原油安と資源ブームの終焉が影を落とすロシア経済の実態と見通し
ロシア経済は苦しい時期が続いています。ニュースではメドベージェフ首相が年金生活者に詰め寄られ、「お金がない、何とかやりくりしてもらいたい」と答える映像が流れてインターネット上で話題になりました。
資源ブームが終わり大きく低迷したロシア経済
同国の財政を成長、維持してきたものは輸出の7割を占める天然資源です。ブームの時期は大きな収入源となっていましたが、その分依存度が高く、中国の低迷、原油価格の下落などの影響を大きく受けてしまいました。
そして、2016の1月には対ドルで85ルーブルを割って過去最安値となり、「財政危機」と呼ばれるようになりました。国内でも外貨建てローンを組んでいた市民の返済が困難になるなどの問題が発生しました。ウラジーミル・プーチン大統領は「最悪期は過ぎた」と宣言していますが、人々の間にはまだ不安が残っています。
経済を回復させるための4つの課題
天然資源に依存するばかりに大きく減速しているロシア経済ですが、それ以外に以下のような問題があると専門家は話しています。
・投資規模の落ち込み
投資規模は今後の経済成長を定めるための指標になります。しかし、ロシアではGDP自体はそこまで低減してはいないものの、海外からの設備輸入が大きく減っていると言われています。
・中国からの投資が期待できない
天然資源の買い手でもあった中国からの投資が行なわれていないことが低迷の一要因です。それどころか、投資家の一部が資金を引き上げていることから、今後は一層期待できないとまで言われているようです。
・企業が収益を拡大するために給与を減らしている
企業の収益が増加していることに反して、名目賃金がほとんど増えていないという指摘があります。これにより、国民が急速に貧しくなっていると言われています。効果ある労働組合が国内にないということが大きな要因のようです。
・ルーブル変動制に移行
2014年に、ルーブルのレートを市場が決める制度に移行しました。これにより、レートが原油価格と連動するように不安定に動き、インフレを招く原因になったと言われています。
2014年以降は対外債務が減少、財務体質が改善された
天然資源の輸出に依存していたロシアは、ブームを過ぎた今苦しい時期を迎えています。しかし、2014年以降、対外債務が3分の1減少するなど財務体質が大きく改善されています。これらのことから専門家の中では「以前ほど深刻な状態になる確率は少ない」という意見も多いようです。