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ソフトバンクの”群戦略”とは?

2019/02/12

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はじめに

ソフトバンクの孫正義社長は、決算発表の場でしばしば「群戦略」という単語を用います。この群戦略は一般的な経営学の教科書に載っている単語ではありませんが、ソフトバンクという巨大企業グループにおいてガバナンスおよび成長戦略の根底にある理念であると同時に、多くの会社でも経営上のヒントになるものです。
本コンテンツでは、この郡戦略についてご説明します。

群戦略の背景にあるソフトバンクの企業戦略

ご存知のとおり、ソフトバンクは企業のM&Aに多額の投資を惜しまず、グループで抱える企業の数は世界でも有数です。

これは孫正義社長がソフトバンクを「300年後も続く会社」にするため、ビジネスポートフォリオの多角化を図ることで生き残りを目指す戦略なのです。今後どのような業態が成長するか、あるいは衰退するか、ビジネス環境は先の見通しを立てづらいものです。それならばひとつのビジネスに集中特化せず、「タマゴはひとつのカゴに盛るな」という投資戦略の基本中の基本でもある言葉どおりに、多様な業種・地域に可能な限り分散投資しておくほうが企業グループの存続を図るうえでは合理的なのです。

ただし、M&Aしただけではグループ経営のガバナンス面において不十分です。うまくグループとしてシナジーを発揮しないと、そのM&Aは失敗です。そのためのガバナンス戦略のひとつが、群戦略なのです。

群戦略の特徴

群戦略の特徴は、大きくわけて3つあります。

(1)必要以上に買収先の経営に口出ししない
孫正義社長は、シナジー効果を創出するために買収先に株主としてあれこれ指示するよりも、必要な場合以外は介入しないほうが買収先は企業として生き残るために最大限の努力をすると考えます。そのほうが買収先の企業価値は向上し、結果的にソフトバンクの利益になるためです。これによりソフトバンクグループを構成する企業は、それぞれが属する業界でナンバーワンを目指すのです。

(2)基本的に出資比率は低めに
出資先の企業がソフトバンクグループのコアカンパニーのひとつとして必要と考える場合は、過半数の議決権を保有します。日本テレコムや福岡ダイエーホークスの買収が典型です。
一方で、それ以外の多くのM&A案件では基本的に出資比率は高くても30パーセント程度に留めることが群戦略の特徴です。これは、出資先の業界シェア低下や業績悪化によって売却することが妥当と判断した場合、高い保有比率では損失を被るばかりか売却することが難航すると考えられるためです。

(3)基本的に企業ブランド名を統一しない
先述のようなコアカンパニー以外は、基本的に出資先に対してソフトバンクというブランドを会社名に冠することはしません。これは出資先に断られ投資機会を失う可能性があること、無理に社名を変更することで却って出資先のブランドを毀損させてしまう可能性があること、出資後の売却が難しくなる可能性があることなどが背景です。

まとめ

孫正義社長の側近を務めた経験のある人の話から、群戦略の基本理念を伺うことができます。

ある日、孫正義社長は「池の鯉は誰が指示を出しているわけでもないのに、ちゃんと群れを成して行動している。企業グループの経営もこうあるべきだ。」と発言したそうです。

出資先に対して基本的に経営上の口出しはしない、出資比率は低めに、ブランド名は統一しないことが群戦略の要諦であり、出資先はそれぞれの業界で切磋琢磨し生き残りを図ることで結果的にソフトバンクの企業価値が向上するという戦略なのです。出資することで企業価値向上を目指すという目的は一緒なのかもしれませんが、その戦略の根幹を「支配すること」に置きやすい多くの日本企業とは一線を画した戦略です。

株主であるソフトバンクの企業価値向上というベクトルを出資先と共有する群戦略は、まさに池で泳ぐ鯉の例えどおりです。

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