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鉄の価格、大暴落!? 理解のカギは中国とオーストラリアの関係?

2017/06/27

鉄鉱石の価格が2014年以降下落基調にありました。暴落の原因は中国経済の急激な減速が関係していると言われますが、関連してオーストラリア経済やブラジル経済にも深刻な影響を与えていると見られています。鉄鉱石価格の下落が続けばどんな影響があるのか、検証します。
(※当コラムは2016年1月に掲載した記事を加筆し、2017年6月に再掲載しております)

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「鉄鉱石」だけが価格暴落、当面の予想も価格低迷?

2015年、鉄鉱石の価格下落は、一時的に1トン=60ドルを回復し下げ止まったかに思われたものの、年末にかけて大幅に調整しました。2009年5月以来の最安値となった7月8日の44ドル台を割り込み、2015年12月15日には37.5ドルの安値をつけました。

「鉄は産業の米」と言われますが、ビルや工場の建築をはじめ、道路、鉄道、橋といったインフラの建築にも鉄鋼は不可欠なものです。21世紀に入ってからBRICSに代表される新興国が急速に経済成長を遂げ、鉄鋼需要は年々凄まじい勢いで伸びてきました。

とりわけ、中国の経済成長の急成長ぶりは誰もが認めるところであり、中国の粗鋼生産量は2000年には約1億トンだったものが2014年には8億2270万トンにまで増えています。世界の経済成長を牽引してきた原動力が中国と言っても過言ではないでしょう。

ところが、その中国経済の成長に陰りが見えてきます。シャドーバンキングや不動産価格下落などバブル崩壊がささやかれ始め、将来的に消費拡大が見込まれていた鉄鋼需要に陰りが見えてきます。実際、2015年の中国の粗鋼生産量は8億1000万トン程度に留まるとみられ、1981年以来34年ぶりに前年を下回ると予想されています。

こうした鉄鋼ニーズの減少を見越して、その原料となる鉄鉱石は2013年から下落を始めました。一時は150ドル台まで上昇した鉄鉱石が、いまや3分の1の価格にまで下落しています。さらに、今年5月に発表されたIMF(国際通貨基金)の価格見通しでは、2016年まで50ドルを下回る水準が続くとされました。

鉄鉱石の下落に比べると、他の資源価格は大きな下落を記録しているわけではありません。たとえばニッケルやスズはそれぞれ35%程度下落しているものの、銅やアルミ、鉛は10%程度の下落で留まっています。そして「鉄鋼」そのものも3割程度の下落に留まっています。

中国経済の減速と大きな関わり?

なぜ、鉄鉱石だけがここまで下落しているのでしょうか。その背景には、大きく分けて次のような原因が考えられます。

①最大の鉄鉱石需要国・中国の事情
世界ベースでの鉄鋼生産量を見ると、その半分が「スクラップ鉄」から生産されていることが分かります。米国では鉄鋼生産の6割がスクラップ鉄と言われており、建築廃材や中古車などから安定的に鉄材を加工して鉄鋼を生産することができます。

一方、発展途上の中国にはスクラップ鉄がなく、ほとんどの鉄鋼生産に鉄鉱石を使うことになります。実際、中国は世界一の鉄鉱石産出国であり、そのシェアは47%(2014年、CMEグループ調べ、以下同)です。第2位のオーストラリア21%、第3位のブラジルの10%を大きく引き離しているものの、中国が消費する鉄鉱石は世界全体の7割以上を占めると言われています。

鉄鉱石需要の大半を消費する中国経済に減速感が出てきたことが、鉄鉱石下落の最大要因と言えます。

②価格下落でも生産続ける供給会社の事情
1年間で6割も価格下落した鉄鉱石市場ですが、価格暴落の原因のひとつに供給サイドの問題があります。

原油価格が1バーレル=100ドル超から30ドル台に暴落しましたが、その原因のひとつがOPEC(石油輸出国機構)による供給過剰でした。原油価格の急騰で採算ベースに乗った米国のシェールガス開発を再び採算割れに追い込み、最終的にOPECによる価格決定権の獲得を狙っていると言われています。

同様に、鉄鉱石の生産はブラジルの「ヴァーレ」、オーストラリアの「BHPビリトン」「リオティント」の3社が6割程度のシェアを握っており、鉄鉱石価格を下落させることで中小の鉄鉱石生産会社を業界から排除する狙いがあるのではないかと言われています。

③中国が抱える鉄鉱石在庫の行方
中国経済の景気減速は今や確信に変わっており、そう簡単には景気を回復できそうもありません。言い換えれば今後中国の粗鋼消費量は急激に減少していく可能性があり、すでに在庫が一定程度積み上がっているとみてよさそうです。中国の鉄鉱石生産高や在庫の状況によって、鉄鉱石価格は大きく揺れ動くとみていいでしょう。

オーストラリア、ブラジル経済に大きな打撃

原油価格の下落は、世界経済全体に大きな影響を与えました。ロシアやブラジル、インドネシア、中東諸国などの経済が減速し、米ドル高と相まって通貨が下落しインフレに陥る国も出ています。

では、原油価格を上回る鉄鉱石価格の下落は、どんな影響を与えるのでしょうか。世界最大の鉄鉱石輸出国であるオーストラリア経済はGDPを2.2%(2014年)、輸出国第2位のブラジルも0.7%(同)引き下げたと言われています。

こうした鉄鉱石価格下落に苦しむオーストラリアは、以前から中国経済に大きな影響を受けており、とりわけ通貨の豪ドルは中国経済に翻弄されてきた部分があります。中国経済の減速以降、豪ドルは大きく売られたものの中央銀行に当たるオーストラリア準備銀行(RBA)の巧みな金融政策によって輸出を伸ばし、輸入品価格の上昇を抑えています。

とはいえ、これ以上の通貨安はインフレなど様々な不安材料をもたらします。鉄鉱石価格と連動して豪ドル安が進んでおり、豪ドルの推移は鉄鉱石価格次第とも見られています。
次のチャートを見てみると、鉄鉱石の価格と豪ドル相場と中国実質GDPの連動性はやはり高いように見えます。

赤 AUD/USD
青 鉄鉱石価格(USD)
白 中国実質GDP(%)
出所)ブルームバーグ

オーストラリアと比較すると、ブラジル通貨「ブラジルレアル」は鉄鉱石価格以上の下落を続けています。通貨安によるインフレも深刻で、どう抑えるかが課題になりつつあります。これ以上の鉄鉱石下落はブラジル経済に、さらなる試練をもたらすかもしれません。

2017年6月7日にオーストラリア統計局が発表した1-3月期の実質GDPは前期比+0.3%となり、景気拡大期は25年9か月と世界最長に並びました。景気拡大期の長さの歴代最長は1980年代初頭から続いたオランダですが、オーストラリアが今回最長記録を更新するとの見通しが強くなっています。
(ちなみに景気後退の定義は2四半期連続のマイナス成長です)

鉄鉱石価格の下落から輸出は伸び悩んでいますが、住宅をはじめとした住宅市場が下支えをした構図です。今後のオーストラリアの成長戦略はまだまだ描けておらず、中国とともに歩んだ四半世紀の次の一手が必要になります。

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