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ようやく分かったマイナス金利、市場/生活への影響は?

2016/02/29

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マイナス金利を理解する為には?

日銀が追加緩和政策として打ち出した 「マイナス金利」とは、そもそもどのようなことなのでしょうか。

みなさんもご存知のように、「マイナス金利」が導入されたからといって、単純に銀行に預けている預金金利や、住宅ローンなどの金利がマイナスになるという事ではありません。

今回の「マイナス金利」の政策は、金融機関が日銀に保有する日銀当座預金と呼ばれる決済口座の預金金利について、2016年2月16日以降、一部については「マイナス0.1%」にするという内容でした。単純に導入された内容だけを伝えると非常に難しく聞こえるので、ここでは噛み砕いて説明をしていきたいと思います。

まず始めに「マイナス金利」理解する上で重要な基本的知識として「日銀当座預金の仕組み」「付利」の2点について説明します。

①日銀当座預金とは?
日銀当座預金とは、日本銀行が取引先の民間の金融機関受け入れている当座預金のことをいいます。
この日銀当座預金には主に3つの役割があり、金融機関は多額の資金を日銀当座預金に預けています。

①金融機関同士や国との取引を行なう場合の決済口座の役割
②金融機関が個人や企業に支払う現金通貨の準備金としての役割
③準備預金制度(万が一預金者からの払い出しが集中した場合に対処できるよう、預金総額の一定割合を日銀当座預金に資金を預けることが義務づけられている)の対象となっている金融機関の準備預金の預入先の役割

つまり、金融機関は預金額の、ある一定割合を日銀当座預金に預ける義務があり、またその他様々な決済をする為に多くの資金を日銀に預けています。下記の図は、金融機関が日銀当座預金に預けている預金残高の推移です。当座預金の預金残高は、見ての通り、ここ数年で大幅に増えています。大幅に増えている理由として、日銀の異次元金融緩和による国債の買上が大きな理由ですが、資金が日銀当座預金に滞留する理由に「付利」があります。

②付利とは?
金融機関が日銀預けている当座預金は、2008年10月までは、0%の金利が付かない預金でした。しかし、2008年10月に補完当座預金制度とよばれる、準備預金制度における預金をこえる準備資金に対して、利息を払う時限的対策を打ち出しました。その後制度は延長され、現在もこの制度は続いています。日銀は準備預金制度の対象となっている金融機関が日銀に預けている当座預金のうちの法定準備預金額を超える部分に対して、この制度により年利0.1%の利息(付利)を支払っています。つまり、日銀は金融機関が預けている当座預金のうち、万が一の為に預けておかなければならない準備金以外の預金に、0.1%の金利を支払っているということです。その為、金融機関は余裕資金を日銀に預けておくことが一つの有力な資金運用の手段となっており、現在この準備金以外の預金だけで200兆円を超える資金が預けられています。

マイナス金利政策とは?

今回日銀が打ち出した「マイナス金利」とは、日銀当座預金の内、法令の準備預金(マクロ加算残高)には0%、昨年の1年間の日銀当座預金の平均残高から法令の準備預金を差し引いた金額(基礎残高)には0.1%(付利)、この2つの合計を上回る当座預金残高(政策金利残高)については、マイナス0.1%の金利を適用するという政策です。

先ほど説明した通り、金融機関は準備預金以上に資金を日銀当座預金に預けていれば0.1%の金利を際限なく受け取れていました。しかし、今後は一定金額以上預けている預金については、逆に0.1%の手数料を支払う事になります。
具体的には、現在日銀の当座預金の残高は260兆円程あり、その内「準備預金」(義務化されている預金)は約40兆円、昨年の当座預金平均残高は約200〜220兆円、改めてマイナス金利が導入される預金は約10〜30兆円程度と言われています。

なぜマイナス金利政策を実施するのか?

日銀がマイナス金利政策を導入することで、市場金利の水準を今まで以上に引き下げ、金融機関の貸し出しを伸ばし、企業からの借り入れ需要を引き出すなど経済全体の活性化を図る為です。また、金利を引き下げる事で為替相場において円安を誘発させ、企業収益の押し上げを図る意図や、早期にインフレ目標2%を達成し、デフレ脱却への道筋を示したい点もあると考えられます。
もっとも、日本市場全体で資金の需要は限られており、金利を引き下げるだけで借り入れの需要が伸びるには限界があり、大きく効果を上げるかどうかについては疑問の声も上がっています。

預金はどうなるのか?

現状において、預金金利が今後さらに下がり限りなく「0」に近づくことが予想されますが、預金金利自体がマイナスになることはないと思います。理由として、預金金利がマイナスになると、預金の大量流出が起こり、金融機関の財務においても多大な影響を及ぼす可能性があるからです。

では、日本より先にマイナス金利を導入した欧州ではどうでしょうか。2014年12月にスイスは政策金利であるLIBOR誘導目標をマイナス0.25%に引き下げ、マイナス金利を導入しました。当初のマイナス0.25%から現在はマイナス0.75%とマイナス金利の拡大を受け、スイスの銀行ではそのコストを顧客に転化しはじめています。現在、小額の預金については金利が0%に近しい水準でマイナスにはなってはいませんが、大口預金については最大で3%の手数料を取ることを発表している銀行もあります。
現在の状況をみれば、日本の銀行預金がすぐにマイナスになる可能性は低いと思いますが、マイナス金利の幅が拡大した場合、ヨーロッパの事例と同様に、一部預金のマイナス金利化が進む可能性もあることは注意が必要です。

住宅ローンの金利はどうなるのか?

住宅ローンについては、銀行預金同様、今後は借り入れ金利が引き下がる可能性が高いと考えられますが、借り入れ金利がマイナスになることは考えにくいと思われます。欧州においても基本的には住宅ローンの金利がマイナスになっている事例はほとんどありませんが、デンマークでは、ある一定金額の借り入れで、且つ優良な借り手の場合には一部マイナス金利でローンを借りる事ができる住宅ローンが登場しています。しかし、実質的にはローンを借りる際に手数料がかかるため、一部金利分については得をするが、借りる事で手取りが増えると言う事ではないようです。

マイナス金利導入で市場は?

2016年1月29日の日銀のマイナス金利導入の発表後、市場は大きく乱高下しました。
為替は一時1ドル121円台へと118円台から円安へと進みましたが、その後、110円代まで大幅に円高が進み、株式については発表後乱高下しながら、2日間で800円以上上昇したものの、その後8日間で3000円近く大幅に下落しました。

もちろん、「マイナス金利」だけの影響ではありませんが、発表後、為替・株式市場は不安定な状態が続いています。また10年日本国債の利回りについても、0.22%から急低下、2/24には-0.055%の水準まで下がり、一部金融機関では定期預金の金利引き下げの発表をしたところも出てきました。
それでは、今後「マイナス金利」が市場に与える影響はどのような事が想定されるのでしょうか。

マイナス金利政策が市場に与える影響

為替市場
為替を動かす要因として、金利差は大きな決定要因の一つです。
つまり、マイナス金利を導入するということは、相対的に他通貨に対して金利が低下する為、魅力が薄れ基本的には通貨安を誘発しやすいと考えられます。欧州では、2014年6月5日にマイナス金利を導入後、ユーロは対ドルに対して、1.35から1.05まで約30%ユーロ安が進みました。もちろん、マイナス金利のみでユーロ安が達成された訳ではありませんが、対ドルに対して大きくユーロ安が進みました。

では、今後、円とドルの為替の見通しはどうでしょうか。
基本的には日本もユーロと同様にマイナス金利は円安を誘発する材料になりやすいと考えられます。事実、マイナス金利発表後には先ほど説明した通り、円安方向に為替は大きく動きました。しかし、その後大きく円高に為替が振れました。これは、市場の混乱と、米国景気への不透明感から、FRBが年内の利上げに慎重になっており(昨年においては年4回の利上げが想定されていた)、利上げ期待で押し上がっていたドルが大きく売られたことが要因となりました現状では、マイナス金利による金利差の拡大要因よりも、ここもとドル高の要因となっていた米国の利上げ見送りが材料視されており、今後の為替の見通しは、米国の利上げのペース次第では、さらなる円高になることも想定されると考えます。

株式市場
マイナス金利の導入は、日銀当座預金に資金が滞留する事を抑制し、企業への資金の貸出しや、リスク資産へ投資を促す効果があると考えられます。金利低下により、債券投資でのリターンが期待出来ない為、リターンが期待できる資産である、株式や不動産へ資金が流れる可能性は高いと考えます。
株式においては、高配当銘柄や、不動産、ノンバンクなど金利低下により恩恵を受ける業種については特に上昇が期待できると考えます。一方、銀行や保険など金融機関についてはマイナス金利による負担や、債券での運用収益の低下など、マイナスの影響をうける業種もあります。
マイナス金利を導入している欧州において、デンマークやスウェーデンは住宅価格が上昇しており、不動産関連の株式は上昇しているが、逆に銀行等の金融機関の株式は軒並みリーマンショックの水準と同じ位置まで調整しています。

日本においても、マイナス金利発表後、リートや不動産株が買われ、銀行株は大きく下落しました。今後は、業種によって株価の変動に大きくバラツキが出てくる事が予想されます。ただし、日本株は為替との相関性が高く、今後為替が円高に振れた場合、マイナス金利の影響を打ち消して、株価が下落する可能性についても注視する必要があります。

最後に

今日、原油安やテロ、中東での宗教的内紛の拡大、移民問題など、世界では様々な問題が起こり市場に大きな影響を与えています。
また、日本、欧州が異例の金融緩和政策を導入しているのに対し、アメリカでは長期の金融緩和政策から6年ぶりに利上げに踏切りました。この金融政策の違いが、現在の市場の乱高下を誘発している要因であるとも考えられています。今後は、日本だけでなく、世界の金融政策の変更が市場にどのよう影響を及ぼすのかを、注意深く見守る必要がありそうです。

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