2022年4月必修化される金融教育 その具体的な内容とは?
学習指導要領が改訂され、2022年4月から高等学校で金融教育がスタートします。
金融の役割や仕組みについての授業は、これまでもありましたが、個人が行う投資の授業はありませんでした。今回の学習指導要領の改定では、家庭科において個人投資の授業が加わります。
これによって、個人の金融リテラシーは向上するのでしょうか。
金融教育が導入された背景
金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」によると、年金受給者の毎月の不足額は平均約5万円となっています。そのため、65歳から毎月約5万円が不足した場合、20年で約1300万円、30年で約2000万円が不足することになります。
つまり、65歳までに約2000万円を準備しておかないと、老後の生活が破綻する可能性があるということです。しかし、日本では、これまで金融教育を積極的に行ってこなかったこともあり、投資などで資産形成をする方法を知らず、金融資産は預貯金だけという人が多くいます。
将来的に年金財政が厳しくなることも想定されていることから、政府としては、若い人に金融知識を身につけてもらい、できるだけ自助努力で資産形成をしてもらいたいということが背景にあると思われます。
日本人は金融リテラシーが低いのか?
金融広報中央委員会が行った調査で「金融リテラシー調査2019年」があります。この調査は、2019年3月1日~3月20日の期間に、全国の18~79歳の個人25,000人を対象とした調査です。
(1)米国調査との比較
Financial Industry Regulatory Authority:FINRAが調査した結果との比較で、①複利、②インフレ、③住宅ローン、④分散効果、⑤債券価格、⑥72の法則についての正誤問題で、正答率が、米国は53%、日本は47%という結果でした。
(2)OECD調査との比較
OECDの調査結果との比較では、①金利、②複利、③インフレの定義、④リスクリターン、⑤分散投資という設問の正答率が、フランスが72%、ドイツが67%、英国が63%、日本が60%という結果でした。
(3)金融教育を求める声が多数
米国との比較でも、フランス、ドイツ、英国との比較でも日本は低い結果だったことから、先進国の中で、日本人の金融リテラシーは低いということがわかります。
実際、金融教育の必要性は日本国民も感じており、本調査でも「金融教育を行うべきと思う」という意見が67.2%もありました。
金融教育の内容
高等学校学習指導要領解説(家庭編)によると、金融教育の内容は、①経済計画と②金融商品、資産形成です。
①経済計画とは、ライフステージごとの課題や社会保障制度などと関連付けて考察し、生涯の資金計画をする方法です。
②金融商品、資産形成は、預貯金、民間保険、株式、債券、投資信託等の基本的な金融商品での資産形成の方法です。
しっかりとした資金計画を立てて、株式や債券を含めた金融商品によって資産形成をしていく方法を学ぶということです。
金融リテラシーがどれだけ高まるかは未知数ですが、金融リテラシーが生活をする上で必要なことであると国が認めたことは大きな進歩と言えます。
まとめ
今回は、金融教育の必修化について解説してきました。金融教育は、家庭科の授業の中で行われることから、投資経験のない家庭科教員などからは十分な授業ができるか不安の声も聞かれています。
そのため、金融機関の職員やFPなどの外部講師に依頼することも検討されています。外部講師による授業であれば、実践的な投資方法を学ぶことができるでしょう。
日本人の金融リテラシーが向上し、もっと活発に投資が行われ、各自が資産形成できるようになることを期待したいと思います。