9月4日に発表された8月米国雇用統計の非農業部門雇用者数は17.3万人となり事前予想の22.0万人増を大きく下回りました。また、失業率は5.1%と、事前予想の5.2%を上回る改善となりました。
NYダウ市場はこの結果を受け、FRB(米連邦準備理事会)による早期利上げの可能性が意識され大きく下落しました。

 世界中の投資家が今、最も注目しているイベントといっても過言ではない米利上げ動向。2008年から続いているゼロ金利政策にいよいよ終止符が打たれ、年内には米国の政策金利であるフェデラルファンド・レート(FF金利)が9年ぶりに引き上げられる可能性が高まっています。
ではいったい、米国利上げがおこなわれると日本の株式市場にはどのような影響を及ぼすことになるのでしょうか。

米国利上げは何をもたらすのか
 米国利上げが日本の株式市場に与える影響を論じる前に、まずはマクロの視点から米国利上げがもたらす影響を先に確認しましょう。米国利上げはマクロ経済に3つの大きな変化をもたらすことが予想されています。

 第1の変化はリスクマネーの変化です。今や世界の投資マーケットは、日米欧の金融緩和により過去に例を見ないほどに拡張しています。
 しかし、米連邦制度準備理事会(FRB)が利上げに舵を切れば、リスク資産に投資された資金の逆流が起こるのは避けられないでしょう。
恐らく最初の利上げは小さな規模のものと言われています。0.25%の利上げの影響は理屈ではごく小さなものかもしれません。しかし、ゼロの世界とプラスの世界には大きな隔たりがあります。

 第2の変化は新興国投資における変化です。リーマンショック後、世界経済を牽引してきた新興国は今や経済、金融、社会システム全体に脆弱性が目立ってきました。今後、米国利上げにより投資資金が引き揚げられることになれば、新興国の通貨安、株安が進行する可能性があります。
 
 そして、第3に金融緩和政策が生み出したヘッジファンドのグローバルマクロ投資に大きな打撃を与える可能性を持っています。米国の利上げは世界中に溢れる投機マネーを収縮させる可能性があるといえます。

過去の利上げは日本の株式市場に何をもたらしたか
 さて、米利上げは日本の株式市場にどのような影響をもたらすのでしょうか。
日本の株式市場は米国株と連動性が高いことは以前から指摘されており、ある資料では15年3月末の外国人の株式保有比率は31.7%に及んでいます。
 
 つまり、日本の株式市場は日本固有の事情ばかりでは無く、外国人投資家の売買動向に大きな影響を受けることが想像できます。米利上げにより米国株がどのような影響を受けるかを想像すれば、それが日本の株式市場に与える影響も自ずと想像出来るのではないでしょうか。

 リーマンショック後の安値から長期にわたり米国株が上昇し続けてきたのは、金融緩和政策によりもたらされた膨大な緩和マネーによる金融相場にほかなりません。
 
 利上げ後、FRBは膨大に膨らんだバランスシートの縮小に取り組んでいきます。これが株価にとっては大きなマイナス要因となると考えることもできます。
 
 FRBは00年にITバブルに対応すべく利上げを行っています。この時の利上げが日本の株式市場に与えた影響を振り返ってみましょう。
日経平均株価は00年4月、2万833円の高値を付けた後、03年4月に7603円まで大幅に下落しています。
 また04年からもFRBは段階的に小規模な利上げを繰り返し行っており、この時には日本の株式市場の影響は限定的なものに留まりました。

次の利上げはどうなる
 それでは次の利上げは日本の株式市場にとって吉と出るか凶と出るか、どちらでしょうか。
 
 実は、04年の利上げで日本の株式市場が受けた影響が限定的であったのは、当時の小泉首相による構造改革相場と重なったという背景があることを軽視してはいけません。
株式市場では、郵政改革が話題に上る年の前後は株価が上昇しやすいと言われております。秋口に日本郵政の上場が控えている今、マーケットの先行きに対するポジティブな材料と捉えることもできます。
 
 また、黒田日銀総裁は、9月4日にトルコで行われた20カ国(G20)財務相・中央銀行総裁会議にて、米国の利上げに関しては「もし米国が利上げするとすれば、それは米国経済がよりしっかりと成長していくことを物語っており、それ自体は世界経済にプラスだと思う」と述べています。

 FRBが利上げタイミングを決断できないことがマーケットに臆測を呼び、乱高下の要因となっています。
ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁は6月の記者会見で、「市場はボラティリティーになれる必要がある」という発言をしました。この発言は、現在のマーケット環境を予想したものであったのかもしれません。
 
8月米雇用統計は、9月米利上げ是非の決定打には欠ける内容でしたが、いずれにせよ米利上げタイミングは近づいています。


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