凄腕ファンドマネージャー糸島孝俊氏に聞く「ファンドマネージャー」の仕事とは?
《凄腕の愛称を持つファンドマネージャーの糸島さんですが、糸島さんから見たファンドマネージャーに適した人材とはどんな人材なのだろうか。》
◆ファンドマネージャーに適しているのはどのような人ですか?
①信頼できる人
②自らの任務を十分に理解している人
③考え計画し判断したことを実行できる人
④その結果を冷静かつ客観的に検証できる人
ではないかと私は思います。
お客様から大切な資金の運用を委託されているわけですから、独断と偏見で突っ走るタイプでも慎重すぎて勝負できないタイプでも責務を全うすることはできません。
どんな局面においても、冷静沈着な思考回路とバランス感覚を保ち、鋭く的確な先読みや深い洞察力を発揮することをできる人こそ、ファンドマネージャーに適した人なのではないでしょうか。
《「投資信託」とはその名の通り「資産を投げて信じて託す」と書きます。
お客様はファンドマネージャーを信頼して大切なお金を託すのです。どんな相場の時も、冷静沈着な思考で判断出来る能力を持っている人こそ、お客様から信頼されるファンドマネージャーなのでしょう。
たくさんの経験と実績を積んでファンドマネージャーになられて、素晴らしい成績残し続けている糸島さんですが、そんな糸島さんがファンドマネージャーになられて一番難しいと思う事はどんなことなのでしょうか。》
◆ファンドマネージャーになって一番難しかったことは?
そもそもファンドマネージャーになるまでの道は非常に狭き門になりますので、まずファンドマネージャーになることが難しいと言えます。
お客様から大切な資金の運用を任せて頂くわけですから、専門知識だけでなく人格、勤務態度などが備わっていないと運用部に配属されることはないと思っても過言ではありません。
日本株式のボトムアップリサーチ型のアクティブ運用の場合、通常はアナリストやアシスタント・ファンドマネージャーとして運用チームの一員となり、経験を積んで実績を上げた後にようやくファンドの責任者として自立することになります。
ファンドマネージャーにとって最も難しいこと、それは高いパフォーマンス(運用成績)を持続的に上げることです。
ファンドマネージャーの使命であり、常に全力でパフォーマンスを上げるべく取り組んでいます。
《お客様の資産を守りながら常に高いパフォーマンスを持続的に上げることは非常に難しいこと。その使命を全うするためにはたくさんの知識と経験、強い精神力が必要です。全力で使命を全うし続ける糸島さんですが、ファンドマネージャーとしての経験の中でどんな事に喜びや辛さを感じるのでしょうか。》
◆キャリアの中で一番楽しかった・辛かったことは?
楽しいことを満足度と言いかえれば、お客様に高いパフォーマンスを還元できた時ですが、その満足に心酔する余裕は全くありません。
それは、次の瞬間からその先のパフォーマンスを上げるために全力投球しなくてはならないためです。
「相場が下落した際に辛くないですか?」とよく言われることがありますが、辛い状況であっても心が振れては絶対にいけないと思っています。
短期的にパフォーマンスが厳しい状況にあってもお客様への運用報告から逃げることなく、そうした状況だからこそ真摯に事態を説明しなければならないと思っています。
このことを辛いと思っていてはファンドマネージャーの責務を全うすることはできないと考えています。
《四半期ごとに運用セミナーを実施し、糸島さん自らお客様に向けて運用報告をし、又、テレビや新聞などを通じて積極的にお客様の前に立ち、逃げない姿勢を貫いている糸島さん。“相場が悪い時にこそ逃げない”真っすぐな瞳でそう力強くおっしゃる糸島さんがとても印象的でした。この姿勢が、正にお客様の信頼に繋がるのだと確信しました。「楽しい」や「辛い」を思わないようにされているその冷静沈着さこそが、ファンドマネージャーに必要な「的確な判断」に繋がるのでしょう。》
◆尊敬、目標とするファンドマネージャーは?
日本にも成績優秀なファンドマネージャーがたくさんいますが、今は目標とする人は日本にはいません。
私は世界で通用する日本株のプロになりたいと思っていますので、目標とするのは日本以外で活躍する世界のファンドマネージャーです。
川上穣さんという日本経済新聞で記者をなさっている方の著書『リスク・テイカーズ ―相場を動かす8人のカリスマ投資家』(日本経済新聞出版社より2014年10月出版)
には、強烈で個性あふれる8人のファンドマネージャーが登場します。
私が目標とするのはこれらの方々です。
【ダイエル・ローブ、デイビット・テッパー、デービット・アイホーン、ビル・アックマン、ジム・チェイノス、レイ・ダリオ、カイル・バス、ウォーレン・バフェット】
この8人は強い信念を持ち、リスクを恐れず果敢に市場と向き合ってきた猛者たちです。
私は本を久しぶりに読んで震えました。
いつかはその方々に追い付けるようになれればと思っています。
《様々な経験と知識を持ち、現在トップファンドマネージャーとして活躍中の糸島さんですが、大変謙虚で、ファンドマネージャーとして適した人材であると述べられた①〜④に正に当てはまる、本当に信頼出来る方でした。
糸島さんが目標とする、世界で通用する日本株のプロになる日も近いのではないでしょうか。
お客様の資産を守りながら、全力でパフォーマンスを上げるべくファンドマネージャーとしての使命を貫いていらっしゃる糸島さん。
様々な経験と苦労を乗り越えたからこそ聞く事ができる貴重なお話をたくさんありがとうございました。》
次回へ続く
次回は4月24日掲載
凄腕ファンドマネージャー糸島孝俊氏に聞く「運用業界の問題点と課題は?」
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第1回目のインタビューはこちら
凄腕ファンドマネージャー糸島孝俊氏に聞く「独立系運用会社であることのメリット」とは?