現金持ち込みはNGの時代 マネロン規制の今後の流れについて
テロ活動や国際犯罪組織への資金流入を封じることを目的としたマネーロンダリング規制は、各国政府や情報機関による連携が強化されているものの、根本的な問題を解決するには至っていません。
個人や企業の国際的な資金移動については、既に日常的な送金にも支障が出るほどの厳しい規制となっていますが、今後もさらに規制が強化されることが予想されます。
例えば、香港で銀行の口座開設をする場合、以前であれば現金を持ち込むことが主流でしたが、このところ現金持ち込みがNGとされるケースが増えています。
マネーロンダリング規制の現状と、今後予想される流れについて、世界の最前線での動きを確認しながら解説します。
対象国は「北朝鮮」と「イラン」
OECD傘下でマネーロンダリング対策の国際協調を行う金融活動作業部会(FATF)では不定期で声明を発表しており、高リスク国について名指しで対策を要請しています。
FATFが2020年2月に公表した最新の声明では、北朝鮮とイランの2か国を高リスク国であるとして「資金洗浄、テロ資金供与及び拡散金融の対策体制に重大な戦略上の欠陥を有する」と指摘しています。
北朝鮮に対しては「国際金融システムの健全性への深刻な脅威」という厳しい表現を用いて批判し、各国協調による北朝鮮への不正な資金流入を防ぐ取り組みを要請しています。
現金を含む匿名金融との闘い
FATFが現在取り組んでいるマネーロンダリング対策の諸活動は、2018年4月にパリで行われた国際会議によって策定された声明を基に行われています。
この声明の中では、マネーロンダリング対策として10の項目を掲げており、そのひとつとして「匿名の金融取引との闘い」が含まれています。
これまでの金融取引で主役であった現金は、最も匿名性の高い資金です。現金がそのまま持ち運ばれることによって各国の金融当局による資金の追跡が不可能となるため、今後もさらなる規制強化が行われることになりそうです。
また、同じ声明の中では、暗号資産(仮想通貨)の監視についても強化する方針が示されています。
NPO団体への寄付等の監視強化
日本国内での反社会的勢力への資金流入への対策として、いわゆるフロント企業と呼ばれる一般企業を装った会社や団体への規制が強化されました。
このフロント企業対策と同じように、国際社会ではテロ組織への資金流入を防ぐために、慈善団体やNPO法人を装った企業や団体への規制が強化されています。
FATFでは、各国政府に対してNPO法人などの監視や情報公開が可能になるような法整備を進めるように要請しており、比較的自由な運営が認められてきたNPOにもマネーロンダリング対策の影響が及ぶことは避けられそうにありません。
SNSやクラファンの監視強化
さらに今後は、国際間の資金移動だけでなく国内での送金以外でも、マネーロンダリング対策が強化されていくことが予想されます。
FATFの掲げる10項目には、多くの人たちが日常的に利用しているSNSやクラウドファンディングについても、金融当局が監視の目を向けるべきであると指摘しています。
また、その他のウェブサイトにおいても、お金を扱うサイトでなくても登録時の身分証明書の提出が義務化される可能性もあります。
マネロン規制の今後の流れまとめ
散発的に伝えられる国際犯罪組織によるテロ事件への対策として、組織を撲滅するための強力な手段としてマネーロンダリング対策は引き続き、強化される流れです。
日本ではマイナンバーを導入したことにより、金融当局が個人の資産を監視することが容易になっていますので、今後はさらにマイナンバーの厳格な利用へと進むでしょう。
日常生活で支障が出る場面も数多くありますが、テロ組織が世界から一掃されるにはまだまだ長い時間がかかりそうですので、マネーロンダリング対策は今後も段階的に規制が厳しくなり続けると思われます。
海外投資を行う投資家の方にとっては非常に不便な状況ではありますが、金融当局の監視を逃れようと努力することで、テロ組織への関与を疑われる恐れがありますので十分にご注意ください。