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「配偶者の税額軽減の特例」の落とし穴とは?

2015/06/16

2015年1月1日から基礎控除枠が引き下げられ、相続税の課税が強化されたことはマスコミでもよく報じられてきました。
【2015年1月1日からの改正点】
①5000万円だった定額控除が3000万円に引き下げ
②「1000万円×法定相続人の人数」だった法定相続人比例控除が「600万円×法定相続人の人数」に引き下げ

つまり、従来なら無縁だった資産規模の人たちにも、課税対象が広がったわけです。
こうしたことから、「配偶者の税額軽減の特例」に注目する人が増えているようです。相続財産は夫婦で築き上げてきた色彩が濃いことから、その名称の通り、配偶者だけに適用される措置です。

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配偶者の税額軽減の特例とは??

具体的に説明しますと、配偶者が相続する遺産においては、①1億6000万円、②配偶者の法定相続分のいずれか高額のほうが控除枠(非課税)となります。

配偶者の法定相続分は、子どもがいない場合で遺産の100%、子どもがいる場合で遺産の2分の1、配偶者以外は父母のみの場合で3分の2、配偶者以外は兄弟のみの場合で4分の3です。

たとえば、仮に妻と2人の子が3億円の遺産を受け継ぐとするとしましょう。このケースでは妻の法定相続分が1億5000万円、子の法廷相続分1人当たり7500万円となります。
前述の特例を用いれば、①1億6000万円、②配偶者の法定相続分(1億5000万円)−−のいずれか高額のほうの控除枠が妻には与えられます。妻に関しては、相続税が発生しないということです。
遺産総額が4億円で配偶者の法定相続分が2億円だった場合は、②のほうが控除枠となるので、やはり非課税となってきます。

「配偶者の税額軽減の特例」の意外な落とし穴とは?

このように、非常に大きなメリットが得られる「配偶者の税額軽減の特例」ですが、意外な落とし穴があるので注意が必要です。
特に配偶者が高齢に達している場合は、目先のことだけに目を奪われず、2次相続(配偶者の没後に行われる相続)のことも念頭に置くべきでしょう。

配偶者だけに与えられた控除枠をフル活用すれば、確かに目の前の相続では課税を抑えることが可能です。しかし、配偶者が多額の遺産を受け継いだ場合、放棄しない限り、それはいつか必ず再び誰かが相続することになります。

先程のケースですと、夫に続いて妻も亡くなった際には、2人の子どもが遺産を相続することになります。当然ながら、この2次相続においては、もはや「配偶者の税額軽減の特例」を用いることができません。相続人の人数にしても、1次相続では3人でしたが、2人に減っています。

したがって、利用できるのは冒頭で触れた基礎控除のみで、3000万円(定額控除)と「600万円×2人」(法定相続人比例控除)の計4200万円しか差し引くことができません。仮に夫の死亡時に妻が相続した遺産の資産価値に変動がなく、妻自身の財産は他に存在しなかったとすれば、2人の子が受け継ぐ1億5000万円のうち、4200万円の基礎控除を除いた1億800万円が相続税の課税対象となってきます。

最も危ういのは、「特例を最大限に生かすために1次相続で配偶者の相続分を極力大きくする」という考え方です。そうすれば、おのずと2次相続で多額の相続税が発生する可能性が高まります。

あくまで法定相続分とは、「遺産はこう分けるのが好ましい」と民法によって定められた指針です。遺産相続で揉めて裁判沙汰になった場合にはこの配分が適用されますが、相続人同士がきちんと合意していれば、必ずしも法定相続分に即して遺産を分割しなければならないわけではありません。

遺産の総額や家族構成(相続人の数)によって判断が異なってきますが、1次相続で配偶者が受け継ぐ遺産を法定相続分よりも少なくするなど、2次相続のことも踏まえた2本立ての節税計画が求められてくるのです。

無論、遺産が巨額に上る人ほど、きちんとした対策を講じるか否かでトータルの納税額には大差が生じてきます。できるだけ早いうちに、専門家に相談してアドバイスを受けたほうが無難でしょう。

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