デジタル通貨実用化に向けた第一歩「デジタルルピー」の仕組みを解説
インド政府は2022年2月にデジタルルピーを2023年から2024年3月中に導入することを表明しました。
各国の中央銀行が中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行を進める中で、人口が中国を上回り世界最多となると予想されているインドが発行するデジタルルピーは、注目を集めています。
この記事では、デジタルルピーの概要とその仕組みについて解説します。
デジタルルピーとは
ルピーとは、インドやパキスタン、スリランカ等で使用されている通貨のことで、デジタルルピーとは、インドの中央銀行であるインド準備銀行(RBI)が導入を支援している中央銀行デジタル通貨(CBDC)のことです。
2024年3月までにデジタルルピーの導入を発表
2022年2月にインド政府は、デジタルルピーを2023年4月から2024年3月中に導入することを表明しました。
インド準備銀行はかねてからデジタルルピーの開発を進めており、銀行間決済用の「ホールセール型」と、個人や事業者間の小口決済用の「リテール型」両方のテストを開始。またインド政府は、すでにデジタルルピーを法定通貨とみなすために、インド準備銀行法の改正を終えています。
さらにインド内で普及しているデジタル決済システム、UPIを通じた暗号資産取引も禁止となりました。
デジタルルピー発行の目的
デジタルルピー発行の目的は「印刷や輸送、保管、流通などの現金に関するコストを削減すること」、そして「国民の安定したデジタル通貨の需要に応えること」の2点です。
インドではデジタル決済の普及が進んでいますが、給料の現金支給率が40%超と高いこと、またモバイル端末の普及率や口座保有率が高いにもかかわらず、デジタル決済を利用しなかった割合が高い傾向がある、などの理由で、現金流通に関するコストが割高であることが推察されます。
またインドは2021年時点で7.3%相当(約1億人)が暗号資産を保有していたことから、インドの金融システムや通貨主権への悪影響に対する懸念があり、かねてよりインド独自のCBDCの導入が求められていました。
デジタルルピーの仕組み
デジタルルピーに関する詳細はまだ明らかになっておらず、デザインや開発状況はまだ明らかになっていません。
ただデジタルルピーはインド準備銀行が発行者となって、ブロックチェーン上で国民の利用情報を記録・管理することが可能です。
また暗号資産とは異なり、中央銀行が管理して、商業銀行の現金と自由に交換できると言われています。
国営のデジタルウォレットを提供して、政府が利用者の取引情報をより捕捉しやすくすることも検討されているようです。
デジタルルピーの課題
デジタルルピーは今後どのように国民に普及させるかが鍵になるでしょう。
すでにインドではUPIやe-RUPI(eルピー)などの決済システムがあり、UPIにいたっては利用者へのキャッシュバックなどの政策効果によって全デジタル決済件数の63%まで普及が進んでいます。
またe-RUPIは、国民ID「Aadhaar」と携帯電話等を紐づければ、銀行口座やインターネット環境がなくても、政府から給付金や補助金等を受け取れる仕組みが整っています。
こうしたすでに利便性の高い決済システムがある中で、デジタルルピー固有の優位性を持たせることが重要になります。
まとめ
すでに欧州中央銀行(ECB)や中国もCBDCを発行する見通しであることを表明しており、こうした流れがデジタルルピーの発行を急がせたと考えられています。
仮に予定通り2023年4月から2024年3月中に導入されれば、現時点では主要国の中では中国に次ぐ2番目の規模になるでしょう。
デジタルルピーの導入は、CBDCの導入が主要国にも本格的に拡大し始めたこと意味しています。