SVB問題の発端「ピーター・ティール 」とは何者か
2023年3月10日に新興企業向け融資を行うSVBが経営破綻しました。2022年末時点での同銀行の総資産は約28兆円で、リーマンショックの約64兆円には及ばないものの相当な規模です。
さらに今回のSVB破綻の特徴は財務内容の劣化ではなく、「取り付け騒ぎ」が原因だったこと、そしてもう1つが「取り付け騒ぎの発端がSNS」であったことです。
「アメリカの著名起業家ピーター・ティール氏が運営しているファウンダーズファンドが、投資先企業にSVBからの資金を引き上げるよう助言している。」という話がベンチャー経営者のTwitterで広がったことで、SVBからの資金流出が止まらず、最終的には破綻してしまいました。
しかし全く無名の人が同じような発言をしたところで、ここまで大きな影響は与えることはないでしょう。実は、このピーター・ディールという人物は、ベンチャー経営者の中では知らない人はいない位の大物なのです。
多くのベンチャー経営者に影響を与えるこの「ピーター・ティール」という人物は、一体何者なのでしょうか?
ピーター・ティールとは何者か?
ピーター・ティールは、アメリカの電子メールやインターネットを利用した決済サービスを提供する「PayPal(ペイパル)」の創業者です。
さらにPayPalマフィア※と呼ばれるグループの「ドン」と呼ばれる人物で、元トランプ大統領の元政策顧問で、影の米大統領との異名を持つ人物です。
※PayPalマフィア…7人のPayPal創業メンバーのこと。アメリカのビジネス雑誌「Fortune」で見出しとして使用されたことがきっかけで、広まって行ったと言われています。PayPalマフィアのメンバーには、電気自動車大手テスラの「イーロン・マスク」やYouTube創業者の「チャド・ハーリー」も名を連ねています。
ピーター・ティールの生い立ち
ピーター・アンドレアス・ティール(Peter Andreas Thiel)は1967年10月11日、ドイツのフランクフルトで生まれました。父親が化学エンジニアで、ウラン鉱山開発の責任者であったことから、小学校の頃から何度も転校を経験します。
また小さい頃から成績優秀で、チェスを楽しみ、SF愛好家等典型的なオタク少年だったようです。
1985年に同氏はスタンフォード大学に入学。同大学の教授であったルネ・ジラールの「ミメーシス(模倣)理論」に大きな影響を受けることになります。
ミメーシス理論とは、「人間の欲望は他人の欲望を模倣する性格がある。こうした模倣が無意味な競争を引き起こし、競争自体が目的になると進歩を抑制してしまう」という考え方です。競争に気を取られた結果、本当に重要なものを見失っているとピーター・ティールは述べています。この理論は、実は彼の多くのビジネスにも影響を与えているのです。
1989年に学士号を取得してスタンフォード大学を卒業。その後、スタンフォード・ロー・スクールに進学し、1992年には法務博士号を取得しています。
ロースクール卒業後、法務事務官や法律事務所勤務、デリバティブトレーダーとして働いた後、家族や友人から集めた資金でヘッジファンド「ティール・キャピタル」を設立。1998年に暗号解読者「マックス・レブチン」と出会い、共同で「コンフィニティ」を設立、その後PayPalを立ち上げることになります。
PayPal創業後も、ピーター・ディール氏自身もさまざまなスタートアップを立ち上げ、多くのスタートアップに投資も行っています。彼が関わった企業は、リンクトイン、イェルブ、ヤマー、スポティファイ、Airbnbなどどれも知らない人はいない企業ばかりです。
これだけの影響力のある人物が発した言葉だったからこそ、SVBという大きな金融機関の取り付け騒ぎに発展してしまったのでしょう。最後に彼の著書「Zero To One」の中で、スタートアップ起業家がビジネスをする前に回答すべき7つの質問を挙げています。スタートアップを評価する指標にもなると思いますので、参考にしてください。
【7つの質問】
1.エンジニアリングに関する質問
既存のものの改善より、ブレイクスルーとなる技術を開発できるか?
2.タイミングに関する質問
ビジネスを始めるタイミングとして、今が本当に適切か?
3.独占に関する質問
小さなマーケットの大きなシェアをとることから始めているか?
4.人材に関する質問
正しい人材が、正しい場所にいるか?
5.永続性に関する質問
10年先、20年先もマーケット生き残れるポジションにあるか?
6.流通に関する質問
製品を作るだけではなく、それを届ける方法はあるか?
7.秘密の質問
他人が気づけていない独自のチャンスに気づけているか?