教育改革の第一歩に「オンライン授業関連企業」を特集
コロナウィルスの感染拡大と共に注目を集めることとなったオンライン授業ですが、これまでにも学校に集まって大勢で授業を受ける教育スタイルに疑問の声が数多くありました。
日本の教育が抱える問題を、オンライン授業によって変えようとするさまざまな活動が行なわれており、すでに成果を出している企業もあります。
将来を担う子供たちにとって非常に重要な「教育」を改革するために、オンラインの「授業」を使ったアプローチをしている企業をまとめてご紹介します。
収録映像による低価格でハイレベルな教育
オンライン授業の草分け的な存在であるのが、事前に収録された授業映像を見ながら、生徒が好きな時間に好きな場所で受講するというスタイルです。収録映像であるため、旧来のクラス授業と比べると圧倒的な低価格で受講できることが特徴です。
この分野で最初にサービスが開始されたのは、大学の授業を収録映像で公開する形式のもので、明治大学駿河台キャンパスに拠点を置く一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会が運営している「JMOOC」や、NTTドコモ<9437>の子会社で早稲田大学や東北大学などが参加する「gacco」などがあります。
また、この収録映像による学習スタイルを一般教養やプログラミングなどに拡大させたサービスとして、アメリカ拠点の「Udemy」があり、日本での事業展開はベネッセ<9783>が担当しています。
さらに、資格試験に特化した事業展開としては、税理士やFPなどの受験対策をオンラインで提供する「スタディング」があり、こちらはKIYOラーニング株式会社<未上場>が運営を行っています。
収録映像による学びの機会の提供では他にも、料理教室やフィットネスなどの分野に拡大しており、よりジャンルを細分化しながら拡大していくことが予想されます。
専用アプリ開発による継続型学習の提供
収録映像の配信から一歩進んだ形態として、専用のアプリを使用して双方向の授業を展開するサービスがあります。
専用アプリの代表事例は、リクルート<6098>が運営を行っている英語学習アプリ「スタディサプリ」です。これまで通学が基本だった英語学習を、動画や問題を融合させたアプリとして提供することで、スキマ時間を活用するスタイルへと変えました。
また、受験対策のための塾を代替するアプリとしては、栄光ゼミナールが母体のZ会が「iPadスタイル」というタブレット向けの教材の開発を行い、これまで紙で提供していたサービスをオンラインへと移行させています。
専用アプリでは、やはり収録映像も積極的に採用されていますが、問題を解く機会を増やすことによって記憶の定着を図るという効果が期待でき、多くの受講者を獲得しています。
地方在住の子供たちにもハイレベルな教育を
収録映像や専用アプリに加えて、今後の成長が期待されるのがオンライン映像によるリアルタイムの受講スタイルです。価格面では収録映像による授業よりも高額になるものの、先生に対して質問をして即座に回答が得られる点では、学びの効率が非常に高いです。
この分野で先行してきたのは、やはり英語学習で、海外に住んでいるネイティブスピーカーと日本在住の学習者を繋ぐオンライン英会話があります。代表事例には、DMMが運営する「DMM英会話」や、英語指導の老舗であるECCの「ECCオンラインレッスン」などがあります。
また、受験対策分野では、個別指導の草分けである明光ネットワーク<4668>の明光義塾が、オンラインによる個別授業を行っています。これまで予備校業界では、遠方の校舎の授業を画面に映して指導するサテライト学習を導入してきましたが、今後は自宅でも受講が可能なオンライン化が進むものと予想されます。
有名講師や外国人講師などによるハイレベルな教育は、これまで東京や大阪などの大都市でしか受講することができませんでしたが、教育のオンライン化によって地方在住者でも自宅からハイレベルな教育が受けられる環境が整いつつあります。
オンライン学習システムの提供
リアルタイムの授業をオンラインで配信するにあたっては、先生やカリキュラムなどのソフト面に加えて、通信環境や設備、プログラムなどのハード面の整備も必要にあります。
このような学習システムの提供では、ソフトバンク<9984>のグループ企業である株式会社サイバー大学が開発する「クラウドキャンパス」や、NTT<9432>グループであるNTTテクノクロスが提供する「viaPlatz」などの導入事例が増えています。
公立や私立の学校、学習塾、予備校、資格試験対策、カルチャースクールなどの分野でオンライン授業が普及するためには、これらのシステムを導入するためのプロセスの簡素化や、システム利用料の低価格化などが求められます。
オンライン授業関連企業まとめ
日本におけるオンライン授業のこれまでの流れを踏まえながら、教育分野のオンライン化に関わる企業をまとめてご紹介しました。
N高等学校のように、ほぼすべての授業を通信による収録授業とする高校が登場するなど、日本の教育改革はオンライン化を通じて静かに進行しています。
生涯学習の必要性が叫ばれるなか、今後はスマホやパソコンなどを利用することで、これまでは経済面や時間、ロケーションなどの制約に縛られていた人々にも学習の機会が広がっていきそうです。