世界の金融市場の中で、近年大きな存在感を示すようになったものに「オルタナティブ投資」があります。オルタナティブというのは、本来「代替」とか「慣習にとらわれない」という意味で、株式や債券といった伝統的な投資に代わって投資する運用法です。

 オルタナティブ投資の本来の目的は、既存の投資商品の急激な価格変動に対応するためのリスク回避です。世界経済の落ち込みなどで、従来のようなパフォーマンスの獲得が難しいときに、より高い運用益の獲得を目指すために使われる投資法と言っていいでしょう。

 もともとその歴史は長いものの、このところの米国金利引上げ懸念や中国経済の失速によって世界経済の成長鈍化が心配されており、既存の投資法を上回る安定性とスピードで収益を目指す投資ツールとして、再び大きく注目されつつあります。
 実際、オルタナティブ投資の資産残高は年々増え続けており、いまや3.3兆ドル(2013年、タワーズワトソン)にも達しつつあります。1ドル=120円換算で400兆円のレベルになります。

オルタナティブ投資とはなにか?
 オルタナティブ投資と一口に言っても、実は幅広いものがあります。
具体的な投資対象として最も有名なのは「ヘッジファンド」や「不動産ファンド」「コモディティ(商品)ファンド」ですが、その他にも「プライベート・エクイティ・ファンド(ベンチャーキャピタル、買収ファンド、再生系ファンド)」「証券化商品(ABS(資産担保証券)、MBS(不動産担保証券)など)」などがあります。

 投資商品の種類を見ても分かるように、オルタナティブ投資の大半はプロの投資家である「機関投資家向け」の金融商品です。ヘッジファンドの一部や不動産ファンド、コモディティファンドなどは個人でも投資できますが、大半は機関投資家によるリスク回避のための投資商品と言って良いでしょう。まずは、簡単にこれらのオルタナティブ商品を紹介しておきましょう。

【ヘッジファンド】
富裕層や機関投資家を対象にしたリスクを回避(ヘッジ)するための私募ファンド。利益が出た分だけファンドマネージャーにも報酬が出る成功報酬制など、通常の公募型ファンドとは仕組みが大きく異なります。先物やオプション、商品や指数投資など、様々な非伝統的な投資商品を駆使して運用します。

【不動産ファンド】
不動産を運用するための資金を幅広く集めたファンド。株式市場などに上場された不動産ファンドもあり、近年は一般の投資家にも活発に売買されています。

【商品ファンド】
原油や金などの貴金属などを投資対象としたファンド。商品先物市場などを舞台に運用します。

【プライベート・エクイティ・ファンド】
未公開企業に投資するベンチャー・キャピタルや、経営破綻しつつある企業や問題を抱える企業などを買収し、再生したうえで売却するバイアウトなどがあります。

【証券化商品】
リーマンショックの原因ともなった、主として信用市場をメインに売買する商品です。

金融工学とIT技術が生んだオルタナティブの急成長
 オルタナティブ投資が急激に成長してきた背景には、近代化に伴う技術革新による金融市場のグローバル化とスピード化の実現があります。現在の株式市場は、機関投資家によるコンピュータ売買が主流で、アルゴリズムを使った超高速売買が市場の趨勢を決めていると言っても過言ではありません。

 高速売買の主役はヘッジファンドですが、ヘッジファンド本来の運用戦略は金融市場の価格変動などに対応したリスク回避にあります。市場のボラティリティにどう対応するかが、近年の機関投資家や富裕層の個人投資家の共通した課題であり、その結果として注目されたのがオルタナティブ投資と言えます。

 さらに、様々な投資戦略を可能にしたのが、1990年代になって注目された「金融工学」の発達でした。たとえば、債券市場のわずかな価格変動や金利の動きを数学的な計算を使って分析し、利益を出す方法です。ここに少ない資金で多額の投資を可能にする「レバレッジ」を使って投資する戦略が一般的となります。

 金融工学の発達は、やがて「IT技術」の発達とともに、飛躍的な進歩を遂げることになります。欧米の投資銀行傘下のヘッジファンド会社などが中心となって、投資家の利益が運用者の利益にもなる「Win-Win」の関係を築くことに成功し、その存在感を大きくしてきました。

変動幅を増幅させるリスクマネーで荒れる金融市場
 そんなオルタナティブ投資の急成長の中で、現在の世界の金融マーケットは、ボラティリティの大きなハイリスク、ハイリターンな市場となり、変動幅を増殖させるリスクマネーを中心とする金融マーケットへとシフトしつつあります。

 特に、資産運用を専門とする資産運用会社は、これまで通りの伝統的な投資戦略では勝てない時代になっており、いかにボラティリティの大きな市場であっても、安定したパフォーマンスを維持できるかどうかが問われるようになっています。特徴ある運用ができなければ生き残れないサバイバルゲームと言って良いかもしれません。

 米国の政策金利引上げが予想される中で、市場環境の悪化が心配される昨今、今後の機関投資家ビジネスはますますオルタナティブ投資を重視した投資戦略がメインになっていくことが予想されます。こうした動きは、当然のことながら市場のボラティリティを高めるため、個人投資家の資産運用はますます難しくなると考えていいかもしれません。

 言い換えれば、そうしたボラティリティの高まりに対応するためには長期運用が不可欠になります。機関投資家や富裕層のためのオルタナティブ投資はますます拡大し、個人投資家は長期投資を余儀なくされます。金融市場もここに来て、大きな曲がり角を迎えていると言っていいでしょう。



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