中国版GAFA!?「BATH」を徹底分析
日本でも既にお馴染みのIT界の巨大企業と言えば、グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェイスブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)の頭文字を取った「GAFA」です。
これらアメリカを拠点とする「GAFA」に対して、中国には「BATH」と呼ばれるIT界の4大企業が存在しています。
BATHとは、バイドゥ(Baidu)、アリババ(Alibaba)、テンセント(Tencent)、そしてファーウェイ(Huawei)のことを指している呼称で、時にはシャオミー(Xiaomi)を入れて「BATX」と呼ばれることもあります。
中国国内では「GAFA」と「BATH」を合わせて、世界8大IT企業であるとする書籍も出版されるなど注目が集まっている「BATH」について徹底分析します。
B:検索エンジン「バイドゥ」
漢字では「百度」と表記する検索エンジンのバイドゥは、中国最大の検索サービスを提供しています。
バイドゥは「中国のグーグル」と形容されることが多いですが、これは検索サービスで中国最大であるだけでなく、地図サービスで360度画像のストリートビューを公開するなど、グーグルに類似したサービスを複数展開しているためです。
創業から5年目にあたる2005年にアメリカのナスダック市場で株式を公開しており、上場初日の値上がり率が300パーセントを超えたことでも大きな話題となりました。
日本においては、本業である検索エンジンの日本語版の事業展開を試みましたが、ヤフーやグーグルなどの競合に阻まれたためにサービス提供を終了しています。ただし、スマートフォン向けアプリのSimejiはバイドゥによるもので、若者を中心に受け入れられています。
A:オンライン通販「アリババ」
ジャック・マー氏が率いるアリババは、ソフトバンクの孫正義氏が創業初期から出資をしていたことで知られる中国のオンライン通販最大手です。
中国国内におけるオンライン通販事業だけでなく、世界の工場となった中国の製造メーカーや卸問屋と、世界のユーザーを繋ぐ国際間の越境トレードでも数多く利用されています。
株式上場はニューヨーク証券取引所および香港証券取引所で、米中の貿易摩擦に敏感に反応する銘柄となっています。
GAFAではアマゾンと相対する企業ですが、売上ベースでは依然としてアマゾンが4倍程度の差をつけています。ただし、アリババグループには、電子決済のアリペイ(Alipay)などの中国市場で大きなシェアを持つ他分野の事業が数多く含まれており、単純比較が難しくなっています。
T:ソーシャルアプリ「テンセント」
日本人にはあまり馴染みのない中国の巨大IT企業テンセントは、中国国内でSNS(ソーシャルネットワークサービス)や、オンラインゲームなどを提供しています。
GAFAではフェイスブックと類似性が高く、QQと呼ばれるSNSやメッセンジャーアプリなどが幅広い世代で利用されています。ただし、テンセントはオンラインゲーム部門の売り上げに占めるウェイトが高く、フェイスブックとはビジネスモデルが異なります。
日本でも人気の『クラッシュオブクラン』などのオンラインゲームを提供するスーパーセル社の大株主でもあります。
今後のアジア市場で成長が期待されるEスポーツ分野では、テンセントが圧倒的な優位性を持っています。
H:スマートフォン製造「ファーウェイ」
米国トランプ政権によって対中強硬政策の標的とされたファーウェイや、世界のスマホ市場において2位あるいは3位にランクする通信機器メーカーです。
GAFAではアップルに近い事業ドメインにあるファーウェイですが、低価格の途上国向けの製品ラインナップも多いため、出荷台数ではアップルに迫っているものの、売上ベースではアップルの半分ほどです。
ファーウェイの将来性について不安視されているのは、中国共産党との距離の近さで、通信機器という個人情報を集約された端末にバックドアが設けられ情報が抜き取られているのではないかとの指摘があることから、先進国での売り上げが伸び悩んでいる点です。
中国版GAFA「BATH」まとめ
IT鎖国状態を続ける中国において、国内人口という強みを活かしながら成長を続けるBATHは、売上などの面ではGAFAには及ばないものの、力強い成長を遂げています。
BATHとGAFAはそれぞれに相対する企業を当てはめることが可能であるものの、事業内容やビジネスモデルには相違点も多く、単純比較が難しいことには注意が必要です。
また、米中の経済面や政治面での対立が深まることによって、BATHの成長が阻害されるのか、あるいは成長を加速させるのかについても注目したいところです。