介護保険制度改正、負担増に今後はどう備えればいいのか?
介護保険制度、施行開始16年目で初の改正
急速に進む高齢化社会を支えるために制定された介護保険制度がスタートしてから16年目に入りました。
2015年4月から施行された改定は、団塊の世代が後期高齢者となる2025年を見据えて、「地域包括システム」の構築と「費用負担の公平化」を目指した対応が主な内容となりました。
地域包括システムとは
将来、要介護者や認知症となったとしても、高齢者が住み慣れた土地で生活を継続できるよう、介護・医療・生活支援・介護予防を充実させることを目的です。
いわば、在宅介護への支援を中心とする政策であり、従来の施設介護(特別養護老人ホーム等)から、訪問介護や通所介護を利用しつつ、あくまでも在宅が中心となる介護のシステムへ移管させることを狙いとしています。
「費用負担の公平化」について
低所得者の保険料を市町村民税非課税世帯で、年金収入80万以下の場合、軽減幅を5割から7割に拡大一方、一定以上の所得のある利用者の自己負担比率の引き上げ等が実施されました。
介護保険利用者に与える影響
介護保険制度の利用者は、認定の軽い順番に「要支援1」、「要支援2」、「要介護1」…「要介護5」といった形で7段階に分けられています。
今回の制度改正で介護保険利用者にとって影響が大きいとされる具体例は次のとおりです。
1.特別養護老人ホームの入居要件が要介護3以上に制限
制度改正前は、要介護度1から入居が認められていた特別養護老人ホームについては、2015からは入居要件が原則要介護3以上に引き上げられることになりました。ただし、現在すでに入居済みの要介護1~2の者は対象外であり、退去する必要はありません。入居条件を厳格化したと言っても、特別養護老人ホームの入居を巡っては、50万人以上が待機している状態です。
2.一定以上所得者の「利用者負担割合」を2割に引上げ
2015年8月から、一律1割負担の介護保険の利用者負担については、一定以上所得者(単身年金収入のみの場合280万円以上)に対し、2割に引上げ。被保険者の上位20%が対象となります。
3.高額介護サービス費の負担限度額の引上げ
医療保険が現役並み相当の所得の場合、高額介護サービス費の負担限度額が旧来の37,200円から現行44,400円に引上げ。
4.要支援1・2対象者の介護予防サービス利用が市町村事業へ移管の方向へ
2018年度末までの3年にわたって順次サービスが移行されます。今後は市町村ごとに運営方針や料金を決めることになり、現状のサービス内容は維持される予定だが、全国一律であったサービス料金体系が崩れるおそれがあります。
5.施設入居者の食事・部屋代の補助対象者を縮小
特別養護老人ホーム、老人健康保健施設等に入居する低所得者に対しおこなってきた食事・部屋代の補助についても見直されました。今後は、収入だけでなく、貯蓄を審査することになり、単身者については1,000万円、夫婦世帯は2,000万円の貯蓄があるケースでは補助の対象外となります。
制度変更への備え
上記のとおり、社会保障費の抑制のために利用者の負担は今後ますます重くなります。
介護保険制度の改正による影響のデメリットを最小限に食い止めるための対策は、介護保険利用者本人が自分自身のために備えるものと、おもに介護する子が介護保険利用者である老親のために備えるものの2つに分けて考えられるでしょう。
やはり一番気がかりなのが、介護にかかるお金のことです。
介護にかかる費用は基本的に介護される者の蓄えと介護保険給付で賄われるべきものでありますが、要介護度や資産状況によっても経済的・精神的負担の度合いは異なってきます。
介護保険の範囲内だけでなく、保険外サービスを利用することにより介護者の負担は軽減される一方、費用自己負担もしなければなりません。
事前に準備しておいた老後資金を取り崩すほかにも、民間の介護保険の検討も有効な対策で、所定の要介護状態になった場合、介護保険金を一時金または年金として受け取れるのが一般的です。
ただし、高齢になるほど保険料も高額になります。
民間の介護保険については、現役世代が将来のために加入することを主眼に考えたほうがよいかもしれませんが、商品によっては自分の将来の介護費用だけでなく、親の介護費用も対象とする保険もあるので、じっくり比較検討することがおすすめです。