住宅取得等資金の贈与は今がチャンス?非課税制度と活用法
2014(平成26)年までの時限立法だった、住宅取得等資金の贈与税の非課税制度。住宅の購入や、一定の要件を満たすリフォームで、父母、または祖父母など直系尊属から住宅の取得資金として贈与するお金に対して、一定の金額までは非課税枠とする制度です。
2016年8月24日、「消費税率引き上げ時期の変更に伴う税制上の措置」が閣議決定されたことにより、2021年12月31日まで適用期間が延長となりました。
しかし、この非課税限度額は、契約時期や消費税率の増税時期により大きく異なるため、どのタイミングで適用を受ければ、いくらまでが非課税となるか、慎重に判断していく必要があります。
そこで今回は、若い世代のマイホーム取得を応援する、両親・祖父母からの支援を最大限活用するための、住宅取得等資金を贈与するタイミングについて考えます。
住宅取得資金贈与の特例で受けられる、贈与税非課税の限度額
住宅取得資金の特例は、さまざまな税金の中でも際立って割高となる「贈与税」を非課税とする、景気刺激対策のためのまさに特例と呼ぶべき時限的特別措置です。
下記のとおり、住宅の取得等にかかる契約時期により、非課税となる限度額が異なる点は注意しましょう。
省エネ・耐震などの基準をクリアした良質な住宅を購入するための資金贈与の場合は、それぞれ下記のように段階的に非課税限度額が下がっていきます。
2016年1月1日~2020年3月31日まで… 1,200万円
2020年4月1日~2021年3月31日まで… 1,000万円
2021年4月1日~2021年12月31日まで… 800万円
上記の省エネ等住宅に該当しない一般住宅では、それぞれに500万円をマイナスした金額が、非課税限度額となります。
2016年1月1日~2020年3月31日まで… 700万円
2020年4月1日~2021年3月31日まで… 500万円
2021年4月1日~2021年12月31日まで… 300万円
この非課税限度額に、従来の年間110万円までの贈与を非課税とする「基礎控除」を合わせると、2020年3月31日までであれば、1,310万円までは親や祖父母からの贈与について税金がかからなくなります。
もし、この特例なしに、親から20歳以上の子へ1,000万円を贈与する場合、177万円という巨額の贈与税を支払うことになります。
そしてまた、この贈与税は、贈与した親が支払う税金ではなく、贈与された子供が支払うことになる税金です。
マイホームを手に入れたい若い世代にとって、この住宅取得資金贈与の特例は、住宅購入の負担を大きく減らす上で、大変なメリットのある非課税枠なのです。
非課税限度額は、消費税の増税時期で大きく変わります
消費税の増税は、消費者の買い控えを招きます。とくに高額な住宅の購入ともなれば、消費税8%から10%への引き上げは大きな影響を与えることが懸念されます。
そのため、景気刺激対策となる住宅購入を促進する、住宅取得等資金の贈与税についても、2019年10月に予定通り消費税10%の増税された場合は、過去最大規模となる3,000万円まで非課税額が拡大される見込みです。
しかし、消費税率8%から10%への増税時期については、これまでも当初予定していた2015年10月から18ヶ月延期して2017年4月へ、さらに2年半再延期して2019年10月までと、増税後の落ち込みを懸念する、慎重な判断が重ねられてきました。
2019年10月の消費税増税が予定通り実施されるか否かは、該当時期の国内の景気動向に大きく左右されます。
そして、消費税が増税されなかった場合は、当然非課税枠の拡大も延期、または撤廃となります。
贈与税非課税枠の限度額が、年々段階的に引き下げとなる中、消費税10%が適用された後の非課税の特例を見越して2020年度4月以降まで住宅購入を引き伸ばすことにはリスクが伴うことも、ひとつの検討材料として考えておくべきでしょう。
実際に住宅取得資金の贈与で申告された平均額は約800万円~1,000万円前後
また仮に、予定通り2019年10月に消費税が10%へ増税となり、特例による非課税枠が3,000万円まで伸びても、一般的に見ればその非課税枠をフルに活用できるケースは限られます。
親から子へ、数千万円の単位で住宅購入資金を援助できるほどの預貯金を持つご家庭は、そこまで多いとはいえません。
実際に、2016年3月31日までに提出された確定申告書などの状況について国税庁がまとめた資料から、これまでの住宅取得等資金贈与の申告状況について調べてみると、住宅取得資金の非課税枠で申告されている平均額は、およそ800万円~1,000万円前後を推移しています。
2016年1月1日~2020年3月31日までは、もともと年間110万までの贈与を非課税とする「基礎控除」を合わせて利用すれば、一般住宅であれば810万円、省エネ、耐震などの基準を満たす良質な住宅であれば1,310万円まで、住宅購入目的の資金贈与が非課税となります。
しかし、2020年4月1日以降も消費税の増税が見送られた場合は、一般住宅の非課税限度額が500万円、省エネ等住宅でも1,000万円まで、非課税限度額が引き下げとなります。
住宅取得等資金の贈与の特例を最大限に活用するなら、今はまさに検討すべきタイミングなのです。
なお、住宅取得資金等の贈与の特例と併せて考えられる贈与税対策としては、基礎控除の110万円以外にも、相続時まで課税を先延ばしとする「相続時精算課税制度」という制度もあります。
この制度を選択できる、贈与者の年齢を60歳以上から年齢制限無しとする期限についても、2021年12月31日まで延長されています。
また、贈与税非課税枠の限度額がプラス500万円と大きく変わる、省エネ等住宅など「良質な住宅」の条件を満たす住宅の性能や、リフォームで贈与税の非課税枠が活用できる範囲も拡充されました。
こうした贈与税の非課税措置に加え、「住宅ローン控除」や「すまい給付金」など、住宅の購入やリフォームができる制度が充実している今は、マイホームを夢見る若い世代にとって、まさにチャンスにあると言えるでしょう。