平成27年の相続税改正により、相続税を納める必要のない「基礎控除額」が4割も削減された影響で、課税対象となるご家庭は急増しました。相続税の節税対策は、身近な問題として対応を迫られることになっています。

1,500万円まで贈与税が非課税となる「教育資金の一括贈与制度」
そこで注目が集める生前贈与のひとつが、30歳未満の孫等の教育資金として信託銀行などに専用の口座を開設して預けた場合、1,500万円までは贈与税が非課税となる平成25年からはじまった子や孫に対する「教育資金の一括贈与制度」です。

しかし、この制度で非課税対象となるのは、あくまで「教育資金」に該当する費用のみ。
30歳になるまでに教育資金として使いきれなかった残高は、贈与を受けた子ども自身に贈与税が課税されるため、金額は多ければ多いほど良い、というわけではありません。

それでは実際、子どもが大人になるまでに使い切れる教育資金とは、いったいどの位の金額なのでしょうか。非課税贈与のメリットを最大限に活用するため、抑えておきたい教育資金の実態をまとめました。

学校(幼稚園~大学)に支払う費用の平均
教育資金の一括贈与で非課税となるのは、まず学校等に対して直接支払われる金額が該当します。ここには入学金、授業料、入学試験の検定料などに加え、学用品の購入費や修学旅行費、学校給食費なども含まれます。

こうした子ども一人あたりにかかる教育資金の実態を調べる上で参考になるのが、文部科学省が行っている「子どもの学習費調査」です。

最新の調査となる平成26年(2014年)の数値から、幼稚園から高校まで、公立・私立それぞれの学校教育でかかる、平均的な費用の総額をまとめました。

【公立学校(平均)】

  • 幼稚園3年間の総計 … 41.6万円

  • 小学校6年間の総計 … 61.4万円

  • 中学校3年間の総計 … 50.2万円

  • 高校3年間の総計 … 72.8万円



【私立学校(平均)】

  • 幼稚園3年間の総計 … 106.9万円

  • 小学校6年間の総計 … 559万円

  • 中学校3年間の総計 … 307.9万円

  • 高校3年間の総計 … 222万円



【大学の教育資金の総額は?】
大学まで進学した場合、進学先によって教育資金は大きく変わります。日本政策金融公庫が国の教育ローンを利用した方を対象に調査を行った平成27年度の「教育費負担の実態調査」によると、在学費用・施設設備費に加えて入学費用や受験料、その他入学時に大学に支払った総額は、平均で以下のような数字となります。

・短大(2年) … 381.4万円 ・国公立大(4年) … 516.3万円

また、私立大学に進学した場合は、選択する学部によっても費用に大きな差が出ています。


  • 私立大学(文系学部の平均) … 688万円

  • 私立大学(理系学部の平均) … 803.3万円




塾、習い事、予備校など学校外の教育に支払う費用の平均
教育資金の贈与で「教育資金」に該当する支出は、学校などに直接支払われる費用だけではありません。学習塾、習い事や予備校に支払う費用や、通学定期券代や留学のための渡航費などにかかる交通費についても、500万円を限度として非課税対象に含めることができます。

たとえばスイミングスクールに支払うお金と、水着やゴーグルなど指導で必要になる品物や、そろばん教室に直接支払うお金と教材費も該当します。

しかし、習い事に関連するお金であっても「指導する者の名前」で領収書が発行されたものに限られ、お店で直接ピアノを購入した金額などは含まれないので注意が必要です。

先ほどの、文部科学省の「子どもの学習費調査」では、学習塾や習い事に充てる金額についても、「補助学習費」「その他の学校外活動費」としてまとめられています。平均として、どの程度かかるのか見ていきましょう。

【公立学校に通う子どもの学習外活動費(平均)】

  • 幼稚園3年間の総計 … 25.1万円

  • 小学校6年間の総計 … 131.5万円

  • 中学校3年間の総計 … 94.3万円

  • 高校3年間の総計 … 50.2万円



【私立学校に通う子どもの学習外活動費(平均)】

  • 幼稚園3年間の総計 … 42.5万円

  • 小学校6年間の総計 … 362.4万円

  • 中学校3年間の総計 … 93.6万円

  • 高校3年間の総計 … 76.5万円




教育資金の一括贈与を賢く運用するポイント
これまで見てきた教育資金贈与の対象となる費用を合計すると、おおよそ次のような数字が見えてきます。


  • 幼稚園~高校まで、すべて公立学校に通う場合の平均 … 527.1万円

  • 幼稚園~高校まで、すべて私立学校に通う場合の平均 … 1771.5万円



このうち、特に注目したいのが、小学校6年間でかかる教育費用です。公立では192.9万円、私立では921.4万円と、平均でも700万円以上の差が開き、教育資金の総額に大きな影響があります。

とはいえ、全国でも私立の小学校の数は少なく、通う児童数も全体の1.2%に留まります。小学校入学前のお孫さんに対して贈与を考えるなら、ご両親が私立小学校への入学を検討しているか否かは、将来の教育資金を考える上で大きな判断基準となるでしょう。

4年制大学に進学した場合加算される教育費は、国公立大学であれば平均500万円程度。
つまり、大学まですべて公立学校に進学したケースの総額は、学校以外の習い事に支払うお金を含めて平均1,000万円前後になります。

ということは小学校で私立に通う場合や、私立大学に通ったり大学院まで進学したりする場合なら1500万円使い切ることが可能そうですね。

この制度は一人の子供に対して開設できる口座は一つに限られ、その上限が1,500万円です。

他の親族も贈与を検討している場合、総額として子どもが30歳になるまでに、使い切れない金額となることも十分考えられます。教育資金の一括贈与は、ご家族全体でよく相談し、計画的に運用することが必要になります。

教育資金贈与の非課税制度を利用する場合、平成31年(2019年)3月31日までの期間内であれば、専用口座の開設と追加の入金が可能です。

初めから多額の贈与をするのではなく、子や孫の将来に必要な教育資金を相談しながら追加で入金することも視野に入れ、賢い節税対策として活用しましょう。


>>購入者の7割が不満?なぜあなたの投資信託選びは失敗するのか?