資産を取り崩す慣らし運転が必要?
リタイアメント(早期リタイア含む)プランに関する相談等で気になるのが、預金を取り崩すことに抵抗がある人が思いのほか多いように感じられます。
現役時代は「預金の取り崩し=家計は赤字」という概念が強いからなのかもしれません。現役時代の家計管理においては、毎月の収支は黒字(収入−支出=プラス)が基本となり、プラス部分が貯蓄や投資に回ることが基本になるからです。
このため貯蓄(資産)を取り崩すのは、子どもの教育費、マイホームの購入資金などのライフイベント時、且つまとまった金額が一気に取り崩されるのが特徴です。
一方、リタイア後は、現役時代と比較するとまとまったお金を一度に取り崩すライフイベントが少ない反面、毎月の収支が赤字(収入−支出=マイナス)となるケースがほとんど。
赤字を調整するような臨時収入(現役時代のボーナスに相当)がないことから、どうしても毎月または隔月や3ヵ月毎に貯蓄(資産)を取り崩していかざるを得ないのです。
なぜなら、毎月の支出を上回るような公的金を受け取っている人は少数派に過ぎないからです。
であれば、貯蓄(資産)を取り崩すのをためらうべきではないはずなのに、既にリタイアしているにもかかわらず、老後が不安だからと言って取り崩すことに抵抗がある人が多いのです。
抵抗がある理由は、40年前後も長きの間=現役時代は黒字家計の運営を基本してきたために、リタイアしていきなり赤字家計に変わったとしても、40年間染みついた家計管理、言い換えれば「貯蓄の取り崩しは御法度」を破ることはできないわけです。
きちっと貯蓄(資産)が蓄えられているのに「御法度」を破れないがため、豊かなリタイア後を過ごすことができないなんて本末転倒と言わざるを得ません。
リタイア後は、現役時代に蓄えてきた資産を刈り取る=使う時期なのですから、取り崩しても構わないように家計管理の考え方を改めなければならないのです。
時期尚早なのかも知れませんが、リタイア後に向けて貯蓄(資産)を取り崩す慣らし運転が必要と思われるのです。何歳から始めるのが妥当とは言い切れないうえ、また現役時代からは早すぎる気がしてなりません。
全員が公的年金を受け取ることができる65歳時に抵抗がなく取り崩せるようにするには、60歳あたりから取り崩しの慣らし運転を始めるのがよい気がします。
取り崩したお金は毎月使うのがベストですが、使い切れなかったら翌月に回す、あるいは前倒し消費などを行うべきでしょう。矛盾するかもしれませんが、なるべく無駄遣いは控えてください。退職前後のリタイアメントプランは、お金を増やすことではなく、これまで築いてきたお金(資産)を使うことを考えるプランなのです。だから貯蓄(資産)を取り崩すことに慣れることがとても大切になるのです。