5分でわかる2016年イタリア国民投票~争点と株価への影響を解説
2016年イギリスのEU離脱により株式・為替などの市場は大きく混乱しました。2016年12月4日にはイタリアで国民投票が行われ、その後ヨーロッパでは国民投票や国政選挙が相次ぎます。今後の政治日程を確認し、株式・為替市場への影響を考えます。
イタリア国民投票 否決の場合、首相は辞任 欧州の政治リスクは高まる公算
2016年12月4日にイタリアで国民投票が行われます。今回の国民投票は議員の選出などとは異なります。国民投票の結果に自らの進退をかけているため、事実上レンツィ首相の信認を問う国民投票となります。
マッテオ・レンツィ首相はレッタ前首相の辞任により大統領から指名を受けて、2014年2月イタリア史上最年少39歳で首相に就任。就任直後から選挙制度改革を重要施策として位置付けており、今回の国民投票は重要なものとなります。
仮に国民投票の結果が憲法改正に反対となった場合、レンツィ首相は辞任する方針のためイタリア政局は混迷しやすくなります。そして欧州で増えている反移民などの政策を掲げた政党が勢い付く可能性がありそうです。
現時点ではレンツィ首相が辞任した場合にはすぐに解散総選挙とはならず、大統領がレンツィ首相に代わる新首相を選び、信任投票が上院・下院で行われます。仮に信任が得られれば2018年5月まで総選挙は実施されない公算です。反対に信認が得られなければ早期解散総選挙が想定されます。
イタリアの国民投票の争点と目的
今回の国民投票では憲法改正の是非が問われます。上院の定数を現在の315から100に削減するなどして上院の権限を弱めることが目的です。また地方議会の権限も弱められます。
イタリアの現行制度では上院・下院共に平等な権限を有しており、戦後のイタリア政治で5年の任期を全うした政党が無い一因であると言われています。両院でねじれ国会となっている時には法案決定が迅速に出来ず、構造改革が進まなくなってしまいます。レンツィ首相が進める憲法改正案では上院が不信任投票を通じて政権を転覆できないように権限を弱めるものです。そして地方政府の権限も制約する、というものです。
それに対して野党は、今回の国民投票についてユーロからの離脱を問うものにしたいというキャンペーンを張っています。
可決されても“ねじれ議会”が誕生する可能性も
国民投票の結果が憲法改正に賛成だった場合、レンツィ政権は安定政権となりやすくなります。しかし同時に反政府・反EUを掲げる五つ星運動が勢力を拡大する可能性がある、というジレンマが存在します。
なぜなら今年5月に成立した選挙制度改革案では選挙で40%以上の最大得票を得た政党に340議席が与えられるボーナス議席制度が設けられたからです。どの政党も40%に達しなかった場合には上位二党による決選投票でボーナス議席を取り合います。その結果1つの政党が過半数の議席を獲得しやすいようにしてあるのです。
与党である民主党と、反政府の五つ星運動の支持率は拮抗しており、五つ星運動が今後下院の主導権を握る可能性もあるということです。
レンツィ首相は難しい議会運営のかじ取りを迫られる可能性があるのです。