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アジア通貨危機から学ぶ相場動向と米利上げによる金融危機のきざし

2016/09/06

経済のグローバル化、自由化、デジタル化によって、より多くのマネーが1日で取引される時代となりました。金融危機、通貨の暴落も数年に1度起きている状況です。投資家の誰もが、アメリカFRBの動向などの重要イベントを注視し、起こりうる危機的状況を先読みする必要に迫られています。

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大量の通貨がバーチャルに取引される時代の危機の特徴

1970年以降、多くの国が変動為替相場制を取り入れました。一時的な国の介入はあるものの、国の通貨が需要供給バランスで決まる「市場原理主義」への大きな転換点です。これと同時に、世界経済に影響しかねない事態が頻繁に起こるようになりました。2010年以降であれば、ギリシャ危機、バーナンキショック、イギリスのEU離脱など、相場を大きく変動させるイベントが発生しました。

最近の危機には、大きく分けて2点の特徴があります。

1点目は、危機が起きる間隔が短くなっていること。これは、変動為替相場制によって銀行が保有する外貨が増えたことによります。
2点目は、取引のデジタル化・自由化・国際化が進んだことで、1国のトラブルが世界に影響するスピードが劇的に短くなったことが挙げられます。

1970年以降の事件へ理解を深めることが、グローバル化が加速する現代の経済を正しく先読みすることにつながります。

アジア通貨危機を世界に波及させた2つの要素

当時、途上諸国1つに過ぎなかったタイの通貨危機が世界に波及した背景には、2つの誘因があります。70年代以降に起きた事件のなかでも多くの教訓と示唆をもつアジア通貨危機を、いま一度読み解いてみましょう。

・本来メリットであるはずのドルペック制が孕むリスク
自国の通貨をドルレートに連動させる制度を「ドルペッグ制」と言います。外貨獲得のため、当時のアジア諸国が次々に取り入れました。外資企業参入の足がかりともなる制度で、短い期間での大幅な経済成長が見込めます。実際にタイでも、住宅産業や工業の飛躍的成長が起きました。

急激なドル高は、連動通貨であるタイバーツの急騰も意味します。経済が成長過程なのに対し、通貨だけが先進国並みの価値。このアンバランスにより、通過暴落が引き起こされることとなります。

・ヘッジファンドのドル売りにより通貨危機は世界へ
1997年初頭、欧米のヘッジファンド大手が「タイバーツは経済状態に見合わない高値」として一斉に売り浴びせを開始しました。政府の資金力に限界のあるタイは、同年に変動相場制へ移行。一気に為替レートが下落し、破綻寸前に追い込まれる事態となりました。

この時、周辺のアジア諸国でも同じく、変動相場制への移行が余儀なくされました。各国の投資家は不安感を高め、通貨の売買が激化。これが、タイバーツ暴落が世界的通過危機へと波及した背景です。

FRBの利上げ政策でドル高情勢再来のきざし、金融危機の可能性も

2016年後半の相場について、日本総研のリサーチは「17年に向けてドル高へ触れる見込み」との見通しをつけています。FRBが続けるQE規模縮小・利上げ政策を追加で発表したことが、大きな根拠です。

外貨獲得により製造業を中心に経済成長の目覚ましいアジア諸国では、ドルの大量流出が始まっています。アジア通貨危機の教訓を活かし、IMFに介入されない財政立て直し策を模索する国が目立ちますが、経済成長度によってその体力はまちまちです。ドル高情勢が続けば、新たな通貨危機はまぬがれません。

多くの専門家は、2016年以降も短いインターバルで金融危機が連発するとの見解です。これまでの傾向からも、外貨の流入が急激に起こった途上国は数年後に自国通貨の急騰・暴落に陥っています。現在もアメリカのドル高政策は続いており、金融危機がいつ起きてもおかしくない状況が続くと考えられます。

頻発する急落に備えることなしには投資は出来ない時代、といっても過言ではないでしょう。
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