ブラジルへの投資は危険!? ブラジル経済の実態と様々な失速要因
ワールドカップにオリンピック。人口増で資源がある。南米の雄ブラジルの成長性に賭けて投資をした人は多いはず。なのにブラジルから聞こえてくるニュースは暗いものが多いのが実情です。本稿ではブラジル経済の本当のところに少しでも迫ってみようと思います。
ブラジルにおいて、2016年5月にルセフ大統領が不正会計の容疑で職務停止処分を受け、テメル副大統領が代行を務めることになりました。しかし、国民からの人気は低く、専門家の中でも「問題が山積みだ」という意見が多いようです。
期待に反して大幅に失速したブラジル経済
もともとブラジルは今後大きな成長をするだろうと期待されていた国家でした。それは豊富な天然資源を持っていたことと、2014年のワールドカップ、2016年のリオ五輪という2大イベントで投資資金の大きな流入が期待できたことが要因です。
しかし、実際には「大恐慌以来だ」と言われるほどの景気後退が続いています。政府債務や財政赤字の急増、金利の高騰、失業率の2桁台到達、大幅なインフレなど問題ばかりが並びます。格付け会社では国債の格付けを「ジャンク」にまで引き下げるほどです。
不正疑惑をはじめとするさまざまな失速要因
ブラジル経済が落ち込んだもっとも大きな理由として挙げられるものが、国内トップ企業でもある国営石油公社ペトロブラスの汚職事件です。これは過去10年に渡って建設・電気工事会社などの取引先と水増し契約を繰り返し、合計で100億レアルの裏金を作って政治家に違法献金していたとされるものです。
ちょうどこの時期にルセフ大統領が同社の取締役会議長を務めていたことで、大きな政治不信を招くことになりました。同氏は容疑を否認しており、「クーデターだ」と非難しています。しかし、大規模な反政府デモが起きるまで事態は発展し、最終的に弾劾裁判で職務停止に追い込まれることになりました。
他にも、ブラジルコストと言われる複雑な税制、治安の悪さ、2016年の1月頃から続くジカ熱の流行や、南東部で長く続いている干ばつなどによる影響も大きいとされています。
テメル氏の政策とブラジル経済の今後の見通し
今後ブラジル経済が回復するかはテメル氏の手腕に掛かっています。同氏は景気回復と政治の安定化のために、元中央銀行総裁のエンリケ・メイレレス氏を新財務相に指名、新たな経済チームを編成するなどの取り組みを行っています。
しかし、インターネット上では早くも批判を浴びているようです。これはチームに女性や黒人が含まれていないことが原因の1つになっていると言われています。
BRICsという言葉と共に大きな期待を抱かれていたブラジル経済ですが、スキャンダルによって大幅に失速しています。専門家の中でも「今後の回復はかなり難しい」という意見が多数を占めているようです。