「日本の財政破綻」について語られるようになってから、すでに10年以上がたちます。リーマンショックやギリシャ経済危機の後には、日本が財政破綻へ向かうシナリオを解説した書籍も数多く書店に並びました。

長らく経済学者やエコノミストが、警告と楽観の両面から論陣を張り、そこで語られる財政破綻に至るシナリオが外れてきた今も、日本の財政破綻のリスクは常に囁かれ続けています。

はたして、預金封鎖やハイパーインフレ、ついにはデフォルトに繋がるような国家財政破綻の可能性は、本当にあるのでしょうか。

そして近い将来、日本に財政破綻や財政危機が訪れるとするならば、いったい何がトリガーになると考えられているのでしょうか。

日本の借金と日本が財政破綻しない3つの理由
国債と借入金などを合計した、いわゆる「国の借金」と呼ばれる数字は、2016年6月末の時点で1053兆4676億円です。単純計算では、国民一人あたりの借金がおよそ830万円となる計算になります。

そして、国家の借金を比較するとき一般的な指標となる、政府総債務残高(対GDP比)はおよそ230%と先進国中1位。現実に財政危機に直面した2位のギリシャは約170%ですから、日本は世界でも群を抜いた借金大国といえるでしょう。

日本の財政破綻について語られるとき、こうした数字がまず論拠となる一方、日本の財政状況からみて、財政破綻の可能性は薄いとする見方もあります。

1.日本の金融資産
その理由として挙げられるのは、第一に日本政府の持つ豊富な金融資産です。

その額は、2015年3月末時点でおよそ574兆円。この574兆円の金融資産を負債総額から差し引いた総債務残高(対GDP比)は130%となります。さらに、政府が保有する土地や、官公庁の建物も資産として含めれば、日本の金融資産はさらに跳ね上がると試算されているため、日本はギリシャのような財政破綻に陥ることはないとする論です。

2.日本の対外純資産
第二には、日本の対外純資産の規模が挙げられます。

対外純資産とは、日本の政府の外資準備高や企業の直接投資残高、銀行の体外融資残高などの海外に保有する資産と、証券投資や借入金など海外からの負債を差し引いた正味資産です。
日本の対外純資産は、2015年末時点でおよそ339兆円。続く2位のドイツが195兆円、3位の中国が192兆円で、日本は25年連続で世界一の対外純資産を持つ国となっています。

3.円建ての国債
そして第三の、最も大きな理由として挙げられるのは、日本の借金となる国債がすべて「円」で発行されている点です。日本国債の保有比率は、およそ国内で96%、海外で4%。この海外の国債も、すべて円建て発行されているため、万一返済を求められても通貨を刷ることができる、という論です。

しかし、国際通貨としての円の信用を支えている日銀が、ハイパーインフレの引き金となるような通貨の増刷を行えば、国際世論の傾きから逆に財政危機を招く恐れもあり、これはまさに「最後の手段」と言えるでしょう。

また、国債のほとんどが国内で流通しているということは、逆に見れば日本の借金のほとんどは日本国民の資産となっているとする見方もあります。

以前とある外国人のエコノミストと話した際、その方は日本の財政について心配をしていませんでした。なぜなのか理由を尋ねたところ、「日本は海外に借金をしていない。例えて言うなら“お父さん(日本国)は借金を抱えているが、お母さん(国民)から借りているようなもの”。ギリシャのように他国を巻き込んで大きな問題を引き起こさないと考えている」とのことでした。


近い将来、日本の財政破綻の引き金となるかもしれない不安要素
少子高齢化と社会保障費
とはいえ、日本で急速に進む高齢化は、多くの経済学者やエコノミストが指摘する不安要素です。日本が近い将来、財政破綻に繋がるシナリオとしては、今後ますます加速する日本の少子高齢化と人口減少が、市場の不信感を高める要因となることも考えられます。

日本の支出に占める最大の項目は、年々増大している社会保障費です。平成28年度の一般会計予算で見ると、歳出の実に33.1%が、社会保障関連費に充てられています。対して、社会保障費の財源となる消費税が歳入に占める割合は17.8%。税収だけでは不足する社会保障費を、公債金収入、つまり国債による収入で賄っています。

この赤字国債に依存する財政状態の改善が進まなければ、信用リスクが高まる要因となり得ると考えられます。

東京オリンピック後の2020年問題
直近のリスクとして挙げられるのは、東京オリンピックの開かれる4年後の、いわゆる「2020年問題」です。2020年になると、65歳以上の割合が人口の27.8%、3割近くを占めることが見込まれています。また、その子供世代に当たるバブル・団塊ジュニア世代も40歳後半~50歳代前半となり、ポスト不足による人件費の増大と、親世代の介護の負担が重なることになります。

さらに直前の19年10月に予定されている消費税増税、オリンピック後の好景気の反動低迷、雇用の縮小など景気の不安、そしてさらにG20など国際会議の場で約束してきた20年度の基礎的財政収支の黒字化の未達成といった、金融市場から日本の財政破綻のリスクが意識しはじめる要素が重なれば、「経済の温度計」と呼ばれるほど市場に敏感に反応する長期金利の上昇圧力がかかることも、十分考えられるのです。

また、1947年~49年生まれの団塊の世代がすべて75歳となる2025年には、日本人口に占める後期高齢者の割合は20%近くまで到達。年金・医療・介護など、社会保障にかかる負担は一層増大することが見込まれます。

2040年の「消滅可能性都市」
さらにショッキングな推計が、民間有識者で構成される日本創成会議が発表した2040年の「消滅可能性都市」です。

この推計によると、日本の人口が1億人を切る2040年まで少子化や地方の人口流出に歯止めがかからなかった場合、全国1800ある自治体のうち、実に49.8%にあたる896市区町村に消滅の可能性が指摘されています。

とくに、秋田、青森、岩手、島根、山形の5県では、8割以上の自治体が消滅する可能性が指摘されるなど地方に厳しい結果となりました。日本の少子化は、たった24年先の未来に、日本の街の1/2が消滅する可能性まではらんだ、大きな問題なのです。

今後、少子化対策による出生率の向上や、財政健全化の進捗が遅延すれば、財政破綻のトリガーとなるような国際的な信用リスクが高まる可能性は否定できません。

財政破綻に備え個人でできること
とはいえ実際に、これまでアルゼンチン、スペイン、ギリシャ、韓国、キブロスなど、財政破綻や財政危機に直面してきた国々を見ても、仮に日本が財政破綻したとしても、すぐに国民生活が破綻するわけではありません。

とくに海外への負債が小さい日本の場合は、民間経済への波及を最小限に留めることさえできれば、国民生活への影響も最小限に抑えることもできるでしょう。

しかし、財政破綻するということは、モノの価値が上がる一方、お金の「価値」が無くなることに繋がります。

インフレや円安、年金の停止、預金封鎖やインフラの悪化。とくにダメージが大きい年金生活を迎える世代にとっては、「もしもの時」に備える資産運用や資産分散は、これからの生活の安心のためにもますます重要な要素となってくるでしょう。

せっかくこれまで貯めてきた資産が無くなってしまうような異常事態はあってはいけません。“まさか心配はないだろう”とは思うものの、不安が払拭されるわけではないでしょう。
不安を抱えるくらいなら一度安全策を検討しておくべきではないでしょうか。

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