中小企業の自社株相続をした時 事業承継税制の活用法
中小企業の経営は親から子へ引き継ぐことが一般的です。中小企業庁のアンケート調査(2012年「中小企業の事業継承に関するアンケート調査」)でも法人形態の事業で58.5%、個人形態の事業で85.5%の後継者が息子・娘です。その大きな理由として自社株式や借入金の個人保証の引継ぎ、金融機関との関係維持が容易であることが挙げられています。
しかし一方で、後継者となる子どもや親族がいない場合、従業員や外部から経営能力のある人を迎えることも、中小企業を発展させるためには必要です。
そこで事業承継税制(非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度)が拡充されて、事業を後継者に引き継ぎやすくなりました。
事業承継税制とは中小企業の後継者が現経営者から会社の株式を承継する時の相続税・贈与税を軽減する制度です。
これを利用すると相続により非上場会社の株式を先代経営者から取得して会社を経営していく場合には、株式(相続により取得した一定の株式のうち)の課税価格の80%分の相続税の納税が猶予、贈与により株式(贈与により取得した一定の株式)を取得した場合は贈与税の100%の納税が猶予されます。
2013年度に税制が改正されて、制度が使いやすくなりました。
まず制度利用の前に、経済産業大臣の「事前確認」を受ける必要ありましたが、現在は事前確認を受けていなくても制度利用が可能になり、手続きが簡素化されました。
さらに2015年1月からは、主に以下の点が改正されました。
①現経営者の親族に限定されていた後継者が、親族以外の社員や外部から起用(親族外承継)できるようになりました。
②雇用の8割以上を5年間毎年維持するという条件が緩和され、雇用の8割以上を5年間平均で評価すれば良くなりました。景気は毎年変動するため、人員削減が必要になる年があるかも知れません。それでも以前は8割以上を維持しなければ猶予が打ち切られて納税義務が発生したのですが、改正後は一時的に8割を割り込んでも、その後雇用を増やして平均で8割であれば制度を利用し続けることができます。
この他③納税猶予打ち切りリスクの緩和、④役員退任要件の緩和、⑤債務控除方式の緩和が追加されています。
詳しくは中小企業庁の各地経済産業局産業部中小企業課に問い合わせてみてください。