沖縄経済の救世主「JUNGLIA」の経済影響を考える
2025年に沖縄県北部に新しいテーマパーク「JUNGLIA(ジャングリア)」が誕生する予定です。今回はJUNGLIAの概要や開発の背景、経済効果や課題について解説します。
JUNGLIAの概要
2025年に自然体験を軸とした大型テーマパーク「JUNGLIA」を開業が予定されています。
JUNGLIAは世界自然遺産の森林「やんばる」の隣接した、沖縄県北部の今帰仁(なきじん)村と名護市にまたがるゴルフ場跡地に建設される予定です。同施設の面積は60haで、50haの東京ディズニーランドやディズニーシー、USJを上回る規模になります。
JUNGLIAでは、広大な森や海を気球にのって上空から眺めたり、ジャングルの中をジップラインで疾走したりするアトラクションや、森林に囲まれたスパやレストランでの飲食が楽しめる予定です。
開発の中心を手掛けるのは、倒産寸前だったUSJをV字回復させた森岡毅氏が率いるマーケティング会社 刀です。ただし実際に事業を担うのは、刀が筆頭株主となっている「株式会社ジャパンエンターテイメント社」で、同社には刀社の他、オリオンビール株式会社や株式会社リウボウといった沖縄を体表する企業や、大手旅行会社も参画しています。
JUNGLIA開発の背景
沖縄県は観光業が重要な経済の柱の一つですが、現在、観光客が多いのは那覇を中心とする南部です。今回、JUNGLIAが建設される今帰仁村にも美ら海水族館や古宇利(こうり)島といった観光スポットがありますが、その日のうちに大半が那覇に戻ってしまい、経済効果が十分に享受できていないという課題があります。
また沖縄はハワイ州に並ぶ来訪者がいるにもかかわらず、滞在日数が短く1日あたりの消費額も少なく観光収入の総額は半分以下であることや、慢性的な渋滞など抱える課題も多く、沖縄県民からの観光業への支持や評価が停滞しつつあります。
そこで沖縄県は、観光業の目標を来訪者数ではなく消費額や働く人の賃金などを掲げ、地域との共存によりサステナビリティー(持続可能性)を重視する観光に変貌を遂げようとしています。
コンセプトは「パワーバカンス」
JUNGLIAのコンセプトは「パワーバカンス」。目指すのは沖縄の太陽、風、森、海で自身のエネルギーを感じながら、同施設が提供するエンターテイメントを通じて本物の興奮や贅沢、開放感を得られるテーマパークです。
ターゲットとなるのは、沖縄から飛行機で4時間圏内に居住する層です。東京だけでなく海外の富裕層にも受け入れていく見込みで、その市場規模は約20億人と見込まれています。
しかし開業時はまず日本人観光客をターゲットとし、北部に行く日本人観光客を増やしつつインバウンド銅線を構築していくことが計画されています。
将来的には、JUNGLIAを通じて南国リゾートのテーマパークで十分投資が回収できることを証明し、投資額1,000億以下のテーマパークを海外にも水平展開する予定です。
JUNGLIAに関する事業の資金調達額は約700億円。1,000億円以上の規模のテーマパークを建設して投資が回収できる場所は全世界でも十数ヵ所しかありません。しかし1,000億円以下の規模であれば300~400ヶ所在するため、JUNGLIAが成功すれば世界に同規模のテーマパークを展開することができます。
JUNGLIAの経済効果と今後の課題
JUNGLIAの建設地である今帰仁村の村長は、村民の所得向上や、関連産業への波及効果を期待しており、子どもたちへのキャリア教育にも役立てたいと述べています。また市観光協会の事務局長も、コロナで落ち込んだ沖縄北部の経済を回復の起爆剤として大きな期待を寄せています。
しかし利益優先の開発を警戒する声があり、地域住民から説明会を求められるなど課題も多い状況です。また2025年は大阪・関西万博も予定されており、公費を投入して集客すれば少なからずJUNGLIAへの影響は避けられないでしょう。
課題も多いJUNGLIAですが、今後、沖縄の救世主となれるのか?要注目です。