株式投資における新興国・先進国のリスクとポテンシャル
先進国の企業業績について
冒頭に述べた通り、上場企業のグローバルな企業活動は広がっています。
東証一部上場企業全体では海外売上比率は3割を超えており、米国S&P500指数構成銘柄では4割を超えています。
例えば、MSCIはMSCI ACWI指数(先進国・新興国を幅広くカバーする代表的株価指数)を用いて、面白い分析を公表しています(14.10月付「Economic Exposure in Global Investing」より)。
同レポートに拠れば、新興国株式の指数内時価総額構成比は11%に過ぎませんが、
同指数を構成する個別企業の地域別売上高を集計すると、売上高の35%が新興国地域からもたらされています。
同様の分析を代表的な先進国株式指数であるMSCIワールド指数で行うと、新興国地域の時価総額は定義上ゼロですが、同地域からの売上高は21%を占めています。
このように、新興国株式を直接買わなくても、先進国株式へ投資すれば間接的に新興国経済成長の恩恵をある程度享受できるようになってきています。
先進国株式には政治不安も少なく、コーポレートガバナンス等の整備も進んでおり、相対的な安心感もあります。
(MSCI「Economic Exposure in Global Investing」よりファイナンシャルスタンダード作成)
グローバル企業の特性
冒頭で例に挙げた自動車会社は日本の上場企業であり、日本に本社を置く純粋日本企業であることに間違いはありませんが、企業活動面ではもはや日本企業とは言えない存在です。
世界では法人税を引き下げる動きが継続しており、足元では米国で法人税率引き下げの法案が議会を通過しました。
米国の法人税率は世界でも高い部類に入っており、今回の引き下げで世界標準程度まで低下することになります。
先ほどの自動車会社がどこに本社を置き、どこで生産するかを意思決定する場合、もはや日本は多くの候補地の一つに過ぎません。
このような企業が米国に工場を建設し、米国で雇用や利益を拡大すれば、結果としてこの自動車会社の株価は上昇するでしょう(日本株上昇へ)。
但し、そのことが日本経済にとってプラスなのか否かに関しては、全く別の話になってしまいます。
自動車会社の利益が増加し、株価が上昇しても、日本国内の雇用や税収が増えるとは限らないからです。
また海外生産が拡大し、結果として利益が膨らんだ場合でも、日本国内の生産活動に従事する従業員の給与・賞与が増加するかも微妙なところです。
利益が増えたのは米国事業であり、日本事業ではないからです。
このように、グローバルで活動する企業が増加すると、日本株と日本経済が少しずつ乖離していく要因になります。
法人税引き下げ競争の背景には、このようなグローバル企業の誘致合戦という側面がありそうです。
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