資産運用の新たな手段「私募REIT」のメリット・デメリットを解説する
資産運用では、「分散投資」が大事と言われますが、不動産投資は投資額も大きく昔はハードルが高いものでした。
しかし、「REIT」が誕生したことで、個人投資家でも数万円から投資をすることができるようになりました。
REITは自由に売買できる公募型が一般的でしたが、最近は「私募REIT」と呼ばれる非公開型のREITが注目を集めています。
そこで、今回は「私募REIT」について解説します。
私募REITとは?
REITは、「Real Estate Investment Trust」の頭文字をとったもので、日本語では、「不動産投資信託」と呼ばれています。
REITのしくみは、投資家からお金を集めて、それを不動産に投資し、不動産から得られる収益を投資家に還元するというものです。
日本で組成された不動産投資法人は「J-REIT」と呼ばれています。J-REITの特徴は、一般投資家を対象とし、数万円から投資ができることです。
証券取引所に上場しているので、株式と同様、「成行注文」や「指値注文」ができ、株式取引の経験のある人であれば、同じように取引をすることができます。
これに対し、「私募REIT」は、証券取引所に上場していない、非公開の不動産投資信託です。主に機関投資家を対象とし、最低投資額も大きいのが特徴です。
J-REITは証券取引所での価格があるので、その価格で売買することができますが、私募REITの場合は、証券取引所での価格がないので、鑑定評価額で売買を行うことになります。
2 私募REITのメリットとデメリット
(1)私募REITのメリット
①価格変動が少ない
J-REITの場合、証券取引所で毎日価格が変動しますが、私募REITの場合、決算期毎の鑑定評価で価格が決まるので価格変動が少ないというのがメリットです。
株価の影響を受けにくく、長期で安定的に資金を運用することができます。
②投資規模が大きい
J-REITは、個人を含む幅広い投資家から資金を集めるため、投資者数は多いのですが、最低投資額が小さいため、投資総額はそれ程大きくはありません。
それに対し、私募REITは、機関投資家などから億単位の多額の投資資金を調達できるので投資総額が大きくなります。
投資総額が大きければ、投資の選択肢が増え、また、分散投資をすることができます。
③自由度が高い
私募REITは、公募型ではないので参加する投資家が満足すれば足ります。
そのため、不動産の組入れなどを投資家に合わせて自由に設定することができます。
私募REITのデメリット
①流動性が低い
J-REITは、証券取引所に上場しているので、買い手が付けばいつでも売却することが可能です。投資単位も小さいので比較的売却することは容易です。
それに対し、私募REITは、証券取引所に上場しているわけではないので、出資金の払戻しを求めるか個別に買い手を見つけなければなりません。
また、投資金額も大きいので簡単に買い手がみつからないというリスクがあります。
②限られた投資家しか投資できない
私募REITは投資単位が大きいこともあり、基本的に金融機関などの機関投資家しか参加できません。
個人が投資することを禁止されているわけではありませんが、億単位のお金を用意できる人はそうはいないので、個人投資家に投資への勧誘をすることは基本的にないのが実情です。
まとめ
一般社団法人不動産証券化協会の調査によると、2022年3月末時点の私募REITの資産総額は4兆7,250億円となっています。
1年前から5,459億円も増加しています。投資法人数は42法人、物件数は1,257物件になっています。全て増加傾向にあり、順調に増えています。
このように人気のある私募REITですが、誰でも投資できるというものではありません。あくまで勧誘を受けた投資家だけが参加できるREITです。
もし、勧誘を受けた場合には、メリットとデメリットを踏まえた上で、投資に参加するかどうかを決定するようにしてください。