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国際分散投資のメリットとデメリットを解説

2020/06/11

技術進歩は消費者の大いなる味方です。

今では多くの人がスマホを保有し、通勤電車の中でネットショッピングを楽しんでいますが、20年前には想像出来ないことでした。

これは投資の世界でも同じであり、例えば現在では世界50か国、8000社に分散投資を行う株式Indexファンドが開発されており、だれもがワンクリックで投資できます。これはかつての富裕層がプライベートバンクで行っていたような取引です。

Indexファンドは債券、REITでも続々と開発されており、これらを活用すれば世界中のあらゆる資産へ分散投資することが可能です(=国際分散投資)。かつては機関投資家の専売特許でしたが、今では個人投資家が気軽に活用できるようになりました。実際、書店に行けば国際分散投資を推奨する書籍が多数並んでいます。

ここで注意すべきは、国際分散投資とて完ぺきな手法ではないということです。その利点を生かすためには、同時に弱点も十分に把握する必要があります。

今日は国際分散投資のメリット、デメリットについて解説しましょう。皆さまが国際分散投資を上手に活用し、少しでも長期の資産形成に役立てて頂ければ幸いです。

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国際分散投資とは?

投資の世界の金言として、「卵を一つの籠へ盛ってはいけない」というものがあります。

例えばある会社の株式へ全財産を投資した場合、その企業が倒産すれば終わりです。それを避けるためには、投資対象(銘柄の分散)、資産クラス(資産の分散)、投資地域(地域の分散)を丁寧に分散する必要があります。

前述した世界株Indexファンドは、分散投資における一つの究極の姿です。Indexファンドは株式以外にも様々な資産クラスで開発されており、例えば国債(日本国債、米国債等)、社債(投資適格債、低格付け社債など)、REIT(オフィスREIT、住宅REITなど)、通貨(ドル、ユーロ、ポンドなど)、コモディティー(原油、金など)等が存在しています。また投資地域も自由に選べるため、日本に加えて米国/欧州等の先進国、さらに中国/インド等の新興国を加えることも簡単です。

このように世界のあらゆる資産/地域をカバーするIndexファンドを活用すれば、組み合わせ次第では「地球を丸ごと買う」ような投資も実現します。このようなコンセプトが斬新と感じる方も多いのではないでしょうか?この方法を総称して「国際分散投資」と呼びます。

国際分散投資のメリット

国際分散投資のメリットは、以下2点が挙げられます。

1点目は、低コストであることです。世界の運用会社から信託報酬0.5%以下のIndexファンドが無数に提供されており、中には0.1%を切るものもあります。運用コストは長期間かかり続けるものであり、低いに越したことはありません。

2点目は、価格変動リスクが低下することです。例えば、株式との比較では、一般的な国際分散投資の価格変動リスクは小さくなる傾向があります。図表1は典型的な国際分散投資(日本株、日本債券、外国株、外国債券の各Indexファンドへ均等投資)とTOPIX(日本株)の価格推移を比較したものですが、明らかに国際分散投資の価格変動が小さくなっています。またこの期間においては、リターン面の魅力度もTOPIXとそん色がありません。むしろ殆どの期間でTOPIXを凌駕しています。リターンは高く、リスクも低い、正に投資の理想的な姿です。国際分散投資にとっての過去10年間は、黄金の時代だったと言えるでしょう。

【図表1】日本株/日本債券/外国株/外国債券の代表的Indexファンドへ均等投資した場合(=4資産)
(Bloombergデータよりファイナンシャルスタンダード作成)

国際分散投資のデメリット

一方、デメリットとしては次の2点が考えられます。

1点目は、価格変動リスクは株式との相対では小さいものの、絶対値では必ずしも小さくないことです。図表2は国際分散投資から過去に発生した損失幅を示していますが、▲10%前後の損失は日常茶飯事です。これは株式との比較では小さいですが(▲20%~▲50%)、多くの個人投資家にとっては決して無視できる水準ではありません。

2点目は、債券の期待リターンが大幅に低下していることです。国債分散投資はそれなりの比率で世界の国債へ投資することになりますが、日本、ドイツ等の10年国債利回りはゼロ近傍(又はマイナス)、米国10年国債利回りも1%を割っています。期待リターンがないものへ投資しても、資産が増えることはありません。これは自明のことです。

(図表2)Index4資産とTOPIXの最大下落率の推移
(Bloombergデータよりファイナンシャルスタンダード作成)

国際分散投資の弱点:気を付けるべきポイント

個人投資家向けの金融商品として、「バランス型運用の公募投信」や「ファンドラップ」は人気の金融商品となっています。

このような商品は国際分散投資の考え方をベースとしており、非常にシンプルな仕組みとなっています。したがって“投資初心者向け”の金融商品として販売されることもあるようです。

 

一方、実際に投資を行ってみて、その価格変動の大きさに驚かれる個人投資家も増えています。先ほどご説明した通り、慎重にコントロールされているとは言え、国際分散投資のリスク水準は想像よりも高いことが多く、ほとんどの個人投資家は“初心者向け”とは思えない価格変動に直面したのではないでしょうか?イメージだけで金融商品を選ぶと、このような思いがけない事態に直面します。

でも、そもそもの話として、なぜこれほど幅広い投資対象に分散投資を行っているにも関わらず、国際分散投資のリスク水準が十分に下がらないのでしょうか?不思議に思われる方もいるはずです。これは根本的な話であり、背景をよく理解しておきたいところです。そうすれば、バランス型運用やファンドラップの“からくり”が分かるようになります。まずはそこから解説しましょう。

 

次の図表は様々な資産クラスの価格変動がどの程度株式と連動するのかを調べたものです。相関係数で表現していますが、この数値は1に近づくほど“同じ値動き”を、マイナス1に近づくほど“真逆の値動き”を意味しています。したがって、理想はマイナス1です。仮に相関係数がマイナス1であれば、その資産と株式が同時に下落するリスクはなくなります。もちろん、これは理想の姿であり、現実は大きく異なります。以下の表の通り、殆どの資産クラスの相関係数(対株式)はどちらかと言えば1に近くなっています(例外は債券のみ)。つまり様々な資産クラスに丁寧に分散投資を行っても、結局は同じような値動きになる事が多いということです。これが国際分散投資の価格変動がなかなか小さくならない本当の理由です。

従って、国際分散投資でリスク抑制を図ろうとすると、必然的に債券(先進国の国債)への投資比率が上昇します。株式、REIT等のリスク性資産とマイナスの相関を持つのは、ほぼ債券(先進国の国債)に限られるからです。金融機関の販売するファンドラップの“リスク抑制コース”など見てみると、実質的には債券ファンド化していることが多いですが(債券組み入れ比率7-8割など)、これがその理由です。債券へ投資すれば手っ取り早くリスクも下がる上、過去10年の債券利回りは急激に低下(債券価格は上昇)しており、リターンも絶好調と言える状況でした。たとえ“実質債券ファンド”であったとしても、悪いことなど何もなかったのです。

但し、それは「過去の債券」であり、「今の債券」には致命的な弱点があります。それは債券の期待リターンが大幅に低下していることです。例えば期待リターン0.5%程度の金融商品(主要先進国の国債利回り)をポートフォリオ内に7~8割も組み入れた場合、いったい何が起きるでしょうか? そこから運用手数料0.5%-1%などを差し引いてしまうと、投資家の手元にはほとんど何も残らないはずです。リーマンショック前の段階では、債券利回り(10年債)は日本国債でも1-2%、米国国債なら4-5%もあり、このような心配をする必要はありませんでした。この10年で国際分散投資にとっての外部環境は様変わりしてしまいました。

個人投資家が金融商品の価格変動を懸念するのは当然であり、また気にすべきです。大きすぎる価格変動リスクは長期の資産形成にとって有害だからです(理論的な理由があるのですが、ここでは細かい話に立ち入らないことにします)。でもリスク抑制は効率的な資産形成を実現するための手段であり、決して目的ではないはずです。ここを見失ってはなりません。国際分散投資は優れた投資手法であり、良好なリターンを投資家に提供してきましたが、あくまでそれは過去の話です。これから投資を始める投資家にとっては、足元の投資環境を冷静に見つめ直し、その投資戦略の「稼ぐ力」を冷静に見極める必要があります。

まとめ

  1. 世界のIndexファンドの商品ラインナップは充実しており、個人でも十分に国際分散投資が実現できるようになってきた。個人の長期資産形成としては、まずは株式投資等が考えられるが、それとの比較ではリスクを下げることが可能であり、魅力的な選択肢と言える。過去リターンも良好であった。
  2. 一方、国際分散投資の価格変動リスクは株式投資との比較では低下するが、絶対値では相応の大きさが残る点は認識する必要がある。仕組みが分かり易いため、国際分散投資=初心者向けと見做されることもあるが、この点は要注意と言える。
  3. 国際分散投資が機能するか否かは、多数の資産間における価格変動の相関性に依存する。過去を見る限り、多くのリスク性資産の相関はかなり高いのが現実。唯一の例外が債券であり、その価格変動は逆相関となる傾向がある(貴重な特性)。したがってポートフォリオ全体のリスク抑制手段として、債券活用が一般的となっており、リスク抑制を重視するほど債券への投資比率が上昇する傾向にある。
  4. 今のような環境で債券投資比率を高めてしまうと、ポートフォリオ全体の期待リターンが低くなり過ぎる致命的な問題がある。先進国の10年国債利回りは過去10年で急低下しており、現在では先進国平均で1%も取れない。したがってリスク抑制手段として過度に債券に依存してしまうと、肝心な資産形成が進まなくなる可能性がある。
  5. 国際分散投資は非常に優れた投資手法であるが、決してどのような環境下でも優れているという訳ではない。その活用に当たっては、メリット、デメリットを正確に把握し、投資から発生する「損失リスク」と「稼ぐ力」を冷静に見極める必要がある。
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