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住宅ローンは退職金で一括返済するほうがいいでしょうか?

繰り上げ返済は、必ずしもメリットになるとは限りません。

住宅ローンの早期返済がもたらす「二重の損」

借金=悪、というイメージが世間には根強く、多くの人は借金を極力早期に返済しようとする傾向があります。多額の借金を抱えたままでは心理的な負担も重く、一見自然なことにも見えます。
一方、このような考え方をする人は次の2点を見落としている可能性があります。1つは「『期限の利益』の放棄」、もう一つは「機会損失」です。借金返済には金利負担軽減というわかりやすいメリットがある反面、二つのデメリットが発生する点には注意が必要です。これらのデメリットを踏まえたうえで、繰り上げ返済するかどうか検討してほしいと思います。

①「期限の利益」の放棄
住宅ローンには返済期限があり、期限25年で借りた場合には25年後に完済する義務があります。裏返せば、契約通り毎月返済を続けている限り(約定弁済)、期限前に返済を迫られるリスクはありません。この住宅ローンを期限まで借り続ける権利のことを「期限の利益」と呼びます。
住宅ローンの繰り上げ返済とは、この「期限の利益」を自ら放棄することであり、放棄して得られるメリット(金利負担の軽減)、デメリットの慎重な比較が必要です。多くの人は住宅ローンを繰り上げ返済する理由として、減税メリットの終了を挙げます。住宅ローン減税の効果が終われば、支払い金利が丸ごと負担になるため、確かに金利負担の削減効果は大きくなります。
それでは、期限の利益を放棄するデメリットとは何でしょうか?
最初に思いつくのは、不測の支出への対応です(自動車の買い替え、住宅リフォーム等)。人生何が起こるかわからず、不測の資金需要が発生することは多々あるでしょう。
住宅ローンは個人向け与信の中では最も金利が低い有利な資金調達手段であり、手元資金をあまり薄くしてしまうと、他のローン(自動車ローン、リフォームローン)で資金調達せざるを得なくなる可能性があります。
場合によっては、運用中の他の金融資産を中途換金する手段も考えられますが、最終的なファイナンシャルゴールを達成するために組まれたポートフォリオを、運用途上で換金するのは、極力避けたいところです。
このように、住宅ローン返済をあまり優先しすぎると、さまざまな余分なコストが発生することがあります。余程高い金利の住宅ローンでない限り、早期返済のメリットとデメリットを比較する価値はあります。

②機会損失
もう1つのデメリットとして、機会損失があります。
早期返済を行わなければ、返済にあてた資金を資産運用に回すことも可能です。安易に早期返済をしてしまうと運用収益の獲得機会を放棄してしまうことにつながります。
もちろん、誰にでもおすすめできる方法ではなく、所得、年齢、貯蓄、キャリア、他の支出計画などさまざまな要素を考慮して慎重に考える必要があります。

特に住宅ローン返済額に対して所得に余裕があり、定年までの期間が十分長いようなケースでは、早期返済をするくらいなら、その資金を運用に回すことも、検討する価値があると思います。
期前返済で削減できる支払い金利と運用益の差分が大きくなればなるほど、この機会損失は大きくなります。仮に100万円を繰上げ返済せずに運用し、ローン金利より年率プラス2%の運用ができた場合、10年複利で投資元本は122万円まで増え、同5%なら163万円まで増える計算になります。
当然ですが、闇雲に過大なリスクを取った運用を行えば、投資元本を大きく棄損する可能性を高めてしまいます。したがって、運用可能期間や価格変動に対する自らの許容度を適切に考えながら資産運用を行う必要があります。

内田 壮志 <small>(Soshi Uchida)
内田 壮志 (Soshi Uchida)
ファイナンシャルアドバイザー

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