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新興国通貨の債券は高金利で魅力に感じます。

高利回りの裏側には、必ずリスクがあります。投資を行う場合には、リスクの源泉をしっかり理解してから行いましょう。

新興国債券は「高金利」なのか

新興国の債券(国債等)は利回りが高く、多くの投資家を惹きつけています。新興国の多くは人口も増え経済成長率も高く、かつての日本と重ねて見えてしまう人も少なくないようです。
一方、金融市場では「リスクのないところにリターンはない」と考えるため、安全で利回りだけが高い金融商品は存在しません。それでは、新興国債券にはどんなリスクが隠れているのでしょうか? 魅力的に見える新興国債券の裏側を見てみましょう。

新興国の国債利回りは先進国と比べれば高いことが多いですが、背景には高いインフレ率(物価上昇率)があります。このことを理解するために、以下の例を考えてみましょう。

例えば、インフレ率10%の国で100万円を定期預金するケースを考えます。金利が5%の場合、1年後の預金は105万円に増えていますが、100万円で販売されていた車も同時に110万円に値上がりしているはずです。
この状態では預金者がどんどん損をするため、銀行が預金を集めるためには、預金金利を少なくともインフレ率以上に設定する必要があります。金利からインフレ率を引いたものを「実質金利」と呼びますが、通常これはプラスになります。この実質金利こそが預金者の手元に残る「実質的な利益」だからです。

新興国の表面金利は高いことが多いですが、その裏には高いインフレ率が隠れており、実質金利はそれほど高くないケースも珍しくありません。図は、トルコとアメリカの実質10年国債利回り(10年国債利回りから消費者物価上昇率を引いたもの)を比較したものですが、あまり差がありません。トルコは見た目の名目金利は高いですが、物価の上昇率も高いため、名目金利から物価上昇率を引いた実質金利はさほど高くないのです。
このように、国ごとに大きく異なる金利の魅力度を考えるときは、実質金利で比較しなければなりません。
高利回りの裏側には、必ずリスクがあります。投資を行う場合には、リスクの源泉をしっかり理解してから行いましょう。

高金利の裏に必ずある「高インフレ率」

実質金利についてもう少し考えてみましょう。なぜその国に住んでいない私たちが現地のインフレ率を気にしないといけないのでしょうか。 それは為替レートが変動するからです。

私たちが外国債券を買うには、必ず為替レートが絡んできます。そして、インフレ率の高い国ほど中長期では通貨安となる傾向が知られています。次のような極端な例を考えるとわかりやすいかもしれません。
1ドル100円のとき、同じ新車が日本では100万円、アメリカでは1万ドルだったとします。一年後、アメリカでは猛烈なインフレになり(インフレ率100%)、日本は0%だったとすると、一年後の新車価格は日本100万円、アメリカ2万ドルとなるはずです。

仮に為替レートが1ドル100円で横ばいだった場合、新車価格は日本100万円、アメリカ200万円(2万ドル×1ドル100円)になってしまいます。自動車メーカーから見れば、まったく同じ新車がアメリカでは2倍の価格で突然販売できることになります。
こうなると日本から自動車を輸出すれば大儲けとなるため、自動車メーカーは輸出を増やしてくるでしょう。
しかし、輸出が増える過程では、徐々に円高が進むはずです(貿易摩擦は無視します)。自動車メーカーは輸出で得たドルを円に戻す必要があるからです(ドル売り円買い)。
中長期では、1ドル50円程度へ為替レートが変化する可能性が高まります。
すると、1ドル50円なら日本100万円、アメリカ2万ドル×50円=100万円で両者は同じ価格となります。この為替レートなら日米新車価格は同じになるため、自動車メーカーが輸出ドライブをかけるインセンティブが薄まり、日本からの輸出も徐々に減ってくるはずです。

このように、高金利の裏には高インフレ率が隠れていることが多く、高インフレ率の通貨ほど中長期では下落する傾向があります。
つまり、日本人が表面金利の高い新興国の通貨・債券に投資した場合、高い金利収入を得られる反面、高いインフレ率の分だけ通貨が値下がりする可能性が高く、手元に残る円ベースのリターンは表面的な金利ほど高くならないということです。せっかく手にした金利収入を、為替差損で一部または全部を相殺してしまうからです。
もちろん、この話は理屈(理論)であり、金融市場がいつでも理屈通りに動くわけではありません。ただ、長期になるほど金融市場は理屈に近づいていく傾向があるため、理屈を無視するのは非常に危険です。この理屈の中にこそ、新興国投資のリスクが隠れているのです。

福田 猛 <small>(Takeshi Fukuda)
福田 猛 (Takeshi Fukuda)
代表取締役

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