不景気にも負けない「高配当を継続している企業」を分析
2020年春、コロナウィルスの世界的な感染が広がるなか、前田建設工業が子会社である前田道路<1883>に対して敵対的買収を行い、反発した前田道路が異例の高い配当を実施するという騒動がありました。
前田道路の配当利回りは30%を超えるもので、世界経済の先行きが不透明な状況にあって投資家の注目を集めました。
こうした臨時収入的な高配当も株式投資の楽しみのひとつですが、やはり高配当を継続している企業をしっかりと分析することで、長期的な投資戦略を組んでいくことも大切です。配当の高さで評判の高い企業と、その高配当の理由を見ていきましょう。
積極的事業拡大で利益を生み出す高配当企業
高配当を継続するためには、やはり十分な利益を生み出し続ける企業体力が必要になります。時流を見据えながら積極的に事業を拡大し、安定した利益を生み続けている高配当企業をご紹介します。
日本で最初に個別指導を行ったことで知られる学習塾の明光義塾を展開する明光ネットワークジャパン<4668>は、10年連続増配の高配当企業で、配当利回りは3%台の後半という水準です。学習塾といえば昔ながらの業態というイメージがありますが、明光ネットワークジャパンでは個別指導に加えて、オンライン授業やAI活用など導入を積極的に行っており、旧来の「学習塾」の枠に留まらない事業展開を進めています。
また、NTTの最大のライバルという位置づけにある電気通信事業者のKDDI<9433>は、携帯電話通信事業のauを中心とした銀行部門などの事業展開を行う一方で、これまで子会社としての事業だったUQモバイルを内部化するなど、グループ内での統廃合と事業拡大をバランスよく行い、やはり10年連続の増配を続けています。
KDDI傘下では、沖縄でのau事業を展開する沖縄セルラー<9436>も同じく、高配当を継続しており、グループ全体で株主への還元の考え方を同じくしています。
ストック型ビジネス「リース」の高配当企業
高配当を継続させるためのひとつの条件として、安定的かつ継続的な収益が見込まれることがあります。長期的な顧客が積み重なっていくストック型ビジネスは、その条件を満たすもので、高配当企業のなかには「リース」業の存在が目立ちます。
芙蓉グループの芙蓉リース<8424>や、旧興銀系のみずほリース<8425>、さらにはリコーリース<8566>など、軒並み3%を超える高配当を行っています。いずれも10年連続の増配を続けており、リースというストック型ビジネスの強みが感じられます。
コロナで再注目の「メディカル系」高配当企業
主力商品をひとつ持つことで長期的な収益を生み出し続けることができる医薬品などのメディカル系企業は、やはり高配当銘柄のなかに数多く含まれます。
旧理化学研究所グループの老舗である科研製薬<4521>は、医療機関向けの「関節機能改善剤」で圧倒的な強みを持っており、安定した収益見込みがあることによって投資家に対し3%前後の高利回りを提供しています。
また、科研製薬のような医療機関向けを専門に扱う企業だけでなく、小林製薬<4967>やロート製薬<4527>もまた、継続して高い配当を行っています。小林製薬ではフェミニーナ軟膏やブルーレット、ロート製薬では目薬「Vロート」などで高いシェアを維持し続けていることが高配当の理由でしょう。
高配当を継続している企業
経済の好不況の影響を受けながらも高配当を継続している企業を分析してみると、グループの総合力で積極的な事業展開を続ける企業と、リースや医薬品などの一定の顧客を囲い込みやすい企業が数多く見つかりました。
高い配当を行うには、継続して利益を上げ続けていること、そして将来の収益見込みが立ちやすい業種・業態であることが条件となることが分かります。
これからの高配当銘柄を見つけるためには、このような条件に合致する企業を中心に、それぞれの上場企業ごとの商品カテゴリやグループ構成などを丁寧に見ていく必要がありそうです。