くん:
??? (図表6)を見ると、リーマンショック以降もインド株の当期利益は順調そのものに見えますが、これを一株当たりの当期利益(図表7)に変えるだけで、完全に景色が変わるというか、なんか地味に見えてしまいますね・・・特に直近では明らかに米国株式の方が利益を伸ばしており、両者の格差はだいぶ縮小してしまっているし・・・ 先ほど見た高い利益成長はどこへ行ったのかな??
投信先生:
そうなんだ。当期利益は順調に伸びているものの、一株当たりの当期利益(EPS)があまり伸びていないということは、企業の発行する株式数が急速に増えている可能性を示唆している。
つまり新規上場(IPO)や既上場会社の増資(PO)が多いということ。新興国の多くは経済成長率が高く、企業の資金調達意欲も旺盛なこと多いから、実はこういうことはよく起きることなんだ。株式リターンにとって最も重要なのはEPSだ。利益が2倍に増えても増資で株数が2倍に増えてしまえば、一株当たり利益(EPS)は横ばいになってしまうからね。
横田くん:
なるほど・・少しずつ分かってきました! 経済成長は株式リターンにとって極めて重要ですが、それ以外の要素、例えば為替(通貨安)、新規上場・増資などがマイナスに作用することがある、ということですね!このマイナス要素が大きい場合には、経済成長率が高い地域の株式でもマイナスリターンに転じてしまう場面がある・・・うーん、何となく理屈が少しずつ分かってきたような気がします!
投信先生:
もう一つ、投資家の期待を示すPERも忘れてはいけない重要な要素だね(図表8)。PERを計算するのは簡単。PERは株価をEPS(一株当たり純利益)で割っただけの単純な指標だけど、PERが高いということは投資家の先行きに対する期待感(利益成長)が高まっている可能性を示唆している。
インド株式のPER推移を見てみると、2000年~2004年頃は10倍~15倍程度で推移しており、投資家はあまり強い利益成長をインド株式に期待していなかったのかも知れない。逆に直近PERは対米国株式でも高くなっており、2000年代初頭とは異なる様相だね。
(図表8)米国株式とインド株式のPER推移
横田くん:
PERが投資家の期待感を示していることは何となく分かりますが、それと株式リターンには一体何の関係があるのですか??
投信先生:
ここは結構重要なポイントだよ。例えば投資家が10%の利益成長を事前に期待していた場合、実現した成長率が5%に留まれば投資家は期待を裏切られた感覚になるでしょ?逆に全く利益成長を期待していなかった場合、たとえ2%成長でも高い成長率に見えるかもしれない。こうなってくると、短期的な株式リターンは何%の利益成長が実現するかという事実よりも、実現した利益成長率が事前の期待値に対してどうだったのか、の方が重要になってくる。二桁の利益成長でも株式リターンがマイナスになるケースは起こるけど、そこにはこのようなメカニズムが作用していることがある。
横田くん:
ということは、高いPERは株式リターンにとってはマイナス要素、つまり下落リスクを高めてしまうということですか??