コロナ後も躍進を続ける「IRコンサルティング会社」とは
上場企業の株主との良好な関係構築を目指すインベスターリレーション(IR)活動は、一時的な株価の上昇や、株主総会の対策に留まらず、中長期的な価値の向上にとって非常に重要なものです。
右肩上がりの成長が続いた日本企業ではIRを軽視する傾向が強かったものの、バブル崩壊後の苦難の時代を経て、株主との関係強化を志向する動きが強まってきました。
こうしたなか、証券会社の子会社としてIRコンサルティングを手掛ける会社が登場し、上場企業などに対して、株主たちとの継続的な関係構築のための戦略を立案するサービスを提供しています。
コロナウイルスの感染拡大という未曽有の事態を受け、IRコンサルティング会社の重要性に再び注目が集まっています。
日本のIRは歴史は僅か20年
まずは、日本のこれまでのIR活動について概観してみましょう。
大和インベスターリレーションズや、野村インベスターリレーション、日興アイアールなど、大手証券会社系列のIR専門子会社が相次いで設立されたのは、1990年代のことです。高度経済成長が終わりを告げ、上場企業が安定期へと入った時代に、証券業界ではIRの重要性を訴える動きが強まりました。
財務省のシンクタンクである財務総合政策研究所がまとめた統計によると、日本の上場企業の当期純利益と配当金に相関関係が生まれたのは2001年以降のことで、それ以前にはどれだけ企業業績が良好であっても配当金として株主に還元されることはありませんでした。
配当金の増減だけがIR活動ではありませんが、高度経済成長が続いた時代の日本では株主との関係は軽視されており、90年代から徐々にIRが注目されはじめ、2000年を過ぎてから実際の企業活動へと反映され始めたというのが日本のIRの現実です。
つまり、日本社会におけるIRの歴史は、まだ僅か20年ほどのものであるといっても過言ではありません。
IRコンサルティング会社の役割
80年代以前に日本にIRコンサルティング会社という存在があったとすれば、それは総会屋と呼ばれる株主総会対策を行う企業や団体のことを指していたことでしょう。日本の上場企業にとって株主との関係とは、1年に1度の株主総会であり、「毎年なんとか総会をやり過ごすこと」が最優先事項でした。
しかし、現代におけるIRコンサルティング会社は、決して総会屋のような株主総会対策を主体とするような企業ではありません。
上場企業や公開予定企業の経営陣との密接な関係を持ち、中長期のIR活動の戦略を構築し、資金調達のための財務諸表やレポート作成し、IR用ウェブサイトの制作と運営を担当するなど、IRに関わる総合的なサポートを行うのがIRコンサルティング会社の役割です。
もちろん、株価を安定化させることなどの短期的な施策も業務の範囲に含まれていますが、基本的は中長期の戦略を主体として、日々の任務を遂行しています。
コロナで重要性を増すIRコンサルティング会社
数か月にも及ぶ社会全体の自粛によって、企業活動も深刻な影響を受けており、ほぼ全ての業界において前年同期比でマイナスとなる未曽有の状況となっています。
アベノミクスが実態を伴っていないとの批判を受けながらも、株式市場には投資家が戻り、日経平均株価が2万4000円台まで回復しており、オリンピックの勢いを借りながらさらに高みを目指す展開が予想されていたところで、日本経済は急激に冷え込む恰好となりました。
このような企業業績が落ち込む一方の状況にあってIRコンサルティング会社では、オンラインによる個人投資家向け説明会を積極的に活用し、株主や投資家に対して中長期の企業の方向性を見せ、暗闇の先にある光に注目させる施策を行っています。
企業が本業の非常事態への対応に追われるなか、株主への情報発信や対策を専門に行うIRコンサルティング会社の存在感が再確認されることとなりました。
コロナウイルスの世界的な感染拡大は、日本のIR活動にとっても大きな転換点となり、IRコンサルティング会社が躍進する契機となったことは間違いありません。