多様化する「終活スタイル」 これまでの葬儀概念が変化するワケ
「終活」とは具体的にどのようなことをするのか
「終活」とは、人生の最期を美しく迎えるために必要なことは何か?
まず思い付くことは、遺言やエンディングノートの作成でしょう。「終活」を行ううえでもっともシビアに考えるべき事柄は、遺産相続についてではないでしょうか。あらかじめ準備しておくと、遺された人たちに(争いにならないように配慮しながら)自身の意志を表明することができます。
それから生前整理です。これは体の自由がきく間に、自身にとって本当に大切なモノ以外はできる限り少なくしておくことを言います。流行りの言葉でいえば「断捨離」です。この生前整理を行うことによって、遺族の遺品整理の負担を軽くすることができます。
また企業や団体で活動している人の場合は、その後継者を育てることも大切です。自分がいなくなった場合にも活動がスムーズに継続できるよう準備しておく必要があります。
これ以外にも、延命治療を行うか否かなどの意思表示、葬儀・埋葬についてどう執り行うか準備しておくなどが挙げられます。
こうして見ていくと「終活」は人生を終えた後、周囲から「あの人は有終の美を飾った」と思ってもらうための活動と言い換えてもいいのではないでしょうか。
「終活」というとどうしても高齢者が行うものと思われがちですが、実際には40代の独身者や子持ちの女性なども多く、幅広い世代に浸透しつつあります。「終活」はもはや、老いてから行うべきことではなくなっています。
「死」は、言うまでもなく年齢順にやって来るものではありません。若くして病気や事故でこの世を去る人も数多くいます。ですから、終活を始める年齢に早いも遅いもないでしょう。思い立った時が終活開始適齢期です。
供養の方法やお墓もさまざまな形態に変化
今の世の中、お墓についてもさまざまな形態に変化してきています。もともと日本の場合お墓は世代から世代へ引き継がれていくという考えですので、世襲する者が寺院などに管理料を支払いながら供養し墓を守っていきます。
しかしながら最近では、寺院などが永代にわたり管理・供養するお墓「永代供養墓」が増えてきています。
永代供養墓も多種多様な形式があり、スタイルに合わせて選択することができます。「先祖代々のお墓」だけに固執することなく、「永代供養墓」以外にも一代限りの「個人墓」、夫婦両家の「両家墓」、夫婦二人だけの「夫婦墓」、血縁関係なく利用する「共同墓」というように、さまざまなタイプのものが造られるようになってきました。
また、遺骨についても従来のようにお墓に納骨するのではなく、海、山、川、空に散骨したり、樹木の下に遺骨を埋葬したりする新しい形が普及し始めています。お墓の代わりに遺骨を自宅などに置く骨壺も、ガラスや金属製などデザインの幅が広がっています。
葬儀概念の変化は時代の変化と共に
それでは、どうしてこのように葬儀の形が多様化してきているのでしょうか。
戦前までの日本は、二世代家族もしくは三世代家族などの大人数の家族が中心でしたが、戦後は急速に核家族化が進みました。世代的には団塊の世代といわれる人々あたりからです。核家族化は「家」という枠組みが緩やかになったことでもあります。また、承継者の不在などの問題も起きて菩提寺と檀家という関係も希薄になっていきました。
このような時代の変化が葬儀概念の変化をもたらしているのです。