為替介入に必要な「外貨準備高」各国の状況をまとめてみた
日銀が2022年9月に24年ぶりとなる為替介入に踏み切ったことで、外貨準備高という言葉が注目されるようになりました。
そこで今回は、主な国の外貨準備高を比較してみました。また、外貨準備高に関する、今後の展望についても解説しています。
外貨準備とは
外貨準備とは、通貨当局※が為替介入や、通貨危機などで、他国に対して外貨建て債務の返済が困難になったときに使用する準備資産のことです。
つまり、外貨準備高を手厚くしている国ほど自国の通貨が急激な為替変動に見舞われた際には、安定化を図れる余地があると考えることができます。
※通貨当局・・・通貨政策を担当する政府部局や中央銀行のこと
各国の外貨準備高は?
2021年度末の各国の外貨準備高は以下の通りとなっています。
【各国の外貨準備高】
資料:GLOBAL NOTE 出典:IMF
ドル1強により各国の外貨準備高は減少している
各国の外貨準備高はおおむね毎年増加傾向にあることが一般的ですが、2022年に入り、各国の外貨準備高に変化があるようです。
国際通貨基金(IMF)によると、世界の外貨準備高は、2022年4~6月で12兆367億ドル(約1,733兆円)と前期比で4.1%減少。過去最大の減少率となっています。
外貨準備はなぜ減少するのか?
アメリカの金融引き締め政策が、なぜ世界の外貨準備高の減少につながっているのでしょうか?
日本でも2022年9月に1998年以来24年ぶりの為替介入が行われたので、日本を例に解説していきます。
発端はアメリカのインフレから
アメリカではコロナ禍からの急速な景気回復による人手不足、原材料不足により、急激なインフレ局面を迎えます。
アメリカはインフレ対策として2022年3月16日のFOMC(連邦公開市場委員会)において、0.5%の政策金利の引き上げを発表。
その後もアメリカは、FOMCが開催されるたびに政策金利の大幅引き上げを続けていきます。アメリカが毎回政策金利の引き上げを行う一方で、日銀が一貫して金融緩和策を継続することから、米ドルと円の金利差が拡大し、急速な円安局面を迎えることになりました。
日銀は円安を抑えるために為替介入へ
ロシアのウクライナ進行によるエネルギー各の上昇や、円安の影響により、物価が上昇し、家計への影響が容認できない水準になっていきました。
こうした円安を抑えるために、日銀は為替介入に踏み切ります。円安の為替介入の場合、日銀は外貨準備のドルを民間銀行に売却し、円を購入。
一方、民間の銀行は日銀から買ったドルを市場に売り、日銀に売る円を市場で買うことで、市場の円の需要を高め、円高への誘導を狙います。
このように自国の通貨を守るために各国の通貨当局は、保有している外貨を取り崩すことがあり、外貨準備は自国の通貨を守るためのバッファ(余力)として重要な役割を果たします。
仮に外貨準備高が減少した場合、為替介入の余地がなくなるため自国の通貨が通貨安になると、取るべき対策がなくなってしまうのです。
ドル1強が招く世界的な通貨安
実はドル安になっているのは、円だけではありません。
世界の通貨を見渡すと、2022年当初と比べてほとんどの通貨がドルに対して通貨安という状態です。これは、ドルの政策金利の引き上げに伴い、米ドルや米国債を有力な投資先と見て、資金が流出しているためと考えられます。
ドルは各国の外貨準備高の5割を占めています。そのため、このままアメリカの政策金利の引き上げが続けば、各国のドル建て資産が目減りし、自国通貨安を防ぐためにドル売りに踏み切る国が増えるでしょう。
各国の外貨準備高が減少すれば、さらなる世界経済や金融市場の混乱を招きかねません。
アメリカの政策金利の引き上げはいつになるのか、各国は持久戦の様相を呈しています。