次なる国策銘柄!?「ペロブスカイト太陽電池」とは
2023年4月4日、岸田首相が「再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議」の場で、2030年を待つことなく、「ペロブスカイト太陽電池」を社会に実装すると発表しました。今回はペロブスカイト太陽電池の内容と、その将来性について解説します。
ペロブスカイト太陽電池とは
太陽電池と聞くと、大きな太陽光パネルを屋根や空き地に設置する、あるいは太陽光パネル設置スペースや、パネル購入や設置にかかる多額の費用などが必要というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか?しかしこうした太陽電池の考え方を、まったく変えてしまうほどの技術が「ペロブスカイト太陽電池」なのです。
以下、ペロブスカイト太陽電池の仕組みやメリット・デメリットについて解説します。
ペロブスカイト太陽電池の仕組み
太陽電池は太陽の光エネルギーを受けて半導体材料に電子エネルギーが高まり、導電性の電極に流れ込むことで電流が発生します。
従来の太陽電池は、この半導体材料にシリコンを使用していましたが、ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイトの結晶構造に光エネルギーをあてることで太陽の光を電気に変換する仕組みです。
ペロブスカイト太陽電池は桐蔭横浜大学の宮坂力教授によって発明され、現在では国内特許を持っています。
ペロブスカイト太陽電池のメリット
ペロブスカイト太陽電池のメリットを紹介します。
さまざまな箇所に設置できる
ペロブスカイトとは、灰チタン石(かいチタンせき)のことで、極薄のフィルムに塗ったり、印刷したりするだけで太陽光を電気に変えることが可能です。そのため従来のシリコン系太陽電池よりもはるかに軽く、折り曲げやゆがみに強いことから、これまで重量の問題で設置できなかったビルの壁面や建物の屋上、曲面に貼り付けることができるようになります。
原料が自給できる
ペロブスカイトの主な原料はヨウ素です。実は日本はチリに次ぐヨウ素の生産国で、原料を国内で調達することができます。ロシアのウクライナ侵攻により、原材料のサプライチェーンが課題になりましたが、ペロブスカイト太陽電池の普及は、経済安全保障の強化にもつながるでしょう。
製造コストが安い
ペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコン系太陽電池よりも製造工程が簡素化されており、電力消費量や材料コストなどが抑えられます。そのため製造コストは、シリコン系太陽電池の3分の1から5分の1になると言われています。
ペロブスカイト太陽電池のデメリット
ペロブスカイト太陽電池のデメリットは、酸素や水分の影響を受けやすく、太陽の光エネルギーから電気に変換する、変換効率が低下する可能性がある点です。
またペロブスカイト化合物は鉛を使用しているため、周辺環境への溶出が不安視されています。
現在、代替品を使用するか、溶出しない対策などが求められています。
すでに実用化に向けて全世界で研究が進む
ペロブスカイト太陽電池は、すでに研究所の屋上にフィルムを設置し、効率的に発電できないか確認したり、企業のビルの壁にフィルムを設置して実証実験を行ったりするなど、企業への試験的な導入がはじまっています。
世界的な競争が激化している
ペロブスカイト太陽電池はいま全世界で注目されており、研究、開発が進んでいます。
かつて日本はシリコン系太陽パネルで世界のトップシェアを誇っていました。しかし中国との価格競争に破れて次々と撤退し、世界シェアの大半を奪われてしまったという苦い経験があります。
当然、今回のペロブスカイト太陽電池も中国で開発が進んでいます。
日本では政府の支援は受けているものの、まだまだ規模が小さく、人材が不足しています。
こうした状況下で、世界的なスタンダードを作り出せるかが現在の日本の課題と言えるでしょう。