個人が資産運用を金融機関に一任する「ラップ口座」の2015年3月末の契約残高が、1年前に比べて約2.8倍の3兆8973億円になったと日本投資顧問業協会が発表しました。「ファンドラップ」、「ラップ口座」など金融機関により呼び名は変わるものの、基本的なサービス内容は同じです。
 
 大手証券会社をはじめ多くの金融機関が顧客獲得に注力した結果、ファンドラップはすっかり市民権を得たとも言えるでしょう。しかし、なぜ多くの金融機関が最近になってファンドラップの口座獲得に注力し始めたのかが分かれば、ファンドラップの注意点も見えてくるはずです。

業界の裏事情
 金融機関がこれほど積極的にファンドラップの口座獲得に注力し始めたのはなぜでしょうか。
そこには、業界の裏事情があります。かねてより、金融庁は金融機関に対し、投資信託を販売する際に手数料稼ぎに重心を置いた「乗り換え販売」に偏らないよう、営業社員の評価基準を見直すよう求めていました。

 金融機関が投資信託の販売により得られる収入は販売時手数料と運用期間中の信託報酬ですが、販売手数料を稼ぐために、顧客に回転売買させることは好ましくないと、金融機関に注意喚起していたというわけです。そこで、回転売買をしなくとも手数料収入がコンスタントに入ってくるスキームとして、ファンドラップが注目されるようになったのです。

こうした事情を頭の片隅に置いた上でこれから先の説明を読んで頂ければ、理解も早いでしょう。

ファンドラップの仕組み
ファンドラップだからといって、特別な金融資産で運用しているわけではありません。投資の対象としているのは投資信託なのです。

 では、ファンドラップと通常の投資信託とでは何が違うのでしょうか。通常の投資信託であっても、金融機関の窓口でアドバイスを求めれば、担当者が丁寧に答えてくれるでしょう。しかし、どの金融商品を選択するかはあくまで投資家の判断です。

それに対してファンドラップでは、投資家は、最初に投資の方針を金融機関と相談し、その後の運用は金融機関に任せることになります。金融機関の担当者が投資の目的や許容できる損失など決まった型のヒアリングを行い、その内容に沿った資産配分比率を決定します。

 その後は、相場環境の変化によって、保有資産の実際の配分比率と自分が最初に決定したポートフォリオの配分比率との間に、一定以上の乖離が生じた場合、その乖離を元に戻す「リバランス」と呼ばれる比率調整をおこないます。
配分比率が高くなった資産を一部売却し、配分比率が少なくなった資産を一部購入します。その売買を一任で金融機関が行います。

 投資信託では乗り換えのたびに手数料が必要となりますが、ファンドラップでは資産残高に応じて課されますので、売買のたびに手数料を支払う必要はありません。また、当初決定した資産配分の比率の変更を行なうこともできます。

 金融機関により異なりますが、ファンドラップでは数十種類のコースが準備されており、どのコースが自分に相応しいのかを選択することも非常に困難です。自分がどれだけのリターンを求めているのか、それだけのリスクを取れるのか、どんな運用を望んでいるのかを金融機関の担当者に正確に伝えることができるでしょうか。そして、金融機関から提案されたものが、本当に自分のニーズにかなったものであるかどうか判断できるでしょうか。

実は割高な手数料
 ファンドを乗り替えるたびに手数料を支払う必要がないのは、確かに投資家にとっては大きなメリットです。しかしファンドラップ口座を開設すれば、投資一任受任料、ファンドラップ手数料が必要で、報酬を支払う必要があります。しかもこれらは一度限りではなく、継続的に必要となるのです。投資信託で運用を行うため、信託報酬や信託財産留保額も別途必要です。これらのコストは金額やリスクに応じて異なるため、その水準が高いのか安いのか判断するのは困難です。

ファンドラップの難解な資産配分の考え方や手数料体系を理解するには、相当の金融知識が必要となるでしょう。

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