株式売買受渡し日が4営業日から3営業日へ
投資家が証券会社で株式を売買するとき、注文約定後に買付け代金を証券会社に支払って投資家自身の口座に株式を受け取ること、または株式を口座から渡して売付け代金を受け取り決済することを「受渡し」といいます。
現在、株式の受渡しは売買が約定した日を含めて4営業日に行われますが、2019年7月から3営業日に短縮化されます。
これにより、先進国に比べ遅れ気味だった証券取引所の利便性が向上することになります。
本コンテンツでは、そもそもなぜ日本では株式の売買受渡し日が4営業日なのか、3営業日に短縮化されることで投資家にどのようなメリットがもたらされるのか、検証していきます。
なぜ、4営業日受渡しなのか
日本の証券取引所における株式の売買は、決済日つまり受渡し日の違いにより、「普通取引」「当日決済取引」「発行日決済取引」に分類されます。このうち、私たちが行っている一般的な売買取引が普通取引です。
そして、東京証券取引所を例に挙げると普通取引については業務規定第9条第3項で次のとおり規定されています。
※「普通取引は、売買契約締結の日から起算して4日目(休業日を除外する。以下日数計算について同じ。)の日に決済を行うものとする。」
つまり、株式の4営業日受渡しは取引所の規則で決まっていることなのです。
ここで疑問に感じることが、「これだけ電子化が進んでいるのに、なぜ受渡しに4営業日も必要なのか」でしょう。
そもそも、4営業日受渡し自体が過去の売買制度の名残りなのです。戦後に取引所が再開されてからは、証券会社と投資家の間で資金と現物株券の受渡しにより決済を行うことが一般的だった時代が長く続きました。この受渡しプロセスでは、ほとんどが手作業の中で株券の名義書き換えやデリバリーなどの手間を考慮すると、どうしても売買約定日から受渡しまで4営業日は必要だったのです。
時を経て証券取引所や証券会社のIT化が進み、それと併せ2010年1月の株券電子化以前から実務上は既に株式売買取引後の受渡しについても電子化が進んでいました。もしかしたら、技術的にはもっと早く受渡し日の短縮化が可能だったかもしれません。
しかし、受渡し日の短縮化は証券取引所や証券会社のシステム仕様変更が必要になるなどの様々な事情から、既にアメリカやヨーロッパ、香港など世界の主要な証券取引所では3営業日受渡しが主流になっていたのにもかかわらず日本では4営業日受渡しの制度が残り続けていたのです。
しかし、こと金融においてはグローバル化の流れに抗いようもない時代です。2017年10月、東京証券取引所をはじめとする日本の証券取引所は、ついに2019年4月または5月を目処(その後、元号改正を考慮し7月に延期)に株式売買について現行の4営業日受渡しから3営業日受渡しに短縮することを公表しました。
3営業日受け渡しになることのメリット
受け渡しが3営業日になることは、以下のようなメリットがあると考えられます。
(1)決済リスクが低下
売買約定後、受渡しが終わっていない残高を未決済残高といいます。
売買が約定しても、受渡し日までにおける取引相手方の事情により決済ができないことがあります。受渡し日までの期間を短縮化することで、未決済残高が減少し、決済リスクが低下します。
(2)早期に現金を引き出せる
突然現金が必要になり保有株式の売却代金を充てようとしても、現状は約定してから4営業日目にならないと証券会社から現金を引き出せません。しかし、受け渡しが3営業日になることにより現状よりも1日早く現金を受け取ることができます。
(3)海外からの投資資金流入が期待できる?
海外の主要な証券取引所と同一の受渡し日になることで、今までの4営業日受渡しを嫌気していた海外からの投資資金が日本の株式市場に流入することが期待できます。
まとめ
「3営業日受渡しでもまだ長い」と考える投資家もいるかも知れません。
確かに、金融機関どうしの取引では同時または同日中の受渡しが可能なDVP決済が広まっています。
しかし、DVP決済が個人投資家でも可能になるためには大幅な各種制度の改正やシステムの手当てなどが必要となるため、しばらく時間がかかりそうです。