原油価格変動の背景
 一昨年の夏まで100ドルを突破していた原油価格(ニューヨーク市場上場のWTI先物価格)ですが、昨年秋から急落して瞬く間に50ドル台を割り込みました。
さらに遡れば、2007年に入ってからの上昇も凄まじい勢いのもので、2008年の夏には147.3ドルの史上最高値をつけています。

 以後、同年9月のリーマンショックを機に急落に転じましたが、やがて反発に転じ、昨年夏まで強含んできました。その背景には、中国をはじめとする新興国の経済成長に伴って原油の需要が急拡大していたことがあります。

 ところが、新興国経済に減速傾向がうかがえるようになった一方で、米国ではシェールオイルの開発が本格化しました。これまではシェール層と呼ばれる固い岩盤に阻まれて採掘できませんでしたが、技術革新によって市場に供給できるようになったのです。

 こうして需要の減少と供給の拡大が同時進行すれば、その価格に下押し圧力がかかるのは当然の現象。
にもかかわらず、OPEC(石油輸出国機構)が減産に踏み切らなかったことから、原油価格の下落がいっそう加速したものとみられています。

 しかし、今年3月には42ドル台まで達したものの、その後は底打ちの兆しがうかがえると分析する専門家も増えてきました。

一因として指摘されるのは、シェールオイルの減産です。

 原油価格の下落に伴い、米国のシェールオイル関連企業も大きな打撃を受けました。シェールオイルは通常の油田よりも採掘コストが割高で、原油価格が70〜80ドル台以上に達しないと採算が合わないと言われています(平均の採算ライン)。

 このため、シェールオイルを減産する動きが顕著になり、市場関係者が需給関係の改善を意識するようになった模様です。今年の終わりには、供給過剰の状況が完全に改善されるともみられています。


今後、原油価格はどうなるのか
 秋口にかけて米国では大ハリケーンが発生しやすいシーズンを迎えます。その被害に遭いやすい米国南部には油田が多いことから、ハリケーンの動きが原油価格の上昇を促す可能性もあります。

 今後、原油価格はハリケーンのようなイベント次第では短期的に急騰する可能性もあるとの見通しも成り立つわけです。しかしながら、依然として新興国経済の減速傾向が続いている点には注意が必要でしょう。

 特に、中国経済の不透明感が強く意識されています。中国人民銀行が、8月11日から3日連続で人民元の対ドル相場の基準値の大幅引き下げを発表しました。
 
 7月の輸出額が市場予想を上回る大幅な減少(前年比8.3%減)となったことに危機感を抱いた中国政府が、通貨を切り下げ、輸出産業にテコ入れをしなければならないほど厳しい状況にあるのではないかと言われています。
 
 そして、人民安によりドル建てで取引される原油の割高感が増すことで、中国の原油輸入が減少するとの懸念から、原油価格がニューヨーク市場で、一時、6年5ヶ月ぶりとなる安値をつけました。

 さらには米国の利上げが、株式市場のみならず原油などの商品市場にもマイナスのインパクトをもたらしうるとの専門家の声もあります。

 通常、ドルと原油価格は逆相関の関係にあります。米国の利上げによる金利差拡大に伴い、ドルが他の通貨に対して強含み、ドルに逆相関するかたちで原油価格が下落する展開が想定されています。

 一連の流れを受け、米エネルギー情報局(EIA)は8月11日、2015年の米原油価格を平均1バレル=49.62ドルとの見通しを示しています。

 引き続き、新興国経済の情勢を注意深く観察しながら、秋口以降の投資戦略を練ることになりそうです。


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