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お客様からいただいたご相談内容

投資用不動産を年金の補完として所有しようと思いますが、資産運用になるでしょうか?

不動産投資は安易に手を出さないほうが良い理由があります。リスクに見合うリターンを獲得できないケースも散見されます。

「サラリーマン大家」が失敗しやすい理由

ワンルームマンション等の不動産物件に投資を行う個人が増えているようです。相続税対策ではなく、純粋に利回り獲得を目的とした投資です。なかには所得税の節税効果を狙った投資も含まれている可能性がありますが、基本的には日々の収入補完(家賃収入を老後の生活費に充てる等)を目的とした投資のようです。

結論としては、副業で不動産投資を行う場合、思い通りの成果を上げられる可能性は極めて低いのが現実です。
それに比べれば、上場REITへの投資のほうがはるかに優れています。銘柄やタイミングによりますが、平均すれば税引前で3.5~4%程度の利回り獲得ができるはずです。

もちろん、REITへの投資は株式と同程度の価格変動リスクを伴いますが、それは実物不動産へ投資しても同じです。実物不動産には日々の時価が付かないため、価格変動が目に見えないだけです。

このように書くと、「アパートの一棟売り等にうまく投資することができれば、6%以上の利回りが期待可能」といった反論が必ず出てきます。これに関しては、一定の前提を置けばある程度事前にイメージすることができます。まずその数字を見てみましょう。それほど魅力的な利回りにならない理由を含めて解説します。

正常な市場原理が働かない貸家市場
過去に建設された日本の貸家ストック数は約1600万戸程度と言われていますが、空室率は2割近い状況です。大手業者(大手ハウスメーカー等)が管理する貸家ストックは全体の4割程度と推定されており、過半以上は個人オーナーによって管理されている物件です。
大手業者の管理物件は総じて空室率が低く(5%前後)、個人オーナーの管理物件の空室率は3割を超えている計算になります。なぜこんなことになっているのでしょうか?
考えられる理由の一つとして、貸家物件の多くは収益獲得ではなく、建設そのものが目的化しているからです。日本の相続税の仕組み上、資産家にとって貸家を建設すると相続税の負担が大幅に軽減されます。個人管理物件の多くは相続税対策を目的として建設されたものです。
これらの物件の多くは、経年劣化に伴うメンテナンス等が十分に行き届いていないケースが多く、時間の経過とともに、競争力を低下させていきます。

競争力低下に直面した個人オーナーにとって、手間暇かけず手っ取り早く空室を埋める方法は賃料の値下げです。賃料を値下げしていては高い収益性は望めないでしょう。
貸家ストックの2割が空室にもかかわらず、年間40万戸以上が建設されること自体も異常ですが、そのオーナーのほとんどが収益獲得を目的としていないのも異常です。
このような市場に純粋投資家が乗り込んでも、成功する確率が低いのはある意味当然です。競争条件が悪すぎるからです。

「利回り6%」の物件でも「正味は半分」
投資用不動産は「利回り6%」などと表示されるケースが多いですが、これは手取り収入とは異なります。常に所有物件に入居者が入り、満室で稼働している訳ではありません。ファミリー物件の多くは平均入居期間が4年前後であり、この入れ替えに伴う短期空室が必ず発生します。さらに、さまざまな経費を見込む必要があります。物件の日々の管理(入居手続き・家賃回収等)を不動産業者に委託すれば5%程度の管理費(対売上)、固定資産税(同3%~6%)、借入に伴う金利負担、各種修繕費(入居者入れ替えに伴う小規模修繕から15年に一度の大規模修繕まで)、入居者紹介に伴って不動産会社に支払うインセンティブ等も時間経過とともに必要となるでしょう。

物件購入価格のどの程度を自己資金で対応するかによって金利負担もあります。表面上の利回りが6%と書いてある物件でも、実際に手元に残る利益(税引後)はおよそ2~3%程度ではないでしょうか?この試算は賃料横ばいを前提としており、実際には賃料下落がさらに利回りを引き下げる要因になるはずです。本当に苦しくなるのは築年数10年以上経過してからです。
REITは細かい決算内容を開示しており、非常に参考になります。例えば、アドバンスレジデンス投資法人(住宅専業REIT)の開示資料によれば、保有物件の修繕関連費用(小規模補修から大規模修繕・リノベーションを含む)に収入の10%近くを費やしています。保有物件の平均築年数が12年を超えているものの、ほぼ満室稼動しており、経年に伴う競争力低下を手間暇かけたリノベーションや修繕で必死に食い止めている様子がうかがえます。

これだけのコストをかけても中長期の賃料水準は横ばい微増程度で推移しており、ほとんど放置に近い築古物件(個人管理物件)の賃料水準がマイナス1割、マイナス2割(新築時対比)と下落してもまったく不思議ではありません。むしろ、個人物件では、これだけ賃料を下げても入居者がおらず、空室率はなお高位に留まっているのが実態ではないでしょうか?

賃料低下、コスト増、価格下落……。さまざまなリスクを乗り越え、一般の人が不動産投資でリターンを出していくことは、極めて難しいのが実情です。様々なリスクを考慮して判断する必要があります。

神田 尚季 <small>(Naoki Kanda)
神田 尚季 (Naoki Kanda)
大阪オフィス支店長

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