米国のIFA 海外視察レポート ~アメリカで本場の資産コンサルティングを体験~
【ゴールベースに基づいたアドバイス】
アメリカのファイナンシャルアドバイザーはお客様と資産運用のゴール(目標)を共有したうえでアドバイスを行うスタイルが浸透してきています。
一昔前の「アメリカの証券営業パーソン」はマーケットの将来予測に基づいて「この商品が良いですよ」「この株式がおすすめです」といった提案が主流でした。この場合、対象となる資金は「余裕資金」、期間は「短期」、提案商品は「個別株式中心」です。1987年にアメリカで公開された映画「ウォール街」では、証券マンが顧客に「この株式がおすすめです!」とひっきりなしに電話営業をするシーンが出てきます。このスタイルだとリスクを大きく取ってもよい一部の資金運用のアドバイスになってしまいます。
私たちが今回見聞きしてきたアメリカのファイナンシャルアドバイザー会社で「ウォール街」のようなシーンを見ることはありませんでした。
今のアメリカのファイナンシャルアドバイザーはお客様の現状、将来見通し等をヒアリングしたうえでゴール(目標)を共有し、積立投資や手元資金の一括投資を併用し、各お客様の目標達成を長期プランの中でサポートするスタイルが主流になっています。日々の価格変動は気にせず、長期的にゴールを目指します。この場合、対象となる資金は「お客様の全体資産」、期間は「長期」、提案商品の中心は投資信託の組合せか投資一任口座です。
様々な税制優遇プランや、お客様を取り巻く環境などを考慮して、ゴール(目標)に向けたプラン(戦略)を練ります。
【60歳までに第一次ゴールを目指して運用するアメリカ人、60歳から運用をする日本人】
アメリカ視察で印象に残ったことの1つに、若い世代の人が「退職年齢」に向けて、長期資産形成を行っていることです。日本だと若い世代では、運用に関心のある人の比率が低くなります。アメリカでは、非課税で運用できる制度が日本よりも充実しており、それらの制度も活用しながら、長期的に運用を継続しています。
ご自身のリタイア(退職)にむけ、資産をいくらにしたいか目標を決め、毎月投信積立をしながら運用を止めず(戦争やリーマンショック等の金融危機があっても)、ずっと継続していきます。そして、仮にその人が目標を達成し60歳でリタイアしても、その後もアドバイザーに相談しながら長期運用を継続していきます。
一方、日本だと時間をかけて資産形成ができる若い世代の人があまり運用は行わず、退職金を受け取った人が運用をスタートするケースが多いです。もちろん60歳を過ぎてからも運用を継続することは非常に重要ですが、アセットマネジメント(資産運用)が人生の一部になっているアメリカ人とは大きな差を感じました。
アメリカのファイナンシャルアドバイザーはお客様が長期で資産運用を継続できるよう普段から長く続けること、途中で止めないことの重要性などを説明し、そのことを共有することに努めています。お客様へのレポートや定期面談等で継続的にサポートをしているファイナンシャルアドバイザー会社が増えています。
【包括的な資産コンサルティング】
アメリカの独立系ファイナンシャルアドバイザー会社は、資産形成、資産運用のコンサルティングだけでなく、お客様の様々な資産の相談を包括的に受けられる会社が増えています。保険や不動産、税金の問題などお客様の課題は資産運用だけではありません。これらの課題に対して専門家がチームを組んでお客様を包括的にサポートしています。資産運用はお客様の全体資産の中で考えていく必要があります。様々な角度から最適な判断ができるよう専門家でチームを作りコンサルティングすることで、お客様の全体最適化をサポートしています。
【フィデューシャリー・デューティー】
今、世界的にフィデューシャリー・デューティーという言葉が金融業界で使われます。日本では、「顧客本位の業務運営」と訳されます。金融事業者がお客様本位の業務運営がしっかりできているかと世界中で問われています。特にアメリカはこの動きが日本以上に強く、視察したファイナンシャルアドバイザー会社の人たちはみんな高い意識を持って業務に取り組んでいました。
今回の視察で多くの学びを得ましたが、実際に私たちがお客様に何を提供できるのかが重要です。お客様に長期的なお付き合いを頂けるよう努めて参ります。