日本の未来が視える「海外の医療保険事情」とは??
コロナウィルスの世界的な感染拡大とともに、世界各国の医療制度や保険事情に関する話題がメディアで頻繁に取り上げられました。
盲腸の手術をすると200万円以上もの費用が請求され、保険に加入していない貧困層は病院に行くことができないと言われるアメリカをはじめ、日本と世界では医療や保険の常識が異なります。
日本では国民皆保険制度が実現しており、誰もが少額の負担で良質な医療サービスを受けることができます。
しかし今後、日本の経済が下降へと向かい、現在の医療保険制度が崩壊する可能性も現実味を帯びてきました。
海外の医療保険事情について解説するとともに、未来の日本に起こりうる医療保険制度の変化について考えます。
海外では一般的な「かかりつけ医」という存在
日本では社会保険に加入している人は、基本的にどの病院で診察を受けても構いません。
そして、身体に不具合が見つかった場合には、そのまま治療や手術を受けることができます。
しかし、実はイギリスやアメリカなどの多くの国では、患者が自ら病院を選ぶことができません。
保険の加入者は必ず「かかりつけ医」という病院を事前に申請しなければならず、身体に違和感を感じたときには、まずは「かかりつけ医」からの診断を受けます。
そして、診断によって病気などが見つかった場合には、基本的にはかかりつけ医による治療を受けます。
国全体がこのようなシステムになっているため、かかりつけ医には常に多くの患者が集まっており混み合っています。空いている病院に行くという選択肢は、被保険者にはありません。
このかかりつけ医の存在に医療保険制度が密接に結びついているのがドイツです。
ドイツでは必ずしも、かかりつけ医以外で初診を受けることを禁止していませんが、かかりつけ医の診断や治療では自己負担が3割、かかりつけ医以外では5割負担となっています。
将来的には日本でも、このようなルールが適用され、自由に病院を選ぶことができなくなるかもしれません。
全額を支払ってから公的保険が償還
病院を訪れて外来で診察を受けたとき、日本では自己負担分のみを支払う仕組みになっていますが、海外では全額を支払ってから後日になって公的保険が償還されるケースも珍しくありません。
自己負担分の割合については日本と同じような水準である国が多いものの、一度は自ら支払わなければならないため、病院へ行くことのハードルが上がります。
さらに日本の医療費は、世界的に見れば低い水準にありますので一時の全額自己負担であっても支払いが可能な世帯が大半ですが、医療費そのものが高額な国では一時負担とは言え、公的保険の後日償還によって病院に行けない層が少なからずいます。
被保険者である国民の立場から見れば、自己負担分のみを支払う現行の日本の制度が好ましいですが、公的保険の負担が大きいために今後も継続できるかどうかは疑問です。
一部の人向けしか公的医療保険が存在しないアメリカ
先進国でありながら医療サービスにおいては世界標準に達していないアメリカでは、誰もが加入できる公的保険が存在していません。
いわゆる公的保険に加入することができるのは、低所得者層、高齢者、障がい者のみです。
このような現状に対して打開策を導入しようとしたのがオバマ大統領で、オバマケアと名付けられた保険制度の確立を目指していました。
ただし、このオバマケアでさえ実は公的医療保険制度ではありません。政府主導のもとで民間の保険会社に対して安くて誰にでも加入できる保険を販売させることを目的としたものでした。
オバマケアが実現しなかったアメリカでは、現在でも公的医療保険がありません。
日本政府が急に社会保険制度の廃止を行うことはありませんが、徐々に公的保険の機能を減らしていく可能性はあります。
海外の医療保険事情にみる日本の未来まとめ
日本が確立した国民皆保険制度は、年金制度と共に、豊かな先進国である日本を象徴するような存在であると言えます。
かかりつけ医や、自己負担の仕組み、公的保険の適用範囲など、日本と比較すると海外の公的医療保険の制度には多くの問題があり、決して使い勝手の良いものではありません。
これまでの日本は、かなり上手に医療保険制度を作り上げ、運用してきました。しかし、現在の状況をずっと維持できるのかというと、やはり困難なのではないかと感じられる経済状況です。
少子高齢化の流れや、経済の不振がこのまま続くことになれば、少しずつ公的医療保険の機能を減らしていかざるをえないでしょう。
将来に向けて、医療にかかる費用をしっかりと貯金しておく必要がありそうです。