2017年は5年に一度の中国共産党大会が開催されます。しかし毎年開催されている“全人代”とは何が違うのでしょうか?またそれらは株価や経済にはどのような影響があるのでしょうか?トランプ米大統領の就任で注目度が更に高まった中国の政治体制について解説します。

中央経済工作会議に見る安定性重視の姿勢
昨年12月14~16日に北京で中央経済工作会議が開催されました。中央経済工作会議とは、中国政府が翌年の経済政策方針や成長目標などについて討議し決定する最高レベルの会議です。具体的な経済政策や数値目標の決定については中国共産党大会を待つことになりますが、大まかな方針はこの会議で決定されるため、2017年の経済政策方針の特徴をいち早く把握する上で、中央経済工作会議の注目度は高いです。

この会議では、まず中国の経済発展段階は高速から中高速に入り、経済構造は輸出や投資中心から消費・サービス型への移行期にあることを再確認しました。中国経済の運営方針は、「需要の拡大」から「供給の質の向上」に転換されており、2017年を「供給サイドの構造改革を深化させる年」と位置付けました。

この会議では「穏中求進」、日本語訳で「安定の中で前進を図る」という基調が国のガバナンスにおける重要な原則であり、この基調を徹底的に実行することが特別に重要な意味を持つとされています。このことより、2016年の経済目標が「持続的成長の原動力を強化する」であったことに対し、今年は「経済の安定的かつ健全な発展」に改めました。今秋予定されている中国共産党大会を前に安定成長重視の姿勢もうかがえます。

全人代とは ~ 最高の国家権力機関
全国人民代表大会(全人代)は年に一度、毎年3月に北京の人民大会堂で開催される会議で、日本でいう国会にあたります。議題は主に、その年の政府の政治や経済の運営方針を示す政府活動報告書や、法律の制定と改正、予算案の審議・承認などです。また、国家主席の選出や憲法改正、法律制定などの権限を持っており、最高の国家権力機関と定められています。

昨年3月の第12期全国人民代表大会第4会議では、2016年の政府経済成長率目標を前年比6.5%~7%に設定していました。2012年~2014年の同7.5%前後、2015年の7%前後と比較すると若干の下振れを容認することとなります。国家統計局によると、2016年の実質GDP成長率は3四半期連続で前年同期比6.7%となり、10月の主要経済統計も中国景気が底堅く推移していることを示しています。
 
中国共産党大会とは ~ 中国共産党の最高決定機関
今秋開催予定の第19回中国共産党大会とは、中国共産党の最高決定機関と位置付けられており、党大会と呼ばれることもあります。5年に一度開催され、主に共産党の指導体制や基本方針、党規約の見直し、中央委員会や中央紀律検査委員会の選挙など、様々な重要事項を議論・決定します。

今回は最高指導部を構成する党中央政治局の常務委員7人のうち、習近平総書記と李克強首相を除く5人が引退予定です。習近平氏は今後、自身に近い政策ブレーンや地方時代の旧部下など、自らの息がかかった側近を多く登用することで、権力基盤を強固なものにすると思われます。今後のGDP見通しや人民元安、国内の不動産バブル、米トランプ政権が保護主義政策を打ち出した場合の輸出への懸念など、諸問題を抱えての党大会となりそうです。

中国共産党大会と全人代の違い ~ 事実上の最高機関は中国共産党大会
中国共産党大会と全人代は異なる議会です。これら二つは、まず構成されるメンバーの選出方法に違いがあります。中国共産党大会は、事実上中国経済の実権を握っている中国共産党の最重要事項を決定する会議です。任期は5年間と定められており、党員による事前選挙で選ばれた代表者が参加します。2012年11月に開催された第18回中国共産党大会では2270人が参加しました。

一方で、全人代の参加者は選出母体による間接選挙で選出されます。そのため国民が直接代表者を選ぶことはできません。中国の行政区分は、主に省・県・郷からなっており、各クラスで人民代表大会が構成されています。郷の代表が県級代表大会のメンバーを選出し、県級代表大会が省級代表大会のメンバーを決定、省級代表大会が全人民を決定するという仕組みになっています。このほかに、香港やマカオの特別行政区の代表、少数民族の代表、人民解放軍の代表が加わり、約3000人で全人代が開催されます。全人代の任期は5年で、解散制度は設けられていません。

また、全人代の多くは中国共産党員で構成され、さらに重要事項については中国共産党の指導部が決定しているという現状から、全人代は「党の決定を追認するだけの信任投票であり、実態は形骸化している」との指摘もあります。さらに全人代は年に一度だけの開催のため、それ以外の期間は中国共産党の最高意思決定機関である「常務委員会」が法律の制定や、条約の承認など幅広い立法活動を行っています。そのため、憲法改正の権限はないものの、事実上はこの共産党常務委員会が最高機関ともいわれています。

株価への影響 ~ 5年に一度の大天井
中国株は共産党大会開催年の春に成長のピーク、つまり大天井をつけやすい5年サイクルがあると言われています。1980年から2016年までの中国の平均GDP成長率は9.64%ですが、党大会が開催される年の平均はそれを上回る10.77%となっています。特に2012年に至っては、14.2%に達しています。そのため今秋も党大会に向け、株価は上昇傾向となることが想定されます。

しかし、2017年終盤からは、習近平氏による構造改革の一つである、ゾンビ企業潰し(=経営が破綻しているにもかかわらず、銀行や政府機関の支援によって存続している企業を淘汰し、過剰な生産設備や人員削減を行う政策)に拍車がかかると考えられます。

習近平氏の二期目は、イノベーティブな産業育成の成果を得るため、この構造改革のスピードは速くなるとみられます。2017年は消費が減速する一方でインフラ投資と外需が下支えになるとみられますが、この改革によって数百万人に上ると見込まれる失業者は、一段の景気下押し要因になりかねません。人民元の相場次第では、世界経済にも影響を及ぼす可能性があります。
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2017年の注目議題 ~ トランプ大統領と「一つの中国」政策
2017年が幕開けし、1月20日にはトランプ氏の米大統領就任という歴史的節目を早くも迎えました。トランプ氏の主張の根本にあるのが米国第一主義であり、自己中心的行動が同盟国と軋轢を生み、対立国との関係を悪化させる懸念があります。

中でも注目されるのが中国との関係です。中国に対する大統領選挙当選後のトランプ氏の初動は厳しいもので、安全保障を担当する高官に、軍事力増強の著しい中国に対して厳しい認識を持つマイケル・フリン国家安全保障担当補佐官、ジェームズ・マティス国防長官、ジョン・ケリー国土安全保障長官を登用しました。

また、トランプ氏は1979年の米台断交以来初めて米大統領の慣例を破り、台湾の祭英文総統と電話会談をしました。約10分の短い時間ではありましたが、この会談は世界中を驚かせました。その後もマスコミインタビューでも「米国が『一つの中国(=台湾を国家として認めず、中国の一部とする考え)』に縛られるのはおかしい」との発言を繰り返しています。

台湾は中国にとって東シナ海や南シナ海とは比較にならない核心的利益であり、中国はトランプ氏の発言に対して台湾はあくまで自国領の一部であると反発しています。もしもトランプ氏が「一つの中国」政策を放棄して、実態に近い「一つの中国、一つの台湾」へ政策転換すれば、米中の政治的・軍事的摩擦や、東アジアのバランスが一挙に崩れる恐れも否定できません。トランプ氏が大統領就任後も同じ考えで行動するか否かはまだ不透明ですが、「一つの中国」の見直し問題は米国第一主義が誘発するリスクシナリオのひとつとして認識しておく必要があるでしょう。
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