原油価格動向を占う次世代エネルギー シェールガス・太陽光・水力
原油価格の低迷が問題視されています。OPEC諸国は協調姿勢を見せ始め、産油小国はエネルギーを石油に頼らない国造りへ舵をきりつつあります。なかでも、太陽光と水力発電はメガ規模でのインフラ整備が進行中です。
WTI相場は、上昇しつつも未だ安値水準
2016年初頭に20ドル台へ突入した原油価格は、OPEC各国が歩み寄りの姿勢を見せたことで一旦30~40ドル台へ戻しています。しかし、石油大国と言われるサウジやベネズエラが具体的な合意に至らず、有効な策は未だ取られていません。
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相場の指標となるWTIも、中東の動きを注意深く見守っています。「具体的な協調行動が出れば、原油価格は60ドル水準まで持ち直す」との見方を持つ投資家が少なくありません。しかし、イランへの制裁解除が重なったため、「足並みは揃わないだろう」というのが大方の予測です。
シェールガスによる供給過多と長引く原油安
原油価格下落の一因であるシェールガス産業の動向にも、注意を向ける必要があります。これまで精製コストの大きさから「息の短い産業」「石油戻りのトリガー」とされてきたシェールですが、設備投資が終わっていることから今後利益をだしていくのではと考えられているためです。
産油国が相場回復へ動きを見せたとしても、シェール産業による掘削技術が無くなるわけではありません。世界的な原油余りは終わらず、相場がリーマンショック以前の水準まで持ち直すことはないかもしれません。
太陽光と水力に産油小国が次々乗り換え
埋蔵量の少ない産油小国は、次世代エネルギーへの転換を強いられています。
例えばドバイ電力水道公社(DEWA)は、2030年までに1000メガワット規模のソーラー発電所建設計画を発表しました。同社は2030年までに電力需要の25%を再生可能エネルギーで賄うことを目標に掲げています。サイード・テイヤー最高経営責任者は、第一段階として2021年4月までにCSP施設で200メガワットの発電を目指し、世界最大級のソーラー施設建設へ動き始めています。
中米コスタリカでは、2010年より「レベンタソン水力発電計画(Reventazon Hydroelectric Project)」に着手、まもなく全面稼働を迎えます。1基の出力は73メガワット。これが4基設置され、525,000世帯分の電力をまかなえる試算です。コスタリカは、産油量世界50位以下の小国です。自国の電力をクリーンエネルギーのみでまかなうという国家目標があり、それが達成されようとしています。
この他にも、イスラエルのメガソーラー建設計画、メキシコ技術者チームによる尿から家庭用電力をつくる技術の開発など、世界はいま次世代エネルギーへの転換期に差し掛かっています。この動きはさらに加速すると見られ、今後の原油余り・価格低迷は加速すると考えられます。
石油余り、価格低迷の波はしばらく引く気配がなく、北米・中東・欧州の主要産油国は苦しい状況が続く見通しです。一方で、次世代エネルギーの草分けとして、長年注目されてきた太陽光及び水力発電。この2つがついに、石油に代わるエネルギーとして活用され始めています。