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5分で分かる購買力平価解説 購買力平価とその限界

2017/08/04

短期的な為替レートは、各国の金融政策や政治リスクによって激しく変動する市場の動向や投資家の思惑により、適性レートと実勢レートが大きく乖離した動きを見せることがあります。

こうした短期的な影響に依らず、中長期的な為替レートの変動を予測する上で役立つ指標のひとつとして挙げられるのが『購買力平価』です。
今回は、この購買力平価説の概要、そしてメリットとデメリットの両面を踏まえた活用方法について解説します。

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購買力平価説(PPP)とは?

購買力平価説(Purchasing Power Parity、略してPPP)とは、「ある時点における同一の商品・サービスは、ひとつの価格になる」という『一物一価の法則』を前提として、自国通貨と他国通貨の購買力の比率から中長期的な為替レートを求める、1921年にスウェーデンの経済学者G・カッセルによって提唱された理論です。

英国の経済専門誌「エコノミスト」が毎年2回発表している『ビックマック指数(BMI)』は、この購買力平価説を応用した経済指標のひとつとして知られています。

ビックマック指数は、全世界のマクドナルドでほぼ同一品質で販売されているビックマック1個あたりの価格を比較することで、各国の経済力や為替レートの妥当値(適正為替レート)を判断するために用いられる指標です。
また、ビックマックを購入するために必要な労働時間を算出し、国別・都市別のおおよその賃金水準を割り出すためにも広く活用されています。身近な商品の価格が基準となるため、生活実感に近い値が求められるのが大きなメリットです。

たとえば2017年1月時点では日本のビックマックの価格は380円、米国では5.06ドル。ビックマック指数(BMI)は-35.63%となります。
そして「同じ商品は、世界中で同じ価格となる」一物一価の法則から見ると、380円÷5.06ドル(およそ590円)の、1ドル=およそ75円が、米ドル円の適正為替レートであると考えられます。

同月の月間平均為替ドル円レートは114.79円。ビックマック指数で導かれた適正為替レートから見ると、約40円という大幅な円安水準を示しています。そのため、中長期的な為替レートの変動を予測するとき、ビックマック指数から導かれた適正為替レートと、実際に市場で取引きされている実勢為替レートの差を見比べて、「今の市場は円安に行き過ぎているため、長期的には円高傾向に向かう可能性が高い」という、ひとつの仮設を立てることができるのです。

同じく購買力平価説に基づいた類似の指標としては、同じくエコノミスト誌の提唱する、スターバックスのラテ(ミルク入りエスプレッソ)を基準とした「トール・ラテ指数」や、より品質の均一性の高いApple社のiPodの値段を基準とした豪州コモンウェルス銀行の「iPod指数」が挙げられます。

絶対的購買力平価と相対的購買力平価

購買力平価には、「絶対的購買力平価」と「相対的購買力平価」の2種類があり、為替レートの変化を捉える上では、相対的購買力平価がより適していると考えられています。

「絶対的購買力平価」は、一物一価の原則を前提に、現時点で同じ製品を同じ価格で購入できる各国の物価水準から為替レートを求める考え方。先に挙げたビックマック指数は、この一例といえます。

対して「相対的購買力平価」は、2国間の物価水準の変化に着目し、その物価指数の上昇率の差(=インフレ格差)から為替レートを決める方法です。自由貿易が正常に行われていた時点の為替レートを基準として、その後の物価上昇率の変化を含めて算出します。

【相対的購買力平価】=基準となる為替レート×(自国の物価上昇率÷相手国の物価上昇率)

日米間の相対的購買力平価を求める基準としては、田中角栄首相とニクソン大統領が任期を務めていた1973年(昭和48年)4月~6月時点の平均値、1ドル=265円が基準として選ばれています。

購買力平価説の限界と活用方法

しかし、購買力平価説にはいくつかの限界があり、短期的な為替レートを決定づける要因として見るのは適していません。

まず、購買力平価では、各国独自の事情までは考慮されていない点が挙げられます。
たとえば購買力平価の代表例といえる「ビックマック指数」は、全世界でほぼ同じ品質の商品とサービスを提供しているマクドナルドで、原材料の価格や店舗の光熱費、人件費や輸送コストなどを幅広く含む、各国の経済力の実態を反映した商品として選ばれています。

しかし、各国のファストフード店のニーズで起きる価格競争や、原材料に使われる牛肉や小麦に対する補助金、そして食品にかかる間接税(消費税)などは考慮されていません。そのため消費税率の高い北欧はビックマック指数でも高い数値を示す傾向にあり、必ずしも厳密な経済指標として機能しているわけではありません。

出所)ブルームバーグ

そして、購買力平価説の前提となる「一物一価の法則」は、貿易障壁のない、完全な自由競争市場が成立していることが条件になります。

同じ国内、同じ地域で同じ商品を売るときは、需要と供給が一致する価格へ市場の調整が働き、自然と均衡していきます。しかし、関税や輸送費なども関わる国家間の取引では、購買力平価が現実の市場に則していない値となるケースも多く見られます。

とはいえ、こうした点を踏まえても、実際の経済活動や生活実感に近い購買力平価と、各国の為替レートが大きく乖離したまま超長期的に続くことは難しく、やがて為替レートの変動、あるいは物価上昇率の格差が逆転することで、購買力平価に近い値へ調整されるというのが一般的な見解です。

そのため、今後米ドル円が、購買力平価の示す適正為替レートから大きく乖離して進んだ場合、長期的には購買力平価に近づく形で為替レートの調整が起きることが予測されます。

購買力平価は、長期の為替レートの動きを占う理論として、また各国の物価水準を感覚的に捉える上で、参考になる指標のひとつといえるでしょう。

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