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「7,100トンのバター不足」はなぜ起こるのか?

2015/07/13

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バター不足はなぜ起こる?

「品薄につきバターの購入はお一人様1個までに願います」
筆者の近所にあるスーパーマーケットの乳製品売場で見つけた張り紙です。
売り場からバターが姿を消した2008年のバター不足騒動以来、何度かのバター不足の年を経て一部の店では今なお購入数量の制限が続いています。

生乳生産者団体や乳業販売者で構成する一般社団法人Jミルク(東京都中央区)は5月25日、2015年度末のバター在庫が前年比で7,100トン不足する見通しを発表しました。
これを受けて農林水産省は、5月27日、今年度分の供給不足に対応するためバター1万トンの追加輸入を決定。
追加分は、昨年度より1カ月早く10月中までに輸入を完了させ、クリスマスに向けて高まるバター需要期に間に合わせるそうです。

今年も猛暑なら、さらにバター不足に?

追加輸入するバター1万トンのうち、8,000トンが25キロ箱入りの業務用冷凍バラバターで、洋菓子・パン工場などの大口需要者向けとなります。
残る2,000トンは洋菓子店が使う1~5キロ規格の業務用冷凍バターです。業務用の需要を輸入分で補てんすることにより、国内メーカーには家庭用バターの生産を促す狙いです。

さらに農水省は9月にも追加輸入の上積みについて判断する予定です。
もしも今年の夏が猛暑となった場合、暑さに弱い乳牛は乳量が減ってしまうため生乳生産が落ち込みます。
生乳生産量が落ち込むと、農家はより高く取引される牛乳やヨーグルトなどに生乳を多く割り、
バター用の生乳の量を減らすため、バター生産に回る生乳が減少します。

こうした不確定要素に伴う需給状況の変動にも対応できる姿勢を示した形です。追加輸入によるバターの不足傾向解消はなお不透明ではありますが、「どこを探してもバターがない」という最悪の状況は避けられそうです。

バターは民間が自由に輸入できない「国家貿易品目」

2008年以降頻発するバター不足の根本原因は、どこにあるのでしょうか。その前に、国内の生乳生産とバター生産の現状を見てみましょう。

生乳生産は1996年度の866万トンをピークに徐々に減少、2010年度以降は750万トン前後を推移しています。
バター生産量は1993年度の10万5,000トンをピークに減少。10年度以降7万~6万1,000トン台を上下しつつ低下~横ばい傾向にあります。
ほかの乳製品と比べて生産量の振れ幅が大きい傾向があり、2000年度以降で前年比10%以上増減した年は5回。生乳の飲用・加工用需要における調整弁となっていたことが分かります。

今年度の国内バター生産見通しは6万4,800トンで、需要見通し7万4,700トンに対し大きく不足。
需要を国内生産でまかなえない状況はすでに2010年度から継続しています。不足が予想されるなら「もっと輸入したらいいのに」と思うでしょう。
ところがバターは輸入が自由化されていない国家貿易品目で、ここに最大の問題があるのです。

バターの輸入量は、国際約束に基づく乳製品の義務的輸入(=カレント・アクセス)でのバターの割り当て分を含めて、国が決めています。
国産バターが需要をまかなえない状況下で、需給動向の判断や輸入量決定、輸入実行そして売り渡しのタイミングを誤ると、数カ月でバター不足が発生するのです。

国内酪農家の保護か、バター不足解消か

バターの輸入・売り渡しの窓口となるのは、独立行政法人農畜産業振興機構(東京都港区、以下alic)です。
輸入パターンは実質2つあり、1つはalicが直接輸入する方式、もう1つは民間が輸入するバターをalicが買い取り、輸入差益を上乗せした価格で輸入業者が即時に買い戻すSBS方式というものです。
どちらの方式もalicに大きな差益が生じますが、その一部は加工原料用生乳の生産者に対する補助金の原資になります。

国内の酪農家や生乳加工業者の保護を背景にしたバターの国家貿易と関税障壁ではありますが、今後もバターの不足傾向が続けば、TPP交渉などの「外圧」だけでなく国内消費者・需要者からもバター輸入自由化を求める「内圧」が広がると懸念されます。

もしバター輸入が自由化されたなら、民間業者は長期的な需給動向を先行判断してバターを確保し、バターが適正な価格・適切なタイミングで市場に供給されるのではないでしょうか。

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