近年関心を集めている「スマートベータ運用」とは?
従来の「インデックス運用」と「アクティブ運用」
近年、投資信託の新しい運用手法として注目を集めているのが、「スマートベータ運用」です。
2014年4月、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がスマートベータ運用を採用したこともあり、個人投資家の間でもスマートベータ運用への注目は、この数年で高まっています。従来の投資信託の運用とはどのように違うのでしょうか。
従来の投資信託の運用には、「インデックス運用」と「アクティブ運用」の2種類があります。
インデックス運用は、TOPIX(東証株価指数)や日経平均株価などの指数をベンチマークとし、その動きに連動した騰落率を目標とする運用方法です。指数を基に、ある程度機械的に銘柄や比率を決めていくことができます。
一方、アクティブ運用はベンチマークとなる株価指数を積極的に上回り、超過収益を狙う運用方法です。指数だけでなく、ファンドマネージャーのリサーチや判断などが必要なため、手数料などのコストも高くなります。
一般的には、インデックス運用の方が、コストが低く、長期的に安定した運用成績を得られると考えられています。アクティブ運用は、短期的には大きな収益を上げることはありますが、長期的に成果を上げることは難しいとされています。
また、ファンドマネージャーの能力にも大きく左右されるため、どういったファンドマネージャーを選ぶかも非常に重要となります。
「スマートベータ運用」と従来の運用の違い
「スマートベータ運用」は、「インデックス運用」のように特定の指数や基準を用いつつも、「アクティブ運用」と同じく市場株価を上回る収益を目指す運用方法です。
国内のインデックス運用の多くは、TOPIX(東証株価指数)を基準とし、時価総額を参考に銘柄や比率を決めていきますが、スマートベータ運用は、利益や営業キャッシュフロー、企業規模、純資産、成長可能性、配当力などの要素を基準として指数を定め、銘柄を決めていきます。比率も基本的には時価総額ではなく、売上高やリスクを基準として決めていく場合が多くなっています。
これにより、インデックス運用の弱点とされていた「機械的に時価総額に左右されるため、割高な銘柄に多く投資し、割安な銘柄に少ししか投資しない場合がある」という事態を回避できるのです。従来の指数よりも、「質の高い銘柄を見抜ける指数」を作り出し、それを基準とすることでより高い収益を得ようとするのが、スマートベータ運用と言えるでしょう。
また、指数を参考に銘柄や比率を判断していくため、同じように「質の高い銘柄を見抜いて超過収益を得る」ことを目標とするアクティブ運用に比べ、手数料などのコストを抑えることができます。こうした特性から、スマートベータ運用は「賢い指数(Smart Beta)」と訳されることもあります。
本当にスマートベータ運用は超過収益を生むか
では、実際にスマートベータ運用は超過収益を生むのでしょうか。
もちろんスマートベータ運用も商品により違いがあり、銘柄や比率を決める指標もそれぞれに異なっています。例えば、株主資本や利益面を重視する「企業規模型」や、リスクが低い銘柄を組み合わせる「低リスク型」、企業の配当力や成長性を基準とする「高配当型」などがあります。
いずれにしても、前述した「機械的に時価総額に左右されるため、割高な銘柄に多く投資し、割安な銘柄に少ししか投資しない」というインデックス運用の弱点はカバーされるため、長期的にTOPIXを上回るリターンを得られる可能性は高いでしょう。
しかし、当然のことながら常に勝てる銘柄の組み合わせや、絶対的な指数というものも存在しません。スマートベータ運用でも、当然勝つ時も負ける時もあります。特に1年単位の期間で見ると、結果が出ない場合もあります。
適切なスマートベータ運用商品を選択する能力が必要
スマートベータ運用は、仕組みはインデックス運用に似ていますが、「伝統的指数に対し超過収益を狙い、そのために独自の戦略を練る」という本質はアクティブ運用と同じです。
低コストで高い収益を狙いたい方向けの運用ではありますが、それを実現するためには、自分でトレンドとなる指数を判断し、適切なスマートベータ運用商品を選択する能力が求められます。
スマートベータ運用の特徴は、「インデックス運用よりも高い収益を上げられる可能性があり、アクティブ運用よりもコストが低い。しかしその分、適切なスマートベータ運用商品を選択する能力が求められる」とまとめることができます。収益的にも内容的にも、一段階上の投資信託を行いたい人向けの運用だと言えるでしょう。