ハイブリッド証券とは?特徴・メリット・リスクをやさしく解説
最近、金融市場でよく耳にするのがハイブリッド証券という商品です。ハイブリッドカーならば国内では非常に普及して今やクルマの中心的存在ですからその内容はよく知られていますが、ハイブリッド証券というと、何と何がハイブリッドなのか気になってしまいます。そんなハイブリッド証券の中身とメリット、デメリットなどについて考えてみることにしましょう。
ハイブリッド証券とは
ハイブリッド証券とは、債券と株式の両方の性格をもった証券のことを指します。世界的に低金利時代が続き、これまで市中に出回ってきた債券にほとんど金利がつかなくなったことから、プロの投資家も個人投資家も高い利回りの投資先を求める時代に入ってきています。
そんな中で発行者にとって資本コストを抑制しながら財務の柔軟性の向上をはかることができて、普通株式同様資本性のあるハイブリッド証券を発行することが大きなメリットになってきています。
逆に投資家にとっても通常の債券を購入するよりも明確に高いリターンを期待することができるため、ニーズが合致して大きく販売を伸ばす結果となってきています。
利息と満期や償還期があることがハイブリッド証券の特徴
一般的にはハイブリッド証券は、証券の一種と定義されていますが、利息が支払われ、満期や償還時には購入額面で償還されるという意味では、ほとんど債券と同様の性格を持った商品です。
利息は通常の社債よりも高く設定されていますが、価格変動リスクは社債より高く、株式よりは低くなります。また弁済順位と呼ばれる企業の破綻時において投資家にお金が戻ってくる順位は社債よりも低く、普通株式を保有するよりも高くなっているのです。
したがって、単なる社債を購入するよりもリスクを取ることにより、普通株式に次ぐレベルの収益を獲得することが可能になるため、一部の投資家にとっては人気になりつつある商品というわけです。
様々なハイブリッド証券が登場
ハイブリッド証券は発行する企業側の事情やメリットなどを考慮して、実に様々な商品が登場しています。
まず有名なのは優先株で、普通株式よりも余剰金の配当もしくは余剰財産の分配を優先して受け取ることができる株式です。この優先株は金融的メリットがある反面、株主総会における議決権行使はできないという特別なものとなっています。
劣後債も最近よく聞く商品ですが、こちらは元利金の支払い順位が普通株式よりも低い社債で、破産手続の開始・会社更生手続の開始・民事再生手続の開始など万一の事態で劣後事由が発生した場合に、その元利金の支払いを上位債権にかかる債務の履行よりも、後順位にしている分、普通社債よりも利率が高く設定されているのが特徴です。この劣後債には償還期限のない永久劣後債というものも存在します。
さらに優先出資証券は、債券と普通株の中間的な性格をもった商品で、協同組織金融機関および特別目的会社といった事業主体が、株式会社の株式にあたる普通出資を補完する目的で発行する有価証券のことを言います。
国内でも金融機関や事業会社などが自己資本の維持と増強のために実に様々なハイブリッド証券を発行するようになっており、利率の高さからこうした商品を購入する個人投資家も増えている傾向にあるのです。
ハイブリッド証券の注意点とリスク
通常の社債などよりも明らかに利率の高いリターンを望めるハイブリッド証券は、個人投資家にとっては魅力的な商品に見えますが、実態はかなり普通株式を購入するのに近いリスクを持っていることを、あらかじめ理解しておかないと思わぬ損を被ることもあります。
まず株価の大暴落などが起きた場合、その価値は著しく低下してしまいます。社債と同じレベルのリスク商品ではないことは、あらかじめ肝に銘じておく必要があるということです。
したがって発行する企業の業界や銘柄に関する知見をもっている必要がありますし、どこのどんなハイブリッド証券でも同じというほど簡単な商品でないことも、しっかり認識しておく必要があります。つまり株式に順ずるリスクを負って売買することになる点だけはしっかり理解しておかなくてはなりません。
なぜ今ハイブリッド証券なのか
ハイブリッド証券は、全体としては金融機関が発行するものが多くなっています。欧州の一部の金融機関は依然として高いリスクをかかえているものの、一般的には国内を含めて金融機関の自己資本の強化が進んでおり、金融市場で何事もなければ高いパフォーマンスが継続していることから、多くの投資家がリスクテイクをしながらこうした証券への投資を行っているのです。
ハイブリッド証券という名前だけ聞きますと、先進的な商品に見えますが、発行企業にとってのメリットを重視してできているものですから、イメージだけで判断するのではなく、その内容を十分理解した上で投資を行うことが重要です。